保護猫だったココは、保護される前に感染症にかかっていた影響で片目の視力を失った(totochanママさんさん提供)
保護猫だったココは、保護される前に感染症にかかっていた影響で片目の視力を失った(totochanママさんさん提供)

40日間の迷子生活の末、発見された猫 飼い主は周囲に励まされ諦めず捜索した

「大切なペットが脱走した!もう戻ってこないのでは……」そう感じている方に知ってほしい。逃げた犬や猫の帰還ストーリーと、経験者に聞く保護のアドバイスです。

(末尾に写真特集があります)

旅行中に脱走した愛猫

普段のココはわがままでビビリな性格(totochanママさんさん提供)

【逃げたペットについて】
名前:ココ
性別:オス
種類:雑種猫(ハチワレ)
年齢:脱走当時7歳(現在11歳)
いなくなった状況:2019年10月27日、飼い主の旅行中、鍵をかけ忘れた2階の居住スペースの網戸を開けて1階に侵入し、空いていたサッシから外へ出た。
保護までの日数:40日

 埼玉県新座市に暮らすココは40日間の迷子生活の末、飼い主さんの必死の捜索によって奇跡的に保護された。

 事件当時のことを、飼い主であるtotochanママさんはこう振り返る。

「ココが逃げたと思われる日は、夫婦で1泊旅行に出かけた日でした。わが家は戸建てに2世帯で暮らしていて、1階は親が、2階は私たち夫婦がそれぞれ生活しているのですが、旅行当日、1階と2階を仕切る網戸の鍵を閉め忘れて外出してしまったんです。

 ココは以前から1階に興味を持っていたので、私たちが出かけたすきに、自力で網戸を開けて1階へ。運の悪いことに、その日、1階の和室は換気のため解放されていたようで、そこから外へ出て行ってしまったんです」

細かな模様がわからず

迷子チラシに問い合わせ先を掲載するために新規で携帯電話を契約したという(totochanママさんさん提供)

【いなくなった時にしたこと】
・迷子猫の掲示板に登録
・警察署、市役所の清掃課、保健所への届け出
・チラシの制作と配布(動物病院、コンビニなど)

 夫婦が状況を把握したのは、帰宅した翌日の朝。

「逃げたと気づいた時は、もうパニックですよ! 闇雲に名前を呼びながら近所を探し回ったけど、まったく出てくる気配がない。その日はひとまず捜索をあきらめて、家に帰ってインターネットで猫が脱走したらどうするべきかを調べました。取り急ぎその日中に迷子掲示板に登録して、保健所や警察署、市役所の清掃課への届け出関係を済ませました」

 チラシを作るのに1週間ほどかかり、近所のコンビニや動物病院に貼らせてもらうと、totochanママさんのもとにたくさんの目撃情報が寄せられた。

「お外の子はハチワレが多いようで、かなりの数のハチワレさんを確認しに行きましたが、結局ココは見つかりませんでした。電話で目撃情報をいただく中で、『黒い部分はどこまでですか?手脚はどこら辺まで黒ですか?』という模様に関する細かい確認が多かったので、
『ちゃんと写真を撮っておけばよかった!』と後悔しましたね。意外と、細かく模様が確認できる写真って、撮っていなかったんです」

周囲に励まされ

ココは子猫の時にスーパーの駐車場に捨てられていた(totochanママさんさん提供)

 ココの足取りどころか、確かにココだと思われる目撃情報も得られないまま、脱走から1カ月近くが経った。totochanママさんは仕事の合間に時間を作っては、ココの捜索を続けていた。

「毎日探しに行きたいけど生活も仕事もあるし、なかなか出られない日もあってイライラ。目撃情報があるたびに期待しては落胆して……。何をやるにしてもココの事ばかり考えて精神状態が限界でした」

 愛猫が脱走したという絶望の中で、totochanママさんの救いになったのが、周囲の人の気遣いだった。

「市役所に電話したとき担当してくれた若い女性は、こちらを気遣ってとても親切に対応してくれたのが印象的でしたね。迷子掲示板で知り合った人は、チラシの作り方や猫の探し方について詳しくアドバイスしてくださいました。そのチラシを見て、『一緒に探します』と連絡してきてくださった方もいました。なかなか手がかりがつかめず苦しい心境でいた時に、その方が『あなたが諦めても私は絶対諦めないよ』と言ってくれたことで折れそうな心が保てたんです。あの時は本当に、いろんな方の優しさがしみましたね」

目撃情報を追って

 ココが消えて1カ月と10日が経とうとしたある日のこと。totochanママさんのもとに、新たな目撃情報が入った。

「近所に団地があってその隣が雑木林になっているのですが、その雑木林にココがいるというんです。実は以前もその団地で目撃情報があり、見に行ったところ、ココに似たハチワレの子だったということがあって、最初はその子じゃないかと思ったんですよ。でも、連絡してくださった方が『間違いなくココちゃんです』というので、もう一度見に行くことにしてみたんです」

 結論から言うと、目撃情報は正しかった。情報提供があった翌日の朝、totochanママさんが団地に行ってみると、奥の雑木林の中に座ってこちらを見ているココが見えたのだ。

「紛れもなくココでした。でもその時は、あわてて雑木林に近づいて柵を乗りこえたら逃げてしまったんです。仕事があったのでいったんその場を離れ、午後にもう一度来てココが消えて行った方向へ名前を呼びながら進んで行ったんです。すると突き当たりにフェンスが立っていて、その向こうにある精密機械工場の裏にココがうずくまっていました」

 totochanママさんが、フェンス越しに手を入れてココの好きなおやつを差しだすと、ココは夢中で食べ始めた。

「よほどおなかが空いていたんでしょうね。食べているすきに、持ってきた洗濯ネットをフェンスの隙間から入れて地面に広げ、中に誘導することができました。そのあとは、急いで隣の民家を通らせていただいて、工場の方に許可をとって中に入れてもらい、洗濯ネットに入っているココを無事に回収したんです」

つらい経験を学びに

家に帰ってきてからしばらくは、ベランダの落ち葉の上で用を足していた(totochanママさんさん提供)

【今回の教訓】
・飼い猫の模様はメモや写真で正確に記録しておく
・多くの人の目に触れるコンビニなどにチラシを貼らせてもらう
・万が一の時のためにマイクロチップを入れておく
・脱走時に備え、名前や連絡先を書いた首輪をつける

「家に連れて帰ってから1時間くらいはじっと私に抱っこされていたので、家族のことはわかるようでした。とっても汚かったので、申し訳ないと思いつつお風呂に入れて、乾かすと安心したのか電池が切れたように眠ってしまいましたね。ずいぶん痩せていたけれど、精密機械工場で1カ月ほどご飯をもらっていたようで、実は目的情報をくれた方が、工場の方だったんです。コンビニに貼ったチラシを見て気づいてくれたそうで、やはり人の目に留まるところにチラシを貼るのが大事だなと思い知りました」

 後日、健康状態を診るためにココを動物病院に連れて行くと、「よく見つかったね!」と獣医師に驚かれた。体は痩せていたが、健康状態に異常はなかった。

 ココの脱走と40日の捜索を経験したtotochanママさんは、つらい経験の中でも、ココが戻ってきたからこそ得られたものがあったという。

「脱走事件をきっかけに、今でも連絡を取り合う猫友達ができました。あの時、知り合いでもない私のためにいろいろな方が動いてくださったことはずっと忘れません。

 今後、同じようなことが起こった時のために、教訓を得ることもできました。まずは、飼い猫の模様をしっかりと説明できるようにしておくこと。それから、それまでは入れていなかったマイクロチップを入れてもらったり、万が一、外に出たときに飼い猫だとわかるように首輪をつけたりしました。……でも、正直言ってもう2度とあんな思いはしたくないですね」

 捕獲当時は迷子生活の影響か、もともと遊び場にしていた自宅ベランダで落ち葉に用を足す、というワイルドな習慣がついていたココだが、今ではすっかり家猫の姿に戻って、日々家族にわがままを言って甘えているそうだ。

【前の回】好奇心旺盛な元野良猫 脱走防止用ドアの隙間から逃げ出し、腰が曲がって帰宅

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原田さつき
広告制作会社でコピーライターとして勤務したのち、フリーランスライターに。SEO記事や取材記事、コピーライティング案件など幅広く活動。動物好きの家庭で育ち、これまで2匹の犬、5匹の猫と暮らした。1児と保護猫の母。猫のための家を建てるのが夢。

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この連載について
迷子のペットが帰ってくるまで
「大切なペットが脱走した! もう戻ってこないのでは……」そう感じている方に知ってほしい、逃げた犬や猫の帰還ストーリーと経験者に聞いたお話です。
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