子猫の「社会化期」に慣らしておきたいものと、その方法は?
前回お話したように動物が仲良く暮らすためのコミュニケーション能力を身につける過程を社会化と言います。社会化期にはすべての基本的な社会的絆が形成されるため、猫にとってとても大切な時期です。
社会化は本来、人や猫などの生物に対して用いられる言葉ですが、日本ではより広く生活環境中のさまざまな刺激に慣らすことも含めて用いられることが多いため、ここでも無生物に対する順化を含めてお話することにします。
これから何回かに分けて社会化期に慣らしておきたいもの(人・猫・他の動物・動物病院など将来行く可能性のある場所・移動・そのほかの刺激)と、その方法について説明します。
人への「社会化」猫も楽しめるふれあいを心がけて
人間社会で生活する猫にとって最も大切なのは人への社会化です。飼い猫にとって人への社会化は幸せに暮らすための必須条件とも言えます。猫の社会化期は生後2週齢から9週齢ですが、人などの異種動物との社会化に最も重要な時期は生後3~6週齢頃とされています。
もともと持って生まれた気質の影響によって個体差はありますが、生後6週齢頃までにさまざまな人と接する機会を持つことで人を受け入れやすくなります。この時期を過ぎたら社会化が出来ないと言いうわけではありませんが、時間経過とともにどんどん難しくなっていきます。したがって子猫をブリーディングした場合も、野良猫や捨て猫を保護した場合も、できるだけ早い機会にさまざまなタイプの人と楽しく触れ合う機会を作ってください。女性だけでなく男性、また成人だけでなく子供や高齢者を含む、できるだけいろいろな姿かたちの人と接する機会を作りましょう。
この際に注意してほしいのは人間本位のふれあいではなく、猫も楽しめるふれあいにすることです。無理やり抱いたり触ったりすることは、人にとっては楽しくても猫にとっては嫌な経験になってしまうこともあります。そうすると、社会化したつもりが逆に知らない人を怖がるようになってしまうこともあります。おもちゃで遊んでもらったり、好物をもらったり、やさしくなでてもらうというような良い経験を積ませておくことで、人を受け入れやすくなります。
子猫に警戒心が芽生えていると、いきなり食べ物を与えても食べなかったり、触ろうとすると逃げたりすることがあります。逃げる猫を追い回して強い恐怖を与えてしまうと、関係を修復するのが難しくなります。そのようなときはこちらから近づかずに、すわっておもちゃを動かして遊びに誘ってみましょう。少しずつ慣れてくれば遊んだり、食べたり、ふれあったりできるようになると思います。
社会化期に手荒に扱ったり、乱暴な遊びをしたりすると、将来も人に対して攻撃的にふるまうようになることがわかっています。子猫との遊びは人の手足を使わず、必ずおもちゃを使って遊ぶこと、人とのふれあいはやさしくなでるなど穏やかなものにすることを心がけましょう。
社会化期を過ぎると、かなりの根気が必要に
社会化期を過ぎた野良猫の子猫を保護したようなケースでは、人を受け入れるようにするにはかなりの根気が必要になります。そのような場合でも特定の人がじっくりと接する時間を持つことでその人との絆を築くことは不可能ではありません。ただし、猫が押し入れなどに隠れて全く人前に姿を現さず、人がいなくなってから食べ物を食べるというような状況では、野良猫との関係と同じですから永遠にふれあいは望めません。
当分の間はケージ飼育とし、リビングなど飼い主が過ごす時間の長い部屋の隅などに置きましょう。ケージにはタオルなどをかけて目隠しをし、安心できる空間にしてあげましょう。食器で与える食事は少量にして、おなかを空かせた状態で、好物を柄の長いスプーンなどにのせて直接与えるようにしましょう。初めは怒ってシャーッと言いながら手で払いのけるかもしれませんが、おだやかな態度で根気よく行えば少しずつ心を開いてくれるでしょう。
当院でも保護猫を預かる機会が多いため、社会化期を過ぎた猫の世話をすることがあります。この際社会化に適した時期を過ぎていても子猫であれば比較的早く慣れてくれますが、成猫ではそういうわけにはいきません。もっとも長い子では1年ぐらいかかりましたが、最終的にはおだやかになでたり触ったりできるようになりました。
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