猫は何を考えてるの? アニマルコミュニケーターの仕事とは

 人間と同じ言語を持たない動物たちの意識をキャッチし、彼らのメッセージを伝える「アニマルコミュニケーター」という職業の人たちがいる。「動物たちと同じテーブル(目線)について会話を」という想いと、この仕事に就くきっかけを与えてくれた愛猫の名にちなんだ屋号で活躍する「キキのテーブル」前田理子(りこ)さん。ペットシッターとしても17年間で700頭を超える動物たちと関わってきた彼女にとって、猫たちに教えられることは計り知れないという。


文・高橋美樹


写真・岩内喜久子
写真・岩内喜久子

「私たちアニマルコミュニケーターの役割は、動物をきちんと見つめ、飼い主さんに寄り添って彼らが抱える問題や悩みを解決するのを“ほんの少しお手伝いする”ことだと思っています」と語る前田さん。実際に年間250頭を超えるペットの声を聞き届けてきた彼女が、特に猫たちの声にハッとさせられた実例をご紹介しよう。

 

 

心地いい距離感こそ愛情

「愛猫を幸せにしたい。可愛がりたい」と思うのは飼い主としてごく当たり前の感情だが、中には「自分を好いてくれることはとても感謝しているけれど、もう少し“どういう猫か”を見てほしい」というメッセージを猫自身が送ってきたケースもあるという。


「なかなか懐いてくれず、触ろうとすると唸ることさえあったいう保護猫のココさんは、『ママが思う“仲良く”と、私が思う“仲良く”が違う』と伝えてきました。『急に手を伸ばされたり近寄られるのはとても苦手で、そっとしておいてほしいのにそう思ってくれないの』と。どうやら保護前は人からたまにご飯をもらう程度で、彼女には今もそれぐらいの距離感がちょうどいいらしいのです。猫にも人が大好きな犬に近いタイプの子もたくさんいますが、“同じ空間にいることを楽しみつつ、向こうから甘えてきた時にそっと触らせてもらう”なんて、猫ならではのつき合い方。『猫との暮らし方は千差万別』ということも多くの方に知ってほしい」と、前田さん。

 

 

相手はあなた次第

 問題行動にも「必ず原因があり、それが飼い主に依ることも少なくない」という。


「ある二世帯住宅で2階に息子家族が暮らし始めた途端、愛猫が粗相し始めたというケースは、実は飼い主さんが息子さんたちに遠慮して不満を言えないストレスを、猫が“代弁して”、テリトリーを主張(スプレー)していたことが判りました」と、前田さん。


 そして、こちらも解決策は一つではなさそうだ。


「『猫がお土産を持ち帰った時は、叱らずその場は誉めて後でそっと処理せよ』というのが定説かと思います。でも、愛猫がことあるごとにネズミを持ち帰ることに辟易していた友人のケースは、猫の意識を通して『ルル、お願いだから放して! あなたの大好きな“ちゅ~る”あげるから、ね!』と玄関先で叫ぶ友人の姿が見えました。つまり、ネズミと引き換えに“もれなくオヤツがもらえる”わけですから止められないわけです。玄関に山と積まれた〝ちゅ~る〟を見るたびに話したくなるのですが、彼女はアニマルコミュニケーションをまったく信じないタイプなので、未だ真相を言えずです(笑)」

 

 

負の感情を手放す

 また「多くの犬や猫たちの悲しみや寂しさ、恐怖は抱いても、いつまでも相手を恨んだり、ネガティブな感情を引きずらない姿」には、思わず涙してしまうこともあるという。「例えどんなに虐待されても、酷い仕打ちをした人間に怒りや恨みを持っていないのです」。


 下半身不随になり瀕死の状態で愛護センターに収容され、その後保護猫として愛護家に引き取られた勇気君は、人懐っこさゆえに、その日偶然ムシャクシャしていた近所の男性に棒のようなものでメッタ打ちされたことが前田さんのコンタクトによって判明した。彼は「なんでそんなことするのかなって思ったよ。痛かったし、猫生の中で一番びっくりしたことかもしれないなぁ」と話し、望みを聞いた前田さんに「僕はもう走れないけれど、お外でお日様に当たったり、風に吹かれたい」と恨み一つこぼさず無垢な瞳で伝えてきたという。


「どんな不自由を負っても、負の感情を手放すことで私たちも彼のように“自由になれる”ことを学びました。と同時に、こんな純真で気高い命を私たち人間は虐げたり、税金を使って奪っている。愛の反対は無関心。『いつまでも無関心でいることは許されない』と強く感じました」

 

 

相手を想う美しさ

 そして昔から「猫は死に際を見せない」と言うけれど、「人目につかない場所で養生している間に亡くなるケースばかりとも言い切れない」と語る。


 あるお宅で通い猫だった「坊ちゃん」は、飼い主さんが看取ることなく姿を消した。「なぜなら彼女にとって自分は初めてのオス猫で、人一倍強い思い入れを持って可愛がられていたことを知っていたからこそ、あえて最期を見せないことを“選んだ”のです」と、前田さん。「こんなによくしてくれたのに、ごめんよ。もう帰れないと思うんだ。風来坊だったと思って、いつまでも元気な姿を覚えておいておくれよ」というメッセージに、飼い主さんは「彼らしい」と涙ながらに心の区切りが付いたという。それは「お世話になった彼女への精一杯の思いやりと、『猫流の美学』だったと思うのです」。


 もちろん真偽は確かめようがないし“眉唾物”と切り捨てるのは簡単だが、猫好きとしてはどこか納得できてしまう人も多いのではないだろうか。そして、少なくとも彼らの教えはいつも飼い主への愛に溢れている。もし少しでもそれを感じ取れたなら、声は聴けなくたって、目の前にいる愛猫ときっと今以上に「よりよい関係」が築けるのは間違いなさそうだ。

辰巳出版が隔月で発行している猫専門誌です。猫愛にあふれる企画や記事の質に定評があります。

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この特集について
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