高速道路で保護された絵になる看板猫 学芸員「すずのすけ」
1868年築の土蔵をリノベーションしたアートスペース。東京・浅草にあるギャラリー・エフだ。漆塗りの床にじっと座って、真ん丸な目でこちらをみつめる、白黒ハチワレのネコがいる。すずのすけ(錫之介、愛称・すず)だ。
ギャラリー・エフのスタッフ、Izumiさん(45)は、すずとの出会いを振り返る。「2014年6月の深夜。福島の被災地猫の給餌活動の帰り、高速のパーキングエリアから本線に合流する寸前に、ぽつんと座ってたんです」
給餌活動の帰りだから、段ボール箱やガムテープもそろっていて、これほど捕獲・保護に適した車もなかった、と笑う。
「実はすずのほうが、私たちを捕まえたんじゃないかって」
ネコ学芸員は忙しい。展示があるときは、お客様のご案内。蔵の細い階段も、ときどき振り返りながら先導してくれる。在廊する画家のモデルになることも。音楽や落語、朗読などイベントも開催されるが、そんな時にも「おもてにゃし」精神を発揮。
「演目の最中は事務所に待機。終わると、客席に入っていって、誰かしらの膝の上に座っちゃう」
誰にも優しい人気者
フリートーク中、演者のすぐ脇に登壇することも。
「一瞬で客席の注目と笑いを持ってっちゃうから、演者たちも、『持ってかれちゃうなぁ』って。でも皆さん嬉しそうなんです」
併設のカフェでは看板ネコ。子どものお客さんが来ても嫌がらないし、誰にでも優しく接するので人気者だ。
ギャラリー・エフは、福島県飯舘村で被災地猫保護活動をしているボランティアたちの連絡所にもなっている。ネコの首輪や雑貨など有志による手芸作品を販売し、売り上げを活動資金の一部にする活動も。すずは、作品のモチーフとなり、SNSに可愛い姿を披露している。
「ネコでもアートでもお茶でも。どんな目的でもいいから、ここに来てくつろいで、ちょっとだけ、被災地のことを考えてもらえたら。すずのすけも、お待ちしてます!」
(AERA増刊「NyAERA」から)
(文:ライター・浅野裕見子、写真:山本倫子)
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