甘えん坊の元野良猫が脱走 効果ある?唐揚げを仕掛けて待ってみたら…
「大切なペットが脱走した!もう戻ってこないのでは……」そう感じている方に知ってほしい。逃げた犬や猫の帰還ストーリーと、経験者に聞く保護のアドバイスです。
足元をすり抜けて脱走
- 【逃げたペットについて】
- 名前:ハチ
性別:男の子
種類:MIX(保護猫)
年齢:当時10カ月(現在4歳)
いなくなった場所:以前住んでいた家のリビングから外につながる掃き出し窓
理由:窓を開けたまま洗濯物を干していたら、足元をすり抜けて出て行った
時期:2019年6月
保護までの日数:1日
のんのんさん家族と2匹のお姉さん猫たちと暮らすハチワレ猫のハチ(当時10カ月)は、家の掃き出し窓から脱走した。
「私が洗濯物を干そうと窓を開けると、庭にハチとよく似た猫がいてこっちを見ているんです。あれ? と思ってよく見たら、やっぱりうちの猫。『しまった! 足元からすり抜けた!』とパニックになり、慌てて追いかけたのがよくなかった……。ハチも普段と違う私の様子に驚いて、裏庭から表に出て道路を渡り、走り去ってしまったんです」
洗濯物はそのままに、名前を呼びながら近所を探し回るものの、ハチの姿はどこにもない。「見つけた時に冷静に対応していたら……」と悔やみつつも、のんのんさんは次の手を探した。
猫好きの掲示板でアドバイスを求めた
- 【いなくなった時にしたこと】
- ・猫好きコミュニティの掲示板でアドバイスを求めた
・ハチのトイレの砂を家の周りにまいた
・迷子ポスターをつくって近所を回った
・妹家族に連絡し捜索を手伝ってもらった
・警察に遺失物届けを出した
のんのんさんは、すぐに自分が利用していた猫好きコミュニティーの掲示板に脱走の経緯を書き込み、アドバイスを求めた。すると多くの人が捜索に役立つ有益な情報を提供してくれたと言う。
「迷子ポスターを作ったほうがいいとか、ドアを開けておいたら帰ってくるかもとか、言われたことはできる限り実践しました。たくさんいただいたアドバイスの中でも驚いたのが、『コンビニで唐揚げを買ってきて窓の近くに置いとくといい』というもの。『猫に揚げ物?』『ハチは人間の食べ物をあげたことがないんだけど……』と半信半疑だったのですが、匂いの強い揚げ物に猫が引き寄せられることがあるとのことで、試してみようと思いました(※捜索のための手段です。普段から唐揚げを与えないでください)」
のんのんさんはさらに、自宅から1時間ほどの場所に住む妹家族を呼び出し、妹と2人の甥っ子とともに近所を5周ほど捜索した。
きっと戻ると信じて
ハチは、のんのんさんの家の近所に立つ廃屋でひとりきりで鳴いていた元野良猫だ。近所のおじさんが「お宅で飼うか、どこか遠くへ」と言って、猫好きなのんのんさんの家に連れてきたため、家族の一員に迎えた。
「もともと外の猫だから、このあたりの土地勘はあるはず。きっと生き残って戻ってくるよ」。妹の言葉にうなずき、のんのんさん自身も戻ってくることを信じていたものの、4人の捜索でもハチの足どりはつかめず、不安はつのった。
「地域猫がかなり多い地域です。地域猫にいじめられていないか。大きな道路に飛び出してケガをしたりしないか。本当に心配でした」
のんのんさんは、日中の捜索をいったん打ち切り、猫が動き出す夜から再び捜索をすることにした。そして日が落ち始めた午後6時、再び捜索を開始したが、有力な手がかりは得られずに帰宅。だが、事態はその後好転する。
唐揚げの匂いで…
「夜8時ごろでした。近所の廃屋から、猫の鳴き声が聞こえたんです。急いで姿を見に行くと、間違いなくハチでした」
姿は確認できたものの、外で怖い目にあったのか、ハチはずいぶん警戒していた。「やっぱり帰ってこられた!」。捕まえることはできないものの、のんのんさんは少しだけホッとしたと言う。今夜中にカタをつけたいのんのんさんは、最終手段に取っておいた唐揚げを、いなくなった掃き出し窓の近くに置き、他の猫が部屋に入らないように締め出した。その日は、窓を開けたまま寝たもののよく眠れず、リビングと寝室を何度も往復したと言う。
朝5時くらいだった。リビングでハチが鳴く声が聞こえて、のんのんさんは目を覚ます。
「慌てて見に行くと、ハチがリビングの真ん中で私を呼んで鳴いていました。いつも一緒に寝ている時間だったので、誰もいなくて寂しくなったのでしょうね。『俺帰ってきたよー!』と全力で叫んでいたんです」
近くには、2口だけかじられた唐揚げが転がっていた。「食べてはいなかったみたいですが、引き寄せ効果はバツグンでしたね」
外がトラウマになったハチ
「帰宅した安心感からか、トイレにうんちをして、カーテンにマーキングのおしっこをかけていました。帰ってくるって信じてはいたけど、姿を見て本当にうれしかったですね」と、のんのんさんは当時のことを振り返る。
ハチは1日きりの冒険の中で、よほど怖い思いをしたようだった。
「それまでは平気だったのに、あれ以来、家の外に出た瞬間ハアハア息を切らしてパニックになるんです。だから健康診断だとか、外に連れて行く時は少しでもハチが落ち着くようにお姉ちゃんたちと一緒に連れて行くようにしています」
- 【今回の猫探しの教訓】
- ・目の前で逃げた時は、パニックならず呼び戻すべき
・一瞬の油断が命取り。窓を開けない生活スタイルがベスト
・ポスターは意外と保管してもらえる
のんのんさんは、ハチの脱走以来、洗濯物を外に干すことをやめたと言う。
「いつもは窓を閉めて洗濯物を干していたのですが、あの日はバスタオル2枚を干すだけですぐに終わるし、近くに猫たちがいないので大丈夫、という一瞬の気のゆるみが脱走を引き起こしてしまったんです。どんなに気をつけていても、一瞬の気の緩みで取り返しのつかないことになるとわかったので、乾燥機を導入して、窓を開けない暮らしにチェンジしました。もう二度とあんな思いはしたくないですね」
ハチを探す際、やってよかったと思うのは、やはり唐揚げと猫砂だ。
「猫にとって匂いって強力な目印になるんですね。ハチが遠くに行く前に、唐揚げのことを知れてよかったです」
迷子ポスターの効果も意外なほど感じたと言う。
「ハチが帰ってきて、ポスターを手配りしたところには報告に行ったのですが、ポスティングさせていただいた家には一軒一軒報告に回れていませんでした。すると、数カ月経ってからもポツポツと『似た猫がいる』という連絡をいただいて。意外とみなさん、ポスターを家に置いて気にしてくれるんだ、と感動しました」
現在4歳になるハチは、のんのん家イチの甘えん坊。のんのんさんがお姉ちゃん猫のみみ(5歳)やナナ(6歳)をかわいがっていると、間に割り込んでいくと言う。
「これからも家族に甘えながらおだやかに暮らしてもらうために、もう二度とこんなことが起きないように気をつけないとですね」
【前の回】家庭内野良猫が窓から脱走 捕まえられず捕獲器をしかけたら思わぬ “おまけ”が…
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