左から、保護猫の「えび」「もなか」(都甲さん提供)
左から、保護猫の「えび」「もなか」(都甲さん提供)

ペットロスで「もう猫は飼えない」 立ち直りの鍵はアルバム作りと保護猫との出会い

 現在、2匹の保護猫と夫、子ども2人とともににぎやかで幸せな日々を送る都甲(とごう)さん。しかし、かつては愛する猫を失い、深い悲しみで涙が止まらないほどのペットロスに苦しんでいました。その痛みを乗り越え、どのようにして再び猫を迎えることができたのか。立ち直りのために試みたことや、そのプロセスで気づいた大切なことについて、お話を伺いました。

(末尾に写真特集があります)

頭ではわかっても心はついていかない

「いまうちにいるのは、6歳の『もなか』と5歳の『えび』。もなかは、目が合うとゴロンと転がるところが可愛い。えびは、もなかのことが大好きな優しい子です」

 仲良しな姉弟はともに保護猫で、もなかは多摩川の河川敷で保護された元野良、えびは多頭飼育崩壊からのレスキュー。そんな2匹との出会いの背景にあるのは、先代猫・グリの原因不明の突然死でした。2019年3月、当時12歳だったグリは自宅で「にゃー」と長く鳴いたあと、息絶えてしまったのです。

生前のグリ。白黒のハチワレがチャームポイントだった(都甲さん提供)

「とくに体調が悪い様子はなく、少し下痢をしていたので、病院に連れていこうと考えていた矢先のことでした。あまりに突然のことで、心の準備ができているわけもなく……。グリが亡くなってからしばらくは、家中に彼女の気配が残っていました。彼女の声が聞こえた気がしたり、ベッドに乗ってきた感覚があったり、彼女のうんちの臭いがしたり。悲しくて何もしたくないけれど、日常は変わらずやってきます。毎日なんとか家事や育児をこなしていましたが、ふと気づくと号泣している自分がいたんです」

 完全にペットロス状態に陥ってしまった都甲さん。猫の手触りを求めて保護猫カフェに足を運んでみたものの、一時的に癒やされるだけで、「家に帰るとグリがいない」という現実が、再び悲しみとして押し寄せてきたと言います。

「ペットロスに関する書籍や記事も読みましたが、頭では分かっていても心がついていかない。そのときの私にとって、そこに書かれていたことは気休めにしかならず、立ち直るには時間が過ぎるのを待つしかないんだと感じていました」

 そんな都甲さんがペットロスから立ち直るきっかけになったのは、グリのアルバムを自作したことでした。

「グリのお気に入りの写真をいくつか選んで、マスキングテープやシールを使ってコラージュしていきました。それまでは、何かで気を紛らわせようとしてもグリを思い出してしまって余計に辛くなっていたのに、このときは不思議と気持ちが落ち着いていったんです。グリを思いながら、ひたすら手を動かしたことが心の整理に役立ったのでしょうね。彼女の死ととことん向き合うこと、それが弔いになったんだと思います。それから徐々に、キャットタワーなどグリの遺品を処分していきました」

アルバムはいまも仏壇の前に飾っている。全16ページあり、気分で入れ替えているそう(都甲さん提供)

「もう猫は飼えない」その考えが苦しめた

 それでも、グリを失った悲しみから抜けきれずにいた都甲さん。聞けば、グリを飼い始めてから夫の猫アレルギーが判明したため、「今後はもう猫を飼うことはできないだろう」という考えがよぎっていたからだと言います。

「『もう猫は飼えない』と、半年経っても泣いていた私を見かねた夫が、『いいよ、新しい猫を飼おう』と言ってくれたんです。しかも『1匹だと失ったときのダメージが大きいから、次は2匹飼おう』と提案もしてくれて。多頭飼いしている友人からの勧めも後押しとなり、再び保護猫カフェに向かいました」

 こうして、グリが亡くなった同年12月にもなかを、翌年1月にえびを迎え入れることに。

保護猫カフェで出会った日のもなか(都甲さん提供)

 深刻なペットロスから立ち直り、新しい2匹との生活をスタートさせた都甲さん。

「実はもなかは、グリを失った直後に足を運んだ保護猫カフェで出会っていた子でした。その後しばらくして再訪すると、彼女がまだ同じカフェにいたんです。夫から猫を飼おうと言われたとき、『もしかして待っていてくれたのかな。それなら、あの子がいい』と即決でした」

 その後「もなかに合いそうな子を」と同じ保護団体から紹介されたのが、えびでした。

保護当時のえび。本名は「エビアン」(都甲さん提供)

 2匹を迎え入れるにあたり、キャットタワーなどの猫グッズも再び買い揃えました。他にもキャットウオークができるテレビ台を新たに購入するなど、2匹が少しでも快適に暮らせるように、家の中を整えていったと言います。

猫に救われていた

 愛猫を失った悲しみは、時に私たちが思っている以上に深く、日常生活に大きな影響を与えることがあります。そんな中、都甲さんは猫との絆の本質にも気づきました。

「グリを失うまでは、『保護猫を1匹でも幸せにしたい、私が猫を助けなければ』と思っていたのですが、逆だったんです。とくにグリは子育てに翻弄(ほんろう)する私に寄り添って、一緒に子育てをしてくれた母のような存在。私のほうが猫に助けてもらっていたんですよね。我が家は子どもが二人いて、日常はにぎやかなほう。あのまま猫を忘れて暮らしていくこともできたとは思います。でも、やっぱり私は猫がいないとダメでした。『ペットロスは人間では埋められない。猫の存在は何にも代え難いものだ』と気づかされました」

もなかを追いかけてピッタリくっついて眠るえび。もなかはマイペースな姉御肌(都甲さん提供)

 いま、ペットロスの渦中にいる人や、これからペットとの別れの準備をしている人に向けて、伝えたいことは――。

「心が癒えるのには、時間がかかります。気持ちの整理ができていない状態で他の子を見ても、似た子を探してしまったり、どこか比べてしまったり。『手触りが違う』と、余計に悲しみが襲ってきます。まずはとことん『悲しみきる』ことが、一日も早い心の回復につながると思います」

増田夕美
ライター・編集者。ホテル広報、出版社勤務を経てフリーランスに。ファッション、インテリア、カルチャーなどライフスタイル関連の雑誌、WEB、書籍の制作に携わる。動物歴は幼少期からこれまで猫2匹と犬1匹。現在は三毛猫と暮らす。

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