忠犬ハチ公ならぬ、忠犬ダックス! 駅で家族を待ち続ける日々からたくましく成長
「愛犬との絆は、息子がつないでくれたものです。社会人になったら必ず犬を飼うと決めていた息子が、ネットで懸命に探して、私に写真を見せてくれました。『どう思う?』と聞かれた瞬間、なんとびっくり。私が小さな頃に飼っていたダックスフントとそっくりだったのです。直接会いに行って、即迎え入れることに決めました」
そう語るのは、京都府にてダックスフントのカイザーをのびのびと育てている西田さん。今年で7歳を迎えるカイザーですが、成長途中で息子さんが転勤するなど大きな環境の変化もありました。それらをどう乗り越えていったのか、その絆の物語をお伺いします。
鼻水を垂らしたままの姿がいとおしくて
「カイザーを初めて見に行ったとき、ほかの子はキャンキャンと走り回る中、この子はただひとり、静止画のようにポツンとたたずんでいました。さらに印象的だったのが、鼻水をツーっと垂らしていたこと。動かないだけにその鼻水は今にも地面に届きそうで、そのつららのような鼻水を、私たちは“鼻爆弾”と呼んで、ほほ笑ましく見守っていました(笑)」
ワクチンを受けたのちにあらためて迎え入れるべく、京都の病院で再会したときも、その“鼻爆弾”は健在。いとおしく思う気持ちはさらに増し、無事家族の一員になりました。
「息子の愛情のかけ方はものすごく深く、カイザーが暮らしに慣れてきたころから、一緒に眠るようになりました。当初はベッドで寝ていましたが、落ちたら大変だと布団に変更。平日は息子のほうが早く起きますが、休日はカイザーが息子の顔をぺろぺろとなめて起こしてあげるという具合。その相思相愛ぶりは、見ているこちらも心が温まるものでした」
毎朝の散歩は、カイザーと西田さんが先に出てゆっくりと歩き、そこに出勤する息子さんが追いついて、最寄り駅の改札まで一緒に走るというもの。その幸せなルーティンを存分に味わっていた日々に、ある変化が訪れます。それが息子さんの転勤でした。
息子の姿を探して駅にたたずむ日々
「息子がいなくなってからのカイザーは、それでも駅まで散歩に行き、ずっとお座りをして待つようになりました。私は『すぐに忘れるだろう』と考えていたのですが、10日ほど経ってもまだお座りをして、そこから離れる気配はありません。とはいえ、帰ってこないものは帰ってこない。駅員さんも心配して声をかけてくださるものの、断固として動こうとしないのです」
忠犬ハチ公ならぬ、忠犬ダックスと呼びたくなるような深い愛。駅でたたずむだけでなく、スーツにビジネスバッグをもった男性がいると、じーっと見つめ続けるようになってしまったそう。
周囲の犬仲間たちのアドバイスもあり、当分の間、駅周辺を訪れるのは避けたほうがいいのでは、という結論に。そこでしばらくは、散歩ルートを駅と逆方面の山側を歩くコースに変更。すると、少しずつカイザーも元気を取り戻していったと言います。
「その後、もう大丈夫かなと駅方面への散歩を試みることもありましたが、やっぱりまだ覚えていて、お座りしたままになってしまうのです。どうしたらよいものかと考えて、息子の携帯電話に連絡をし、声を聞かせることに。すると安心するのか、ようやく連れて帰ることができるようになりました。そうなるまで4カ月ほどかかったでしょうか。あれだけ甘えさせてくれた息子がいなくなって、すごく寂しかったのかもしれません」
また、その後の息子さんの帰省時は、駅までのお見送りは車で行くように。すると、駅はお見送りの場所と認識するようになったのか、電車を見送ったらすくっと立ち上がるようになったそう。
「とはいえ今も駅に行くと、まずは改札付近にじっとたたずみ、必ず電車を1本見送るのが常。姿が見えなくても、声が聞こえなくても、今はそれで帰ってこられるようになりました。カイザーなりに時間をかけて状況を理解したのかもしれませんね」
一生涯の親友と出会うことができた
そんなカイザーのお気に入りは、骨型の小さなガム。時間になるとガムが入っている引き出しをじーっと見つめて催促します。西田さんがガムを持つと飛んだり跳ねたりして走る準備。いざ投げると同時に走り出し、ガムをくわえて、いつも同じ場所でカミカミするのが至福の時間です。
「そのときにおかしいのが、その様子を私が横からのぞいて、ガムを横取りするフリをさせられること(笑)。そのフリをすると、誰にでもスリスリするあのフレンドリーなカイザーが、牙をむき出しにして怒るんです。その表情はまるでゴジラ! ただ、そこまで怒るくせして、私が止めるとつまらなそうな顔をして、またフリを催促する。あれはいったい何なんでしょうね(笑)」
実は西田さん自身、カイザーと暮らすまでは知らない人と話をするのが得意ではなく、友人知人とのコミュニケーションを苦手だと感じていたのだそう。
「それが今では、カイザーを介して大親友と出会ったのです。家族ぐるみでお付き合いをしていて、その家族のワンコとカイザーも大の仲良し。誘い合わせて遠出をした先で、2匹はピッタリとひっついて散歩をし、広い場所に出たらドーンと体をぶつけ合ってはしゃいでいる。ああ、こんな幸せがあるのだな、としみじみかみ締めている今日この頃です」
そんな西田さんの願いは、「とにかく1日でも長生きしてもらうこと」。環境の変化を受け入れ、たくましく成長するカイザーと西田さん家族。その愛の物語はまだまだ続いていきます。
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