事故でペットを死なせた… 慰謝料は増加傾向

 他人の過失によって事故が発生し、そのためにペットが亡くなった場合、裁判上、飼い主の慰謝料請求が認められるケースがあることはご存じでしょうか?

 一般的に、ある物が他人の故意または過失によって壊されたときには、その物を修理する費用や買い替え費用の賠償を命じれば、「所有者の精神的苦痛は慰謝された」として、それ以外に慰謝料の請求は認められません。例えば、交通事故の被害にあって車が損傷したとき、修理費が支払われて修理が完了すれば、自分の愛車が傷つけられたことで受けた精神的苦痛に対する慰謝料はまず認められません。

 しかしながら、このコラムでも説明しましたが、動物は単なる物とは違い、「命あるもの」です。壊れたら――すなわち死んだり傷ついたりしたら、代わりのペットと返品・交換すればいい、というものではありません。

 そのため、飼い主にとってペットが単なる物以上の存在であると認められる場合には、ペットの死亡によって飼い主が受ける精神的苦痛は、動物の経済的価値を賠償してもなお慰謝されるものではないという論理で、さらに飼い主に慰謝料を支払う必要があるとされています。

 ペット死亡による慰謝料を認める裁判例は、特に新しいわけではなく、古くは1961年9月11日東京高等裁判所判決があります。判決書では次のように判断されています。

「一般に財産権侵害の場合に、これに伴つて精神的損害を生じたとしても、前者に対する損害の賠償によつて後者も一応回復されたものと解するのが相当であるけれども、時として単に財産的損害の賠償だけでは到底慰藉され得ない精神上の損害を生ずる特別の場合もあり得べく、他人が深い愛情を以て大切に育て上げて来た高価な畜犬の類を死に致らしめたようなときは正にこの例であつて、被害者は仮令畜犬の価額相当の賠償を得たとしてもなお払拭し難い精神上の苦痛を受けるのは当然であり、これはもとより当事者の予見しうべきところであるから、控訴人は被控訴人がジミーの死亡により蒙つた精神上の損害に対する慰藉料をも支払うべき義務ありといわなければならない」

「被控訴人はジミー負傷後直ちに治療費九千円を支出して獣医師の許で十分の手当を尽くし、その死亡後埋葬料二千円を払つて手厚く回向院に埋葬した事実を認めうべく、これと前記の如きジミー死亡に至るまでの経過を参酌すれば、控訴人の支払うべき慰藉料額は金三万円を以て相当額と認める」

 その後も、判決でペットの死亡慰謝料が認められるケースはありました。しかしながら、慰謝料の額は数万円程度であり、あまり注目もされてはいませんでした。

 それが2000年代以降になると、慰謝料の額が増えてきました。これは、2000年に初めて動物愛護管理法が改正されたこと、そして、この改正の背景にある一般社会の動物愛護の気風の高まりと関係があるかもしれません。

 例えば、

①2002年3月28日宇都宮地方裁判所判決は、獣医療過誤により死亡した猫(アメリカンショートヘア)について20万円

②2004年5月10日東京地方裁判所判決は、獣医療過誤により死亡した犬(日本スピッツ)について60万円(飼い主1人あたり30万円)

③2007年9月27日東京高等裁判所判決は、獣医療過誤により死亡した犬(犬種不明)について105万円(飼い主1人あたり35万円)

④2013年8月21日東京地方裁判所判決は、ドッグホテルから逃げ出し交通事故で死亡した犬(犬種不明)について20万円(飼い主1人あたり10万円)

 など、慰謝料をそれぞれ認めています。

 家族同様にペットを愛する人たちから、「ペットは法律上は物だから」「法律ではペットは人と同じ扱いがされていない」など、怒りと悲しみの交じった意見をよく見聞きします。

 しかしながら、このように、法律や裁判の中で、ペットについて人と同じような取り扱いをし、人に近づけて考えている場面は少なくありません。ペットたちが何らか不幸な事態に直面したとき、泣き寝入りしたり、あきらめたりすることなく、最善の方策を探る努力をしてみることをおすすめします。

2001年弁護士登録(兵庫県弁護士会)。民事・家事事件全般を取り扱いながら、ペットに関する事件や動物虐待事件を手がける。動物愛護管理法に関する講演やセミナー講師も多数。ペットの法と政策研究会代表、ペット法学会会員。

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