避難、入院… 子犬や子猫が環境変化に対応できるように教育を

昨年のWJVFでの模様
昨年のWJVFでの模様

 今やペットは家族の一員と考えられるようになったばかりか、我が子同様に考える人も少なくありません。実際に犬の知能は人の2歳児ぐらいに匹敵するであろうとも言われており、特に人とのコミュニケーションにおいては極めて高い能力を持っていることが証明されています。

 ただし犬は、人の子どもと違ってそれ以上に知能が発達することはなく、将来独り立ちすることもありません。人間社会で生きていくためには飼い主が終生世話をする必要があるのですが、子犬や子猫が生涯を全うするまでの十数年の間に、何が起こるかは誰にもわかりません。どんなに若く元気な飼い主であっても、病気や事故、そして災害などさまざまな事情で飼育し続けることが難しくなることはあり得ます。

 生涯同じ飼い主が飼育することが理想ですが、たとえ万が一のことがあったとしても、幸せに暮らせるように教育しておくことこそ飼い主の責任だと思います。これは親が子どもを育てる時に、子どもが社会に出て苦労しないようにと人間社会のルールを教育することと似ているかもしれません。子犬や子猫の間に豊かな環境で育て、多くの経験を積ませておくことで将来、環境の変化を柔軟に受け入れることができるように成長します。

 さまざまな場所や人に慣らしておくこと、すなわち社会化は最も大切な教育のひとつです。特に人に対する信頼感を育てておくことは、人間社会で生きていくためには最も重要です。たとえば大規模災害時に避難する場合、または飼い主が病気で入院してほかの人に預けるような場合にも、ペットは全く普段と違う環境に置かれます。我々人間はその理由を理解できますが、彼らには理解できません。より早く新しい環境に慣れることができれば、犬のストレスも少なく、犬を預かった人も犬との生活を楽しめるでしょう。

 子犬や子猫は非常に未熟な状態で生まれ、生まれてからしばらくは目も開かず、耳道も閉じ、排泄(はいせつ)さえ自分自身でできません。脳組織も同様に未熟で、生まれた後もどんどん発達します。完全な状態で生まれないからこそ、生まれた後にこれから自分が生きていく環境をモニターし、そこにうまく順応できるように成長することができるのです。

 言い換えれば、社会化期を含む子犬・子猫の時期は、彼らが人間社会で幸せに暮らすための準備期間です。この時期に人間社会に適応できるように育てることで、犬や猫は生涯幸せに暮らす準備ができることになります。社会化を含む子犬・子猫期の教育こそ、飼い主の義務であり、物言わぬ家族に送る一番のプレゼントになるでしょう。

 日本動物病院協会(JAHA)では、10年前に子犬教育のスペシャリストとも言える「パピーケアスタッフ」を養成する講座をスタートしました。現在は子猫教育に関する知識も加わっています。パピーケアスタッフは子犬・子猫の飼い主に社会化を含む適切な飼育方法を指導し、動物病院におけるペットのストレスを減らして診察を受けやすくしてくれます。現在、全国に50人以上のJAHA認定パピーケアスタッフが誕生しており、それぞれの動物病院で活躍しています。

昨年のWJVFでの模様
昨年のWJVFでの模様

 来たる6月19日に大阪城公園近くの松下IMPホール(大阪市中央区)にて開催される「WJVF(ウエストジャパンベテリナリーフォーラム)」では、毎年全国のパピーケアスタッフがそれぞれの動物病院で行っているパピークラスの様子を披露します。市民公開講座は誰でも無料で参加できますので、ぜひお越しください
http://www.jaha.or.jp/contents/modules/sect4/index.php?id=80)。

村田香織
獣医師、もみの木動物病院(神戸市)副院長。イン・クローバー代表取締役。日本動物病院協会(JAHA)の「パピーケアスタッフ養成講座」メイン講師でもある。「パピークラス」や「こねこ塾」などを主催、獣医学と動物行動学に基づいて人とペットが幸せに暮らすための知識を広めている。

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