盲導犬拒否、6割が経験 犬を理由にして「差別」?
昨年4月に障害者差別解消法=キーワード=が施行されてから1年あまり。いまだ多くの補助犬(盲導犬、介助犬、聴導犬)利用者が、入店拒否などの法で禁じる「不当な差別」を受けていることが補助犬育成団体の調査などで分かった。盲導犬利用者では6割に上った。
盲導犬の育成に取り組む公益財団法人アイメイト協会が2~3月、同協会が育成した盲導犬の利用者248人を対象に、法施行後の昨年4月~今年2月に「差別的な扱い」にあったかを聞いた。回答した121人のうち6割にあたる75人が「ある」と答えた。
最も多かったのは飲食店での入店拒否で、57人が経験していた。スーパーなどの商業施設で10人、宿泊施設で9人が入店・宿泊拒否、タクシーの乗車拒否も9人いた。
例えば、東京都内の30代の女性会社員は「犬が苦手なお客様もいらっしゃいますので」と入店を拒否された。静岡県内の70代の主婦は「犬は絶対にダメ」と言われ、冬なのにテラス席に案内された。
同協会の塩屋隆男代表理事は「障害者本人ではなく犬を理由にできるため、差別しやすいのではないか」と指摘する。
また、全日本聴導犬ユーザーの会の調べでは、会員のうち現役で聴導犬を利用する8人全員が「差別的な扱い」にあっていた。盲導犬と同様、入店拒否が多く、コンビニエンスストアや病院などでも拒否された例があった。
聴導犬利用者は外見からは障害がわかりにくく、聴導犬の犬種も様々。同会顧問で日本聴導犬協会の有馬もと会長は「聴導犬には認定書付きのオレンジ色の服を着せているが、チワワなどの小型犬もいるため聴導犬だと気付いてもらえないことも多い」。
介助犬についても、社会福祉法人日本介助犬協会の高柳友子常務理事は「法施行後も残念ながら差別が減らない」と話す。アンケートはしていないが、病院で断られるケースなどが報告されているという。
厚生労働省によると国内で実働の補助犬は、盲導犬966匹、介助犬70匹、聴導犬73匹(5月1日現在)。2020年の東京パラリンピックには、多くの補助犬利用者が来日するとみられ、有馬さんは「事業者らへの啓発がもっと必要。補助犬を巡る状況をもっと成熟させていかなければ、差別的な扱いは減らない」と危惧する。
(太田匡彦)
<障害者差別解消法>
国や自治体と民間事業者に対して、障害を理由とする不当な差別を禁止し、障害者が壁を感じずに生活できるよう「合理的配慮」を提供することを国や自治体に義務付けた(民間事業者は努力義務)。
どんな施設であれ、補助犬の同伴を理由に拒否することは、車イスなどを理由に差別することと同様に不当な差別にあたる。ただし罰則はない。
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