「かみかみ王子」と呼ばれていた猫 おおらかな家に迎えられ、のびのび成長中

こちらを見つめる猫
愛らしい顔、ソックス柄の足元のハルノ君(真弓さん提供)

  保護先で“かみかみ王子”と呼ばれていた子猫が、かみ癖を気にしない家族に迎えいれられました。この家では、数年前に迎えた先住猫にもかんだり蹴ったりの癖があったようで……。新入り猫の成長をおおらかに見守る家族に、リモートで生活の様子を伺いました。

(末尾に写真特集があります)

「5月15日にハルノが1歳になります。うれしいですね、家に来て最初の誕生日だから」

 北海道に住む真弓さんが、にこやかに話をする。するとその後ろを猫がすーっと歩いていった。濃い茶色の顔と、ソックスを履いたような足元が印象的だ。 記事

「この子がハルノですが、家に来た時は750gだったので、倍ぐらいの大きさになりました。順調にすくすく育っています」

 夫と、社会人の二人の息子と、先住の黒猫アリソン(メス、推定3歳11カ月)と暮らす家にハルノ君を迎えたのは、昨年の8月20日。東京オリンピックが終わり、暑さも少し和らいできた頃だった。

赤ちゃん猫
生まれて間もない頃(ヘルバ園提供)

保護猫サイトから手繰り寄せた縁

 ハルノ君との出会いは、北海道で保護猫活動をする個人ボランティアの会「ニャン友ねっとわーく・北海道」のサイトを見たことがきっかけだった。

「そろそろ2匹目が欲しいと思っていたのですが、保護猫のことが気になっていろいろ調べていました。『ニャン友』のサイトに載っていた凜ちゃんという子が可愛くて見ているうちに、(保護主の)ヘルバ園のブログにたどりつきました。凜ちゃんは病気のため譲渡は停止になったのですが、その後、凜ちゃんと少し似た保護猫がいることを知ったんです」

 それがハルノ君だった。保護時の仮の名はアル君。アル君は、ヘルバ園で保護された黒白ハチ割れの妊婦猫から生まれた子だ。一緒に生まれた3匹のきょうだいは、黒白や黒猫だったが、アル君だけ、白の毛が多い子だった。

「みんなふわっと可愛くて……ブログでずっと見守っていました。しばらくして、離乳したアル君が譲渡会に参加すると知り、次男と一緒に会いに行くことにしました」

 北海道にしては暑い7月。家から1時間半かけて譲渡会場にいくと、アル君がいた。

「生後2カ月でしたが、実際の姿を一目見て『可愛い!』と胸が高鳴りました。保護主のヘルバ園さんに『この子はかみかみしますよ』と説明を受けたあと、次男が抱っこしたら、すぐにTシャツの端をがしがしかんでいました(笑)。それがまた可愛くって」

 申し込みをすると、8月に正式譲渡が決まった。

おもちゃをかむ猫
子猫時代、お気に入りの編みぐるみと(真弓さん提供)

物おじしないかみかみ王子

「名前はアルのままでもよかったのですが、先住アリソンと“ア”が同じで間違えそうなので、次男が好きなアニメ『ジョジョの奇妙な冒険』5部の主人公の日本名・汐華初流乃(はるの)からつけました。さわやかな響きで気にいってます」

 ハルノ君は明るく物おじしない性質で、家に来た日から、堂々としていた。

「“ここが新しいおうちか”という感じで、次男と一緒に室内を歩いて探索していました。アリソンとはケージに入れて会わせたのですが、アリソンが『シャー(誰よ)』と威嚇するのに対し、ハルノはけろり。シャーどころか、近づこうとして。ヘルバ園で預かってもらっていた時、先輩猫さんに可愛がってもらったので、猫好きなのかもしれませんね」

 ハルノ君は声が少し出しづらいのか、来た時はほとんど鳴かなかった。今も小さめのハスキーボイスだという。

 肝心のかみかみは……家にきてからも、絶賛継続中だ。

「人の手や足をかむ癖があって、やさしい甘かみだったり、やや強めにガブッとしたり。どうやら鳴く代わりの表現というか、何かを訴える時にかむみたいです」

くつろぐ猫
かむのは愛情表現?(真弓さん提供)

 真弓さんがかむことに寛容なのにはわけがある。先住のアリソンにも人へのかみ癖があったからだ。

「アリソンも幼い頃にガブガブしていたんです。でも成長とともに、治っていきました。もし猫を飼うのが初めてなら、戸惑いもあったかもしれないけど、経験があったので、さほど問題ではなかったんですよね」

 真弓さんの家族は、『アリソンのようにそのうち(かみ癖が)よくなればいいから』と期待し、ハルノ君をじっくり見守ることにしたのだ。

黒猫
キックが得意なアリソン(真弓さん提供)

先住猫との出会いと変化

 真弓さん宅の“初代かみ猫”のアリソンは、2018年6月に、長男が保護したという。

「たまたま長男が仕事で外回り中、ひと気のない草むらで見つけたんです。まだ生後1カ月ほどの小さな猫なのにひとりぼっちでいて、でも人に懐いていて、“にゃあにゃあ”長男に話しかけてきたようで……親猫とはぐれたのか、誰かに捨てられたのかわからないけれど、心細かったのでしょうね」

 長男は仕事を終えて帰宅し、車で草むらに行き、アリソンを保護して連れ帰った。もともと猫好きで実家でも飼っていた真弓さんは大歓迎。夫と次男ははじめ心配したが、すぐにアリソンのとりこになったそう。名前は、真弓さんが好きなアメリカの陸上選手、アリソン・フェリックスから命名した。

「アリソンはかむだけでなく、ドロップキックのようにジャンプして壁や人の背中をキックして走り去るんです。痛くてしびれるけど(笑)、かまれても蹴られても可愛いお嬢様……ところがなぜか成長とともに、家族それぞれに対する態度が変わってきたんですよね」

 アリソンは自分を救ってくれたことがわかるのか、長男にべったり。幼い頃には次男にも甘えて一緒に寝ていたが、成長してくると、次男に「プンッ」とするようになった。

「『もう相手にできないわ!』というように、いつしか次男を下に見るようになって。私は女の子を育てたことはないけど、猫も年頃になると変わるかしら。夫にはスリスリするのに私にはつれない。ドロップキックも次男と私にだけしていました(笑)」

「アリソンが最近遊んでくれなくなって、さみしい~」と次男が口にしはじめた時、真弓さんがちょうどハルノ君を保護サイトで見つけた……というわけだ。

心から願うことは……

 ハルノ君は、家に来てからの1年、変わることなく家族みんなに愛想がよいという。

「朝は長男を起こしにいき、昼は私のひざに乗ってきて。夜はパパに『ナデナデして』と要求し、次男と遊びます。変わっていったのは毛の色で、初めは白一色のようだったけれど、それがグレーと白の2色になり、だんだんとベージュと白に。お顔は茶色から濃い茶になりました」

2匹の猫
アリソン姉ちゃん遊ぼうよ(真弓さん提供)

 アリソンとの距離も、前よりは近づいてきた。

「ハルノはアリソンのことが好きでギュッとしたい。でも抱きつくと、プライドの高いアリソンに『ヤメテ』と叱られる。そうするとハルノはちょっとシューン(笑)。ハルノがもう少し落ち着いたら、2匹でぴったりくっつく姿も見られるかしら」

 真弓さんは、2匹が寄り添うようになることを祈っているが、何よりも心に願うことがある。それは、ずっと変わらず健康でいてほしい、ということだ。

「じつは、ハルノと一緒に生まれた3匹のきょうだいは、体が弱く、生まれて1週間もしないうちに亡くなってしまったんです。ハルノだけが生き残ったんですよね……。だから、きょうだいの分まで強く生きて欲しいと願っているんです。そして、きょうだいたちにはまた生まれ変わって幸せになってほしい」

 真弓さん宅に来るまで過ごしたヘルバ園で、しつけ係としてハルノ君と遊んでいたおにいちゃん猫も1匹、病気で旅立ったのだとか。

「命は尊い」と真弓さんは実感している。だからこそ、こう思っているのだ。

「少しくらいかみかみしてもいい。元気でいてくれれば!」と。

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藤村かおり
小説など創作活動を経て90年代からペットの取材を手がける。2011年~2017年「週刊朝日」記者。2017年から「sippo」ライター。猫歴約30年。今は18歳の黒猫イヌオと、4歳のキジ猫はっぴー(ふまたん)と暮らす。@megmilk8686

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この連載について
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