金魚すくいの金魚は、動物愛護法で守られているの?

 7月になりました。また暑い夏がやってきます。

 

 夏とペットといえば……金魚を連想しました。

 

 夏祭りの「金魚すくい」で子どもが持ち帰ってきたのをきっかけに、金魚を飼ったことがある人はかなり多いのではないでしょうか。わが家にも、もうすぐ丸2年になる金魚が元気に泳いでいます。

 

 ところで、犬、猫、うさぎと動物愛護法の対象とされている代表的な動物をこれまで紹介してきましたが、ペットの金魚や熱帯魚はどうなっていると思いますか?

 

 結論から言いますと、ペットの魚類は法律で十分には守られていません。

 

 もう少し正確にいうと、動物愛護法の基本原則をはじめ、スローガンの部分では、特に限定せず「動物」が対象とされており、ここには魚類も含まれていると考えてよいでしょう。ただ、みだりな殺傷や遺棄が禁止される「愛護動物」や、商売を始めるときに都道府県への登録が必要となる「動物取扱業」は、「哺乳類、鳥類、爬虫類」のみを対象としています。両生類や魚類も哺乳類などと同じ脊椎動物ではあるものの、こうした具体的な規制になると、その対象には含まれていないのです。

 

 つまり、魚類を想定した実効性のある条文が今の動物愛護法にはないため、たとえば金魚すくいの金魚は、法律で守られてはいません。法律ではなく、関係者のモラルや過去の経験などによって守られ、ときに守られなかったりするというのが現状だろうと思います。

 

 といっても「魚なんて守ってやらないモン!」と法律が明言しているわけではないので、将来的に対象動物に入れることは理論上は可能ですし、そうなることがあるかもしれません。

 

 実際、2012年の法改正の際、その議論の中で、業者が扱う動物に新たに両生類や魚類を入れるかについて、環境省で検討されました。結果は「見送り」でしたが、次回以降の法改正の際も、議題に上がる可能性はあります。

 

 今の法律では、飼えなくなったと言って金魚を川などへ捨てても明確に違法とはいえないことになります(生態系等を害する「特定外来生物」に指定されていれば別です)。しかし、こうした行為が、広く動物を「命あるもの」として適正に取り扱うことを定める動物愛護法の精神と相いれないことは言うまでもありません。

 

 前回の法改正で、「動物の所有者は終生飼養に努めること」と定められました。「最後まで飼えないならば最初から飼わない」「きっかけはどうあれ、飼い始めたら最後まで」というのは、魚にもあてはまることです。

細川敦史
2001年弁護士登録(兵庫県弁護士会)。民事・家事事件全般を取り扱いながら、ペットに関する事件や動物虐待事件を手がける。動物愛護管理法に関する講演やセミナー講師も多数。動物に対する虐待をなくすためのNPO法人どうぶつ弁護団理事長、動物の法と政策研究会会長、ペット法学会会員。
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