化粧品開発、動物実験なしで 日本企業も海外の規制に対応めざす
化粧品の開発で「動物実験」をやめる動きが広がっている。欧州を中心に動物実験をした化粧品の販売が禁じられたからだ。動物に頼らない新たな開発方法を検討するアジアや欧州の研究者らの会議が、16日まで日本で初めて開かれ、日本企業も対応を進めている。
佐賀県唐津市で開かれた会議には、研究者ら約200人が参加。フランスの民間研究機関の代表は、人工の皮膚のモデルを使う検査方法を紹介し、「動物実験をしなくても、精密で正確な検査が可能となった」と説明した。インド政府関係者は「人間だけでなく動物の福祉も重要だ。動物実験は化粧品に限らず減らしていく」と話した。
海外では、ウサギやマウスなどを使う動物実験を取りやめる動きが広がっている。「美しさのために、動物を犠牲にしてはならない」という消費者の運動を受け、欧州連合(EU)は2013年、動物実験をした全ての化粧品と原料の販売を禁止した。これにインドやイスラエルが続き、台湾でも今年10月に同様の法律ができた。
日本では、人体に悪影響がないかを動物を使って事前に調べる方法は新薬や化粧品の開発で広く採用されてきた。資生堂はEUの動きに合わせ、13年に動物実験の取りやめを表明。花王やコーセーなど大手メーカーも続いた。化粧品の原料をつくるメーカーに、動物実験をしていないことを確約させるケースもある。政府の法規制はなく「企業任せ」になっている。
動物実験に代わる開発方法として注目されているのが、人の細胞をもとにした培養細胞や人工皮膚などの活用だ。なかでも、アレルギー反応を人由来の培養細胞で調べる「エイチクラット」という検査方法は、資生堂と花王が13年かけて共同開発したもので、今年、OECD(経済協力開発機構)から「国際標準」として認められた。モルモットでは4週間で100万円かかった実験が、2日で2万円程度で検査できるなどコスト削減にもつながる。
ただ、動物実験に代わる方法は、目や皮膚への刺激など部分的な検査法は確立してきたが、全身や生殖機能への安全性を調べるものはまだ不十分だ。各国が産官学連携で検査方法の充実を急いでいる。日本動物実験代替法学会の小島肇会長は「代替法は人への安全性、開発コストの経済性、動物愛護の倫理性のいずれでもメリットがある。研究を加速したい」と話す。
(西尾邦明)
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