健康寿命を保つための5つの約束② 子犬猫期
犬猫の健康にとっても
一生に一度しかない重要期
生まれた場所で適切な「社会化期」を過ごしてきた子犬や子猫たち。
きょうだいや親とたっぷりコミュニケーションを取りながら、
ブリーダーの手で育てられてきた。
飼い主が自宅に迎えてからも、社会化期は続く。
子犬や子猫は、人との関係や環境をこれまで以上に学んでいく。
ポイントは愛情としつけ。この時期が将来の関係を左右する。
(文=福光 恵 中村千晶 イラスト=谷山彩子)
予防注射と社会化期の応用で健康の土台作りを
子犬や子猫がブリーダーなどから各家庭に引き取られていくのは、たいてい生後2~3カ月ごろ。実はこの時期は、犬猫の一生で一度しかない「社会化期」のまっただ中だ。動物病院など、専門家の意見を聞き、この時期だからこそできる有効なしつけや、犬猫に体験させたいことなどをリストアップ。計画的に子犬や子猫と接していきたい。
また、この時期は子犬、子猫を病気から守ってくれていた母親からもらった抗体が、徐々になくなっていくときでもある。数回の予防接種を受け、抗体が安定してから、外部との接触を始めるのが決まりだ。
いよいよ子犬や子猫が我が家にやってくる。このとき必要なものは、犬と猫では多少違いがある。まず犬だが、最低限必要なのが、サークルとよばれる囲い、食器、フード、トイレ用のペットシーツ、そしておもちゃ6種類程度だ。サークルはこの先ずっと、犬がいつでも静かに休める「マイルーム」となり、子犬のときには、犬の最初のしつけであるトイレのしつけにも活用できる。
まずはサークルから
子犬が到着したら、始めたいのが、このサークルを使ったトイレのしつけ。具体的にはサークルの中の一部にペットシーツを敷き、遊んだ後や、お昼寝から起きた後、またトイレがしたくてそわそわするそぶりなどを見せたら、サークルの中のペットシーツの上に下ろす。見事、ペットシーツの上でトイレができたら「おりこうね!」などといって少々オーバーに褒めながら、ときにごほうびとしておやつなどをあげる。これを何度も繰り返すうち、サークルがなくても、犬はトイレをペットシーツの上ですることを覚える。
お留守番のときにも、サークルは活躍する。内部にペットシーツを敷いて、横にクレートと呼ばれる寝床用の箱を置いてあげれば、トイレもできて、ぐっすり眠ることもできる快適なマイルームに。犬はおもちゃも一つ30分程度で飽きてしまうため、6種類くらいサークルに入れると、遊んで気を紛らわせているうちに2~3時間のお留守番がこなせるようになる。
一方、猫は、ケージ、食器、フード、そして猫用のトイレが必要になる。囲いは、屋根の部分が開放されているものとないものがある。開放されているサークルに対して、猫のケージは屋根部分も柵で囲われている物を指すのが一般的だ。
猫の場合、トイレを正しく置けば、すぐにトイレを覚えるので、しつけの必要はほとんどない。犬より手がかからないが、ひとたび困ったことを始めると、少々叱っても犬のようにしゅんとなったりすることはなく、やってはいけないことだという認識が持てない場合も多い。
たとえば壁で爪研ぎをするクセがついてしまった猫は、たとえ叱っても、何度でもそこで爪研ぎをすることもあるという。これはもう叱るより、こちらで防御策を考えるしかない。
「近づいてほしくない場所はあらかじめ覆いをするなどして、物理的に猫が近づけない工夫をすることが大事です」
と赤坂動物病院の柴内裕子院長。その点、犬はやりようによっては、しつけによって、やってはいけないことを教えることが可能だ。
「とはいえ、しつけは叱るより褒めるほうにポイントを置くことが重要です。良い行動ができたら、トイレのときと同様、心を込めて褒める。一方、机や椅子をかじるなど、いけないことをしたときは、『あ!』のひと言でいいのです。むやみに長々叱っても逆効果のことも多いですね」(柴内氏)
社会化期にしつけを
しつけといえば、犬猫とも、もっとも吸収しやすい時期がある。社会化期と呼ばれる生後3週目頃から始まる時期だ。犬は生後100日頃まで、猫は生後50日頃まで続くともいわれる。社会化期が始まる頃、まず子犬や子猫は親やきょうだいなどと遊び、「自分が犬猫である」ということを自覚する。その後、犬猫が人や環境を受け入れる時期となる。この時期は新しい環境に適応しやすく、いろいろなことをどんどん吸収するといわれる。反対に、ここでしつけなどの対応を間違えると、のちの問題行動につながる場合も。
ただし、社会化期は子犬や子猫の予防接種が完了していない時期のため、外を散歩をしたり、他の犬猫との接触はできない。そこで、抱っこ散歩をして、知らない人に触ってもらったり、町の様子を見せたり、聞かせたりして環境に慣れさせるのがいい。
猫にとっても、社会化期は今後を決める大切な時期。猫の場合、動物病院などへの移動を嫌がって暴れることもあるというが、この時期からキャリーに入れて動物病院に連れていくなどして、外の世界に慣らすのもいいだろう。
社会化期は、将来の健康チェックや病気治療に備えて、犬猫にボディーチェックに慣れさせるのにも向いている。また、散歩ができるようになる日に備えて、家の中でリードで歩く練習などを始めたり、家の中で楽しく遊ぶときのルールを教えたりしよう。お留守番にも慣れさせたい。
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