苦戦する歯みがきトレーニング おいしそうにスープを飲む愛猫「はち」に癒やされて
歯みがきを頑張っている愛猫「はち」にごほうびのおやつをあげることにし、知り合いから教わって野菜と鶏ササミでスープを作ってみた。
はちは、このスープを喜んで飲んだ。最初は、ゆでたササミを香りづけ程度にトッピングする必要があったのだが、そのうち、空腹ならトッピングなしでも飲みきるようになった。
スープはごほうびでもあるが「歯みがきをするといいことがあるよ」と教え、協力を仰ぐためのものでもある。「スープが飲めるなら、歯みがきも我慢する」となればしめたものだ。
うまくいかない…
実際、歯みがきといっても、はちの場合は「初めの1歩」にすぎない。口の周囲に触れることからスタートし、ガーゼを巻いた指に歯みがき用ジェルをつけてほんの2〜3秒、牙と呼ばれる犬歯に触れることができた程度なのだ。
ここまでのステップは順調だったが、その先へはなかなかすすめない。歯垢は、奥歯にあたる臼歯に付着しやすいそうだ。そこをみがくためには、指を今より奥に入れなければならないが、そうするとはちは不快なのか「うーうー」とうなり、私の腕をふりほどこうとして爪を立てるので、手を離さざるをえなくなる。
逃げるはちを捕まえて引き戻す。再び口に触れようとすると、今度はかたくなに口を閉じて拒否をする。
そこで、逃げるはちを引き戻したら、「もうちょっとがんばりましょう」の意味を込めてスープを差し出すことにした。スープを飲み干した直後は満足して少し安心するのか、歯みがきを許容してくれる。だが、3秒後には逃げ出すので、また引き戻してスープを与える。
この作戦は3回までしか効果がない。さすがに胃が膨れるのか、4回目以降はスープの入った器には目もくれず、すたこら逃げてしまうのだった。
この程度で歯みがきができていると言えるのか、ごほうびの意味もあるのか疑問だ。
成猫から歯みがきを習慣づけるのは難しく、何年もかかる覚悟が必要と、インターネットの記事にも書いてあった。わかってはいたが、すぐに目に見えた成果がでないとこちらもやる気が起こらない。歯みがきも、さぼりがちになっていった。
スープがほしい、その時に
そうして何日か経ったころ、夕方、私が台所で冷蔵庫の扉を開け閉めしていると、どこからともなくはちがやってくるようになった。足元に座り、目を丸く見開きじっと私を見上げる。冷蔵庫と流しを行ったり来たりするたびについてまわる。
どうやら、スープの催促らしい。目当てのものが出てこないとわかると、ニャーニャーと鳴いて足に顔をこすりつける。
スープが好評なのは嬉しい。だからといって、せがまれるままに与えていては癖になる。
そこで思いついたのは、はちがスープを飲みたがるタイミングを歯みがきに利用しては、ということだった。
これまで歯みがきは、はちがくつろいでいたり、なんとなく「今ならできそう」と感じるときに行っていた。でもこれは不意打ちをかけるようで、ちょっと後ろめたかった。
「スープが飲みたかったら、歯みがきしないとね」
と言いながら、まずは少しスープを与えて懐柔してから歯みがきを行う。
すると不思議なことに、以前より少し長い時間、みがけるようになった。
といっても、3秒だったところが5秒になった程度だが、それでも進歩だ。進歩があるとこちらもうれしく、がぜんやる気になる。
少しずつ、少しずつ
再び、2日に1回は歯みがきにトライするようにしていたところ、ついに奥の臼歯にまで指が届くようになった。
指に巻いたガーゼを見ると、うっすらと黄色いものが付着していた。
「歯垢が取れたよ、えらいね!」とはちの頭をなでる。はちも、まんざらでもなさそうな様子で顔を上げ、目を細める。
こうして、歯みがきを初めて数カ月後に動物病院に連れて行くと「右側の上の歯茎の赤みは、以前より少し引いている」と言われた。
とはいえ、歯みがきの道はまだまだ険しい。
歯みがきは当然、左右上下の歯に行う必要がある。だが私ができたのは、右側の上の歯の1部のみ。歯みがきをする際には、はちの後ろにまわり、抱え込むようにして行う。右利きの私にとっては右側が触りやすい。左側に触れる際には、手をはちの口の前に回すことになるので、噛みつかれるのではないかと怖くて及び腰になる。下の歯茎に指を入れるのにも同様の不安がある。
歯みがきの間、はちがおとなしくしていることはまずなく、歯ブラシを使うなど夢のまた夢だ。
それでも、今日もおいしそうに手作りスープを飲むはちを見ていると、歯みがきの成果はここにあったのかと感じる。
(次回は7月21日公開予定です)
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