もうすぐ20歳を迎える柴犬ハルくん 長寿の秘訣は工夫満載の介護ライフにあり!
「愛犬ハルとのお花見は去年で最後かなと腹をくくっていたけど、今年も一緒に桜を愛でることができました。老犬介護はもちろん大変だけど、うちのハルがとてもチャーミングで、いつも私たちを笑わせてくれるんです。悲観しすぎないこと、楽しむこと。気づけばそんなことをモットーにここまで暮らしてきた気がします」
そう語るのは、今年の7月に20歳を迎えるご長寿犬、ハルくんにたっぷりの愛情を注いでいる上村さんご夫妻。食生活から投薬方法、オムツの選び方、さらに病院との関わり方まで、工夫とアイデアに満ちたあふれた介護ライフをご紹介します。
ごはんは飽きないようにビュッフェ仕立てで
昨年12月に大きな痙攣(けいれん)を起こして以来、流動食になってしまったハルくん。ただ食欲は旺盛で、発作のあとでも眼振の最中でも、普通に食べてくれるのだそう。そこには、上村さん夫妻による、食事を飽きさせないためのひと工夫がありました。
「流動食とはいえ、全ての食材を混ぜてしまうのではなく、数種類の流動食を順番に食べさせて、飽きさせない工夫をしています。特に好きなのはヨーグルトと鳴門金時。ヨーグルトは市販の無糖のもの。鳴門金時はオーブンで焼き芋にして、高カロリーパウダーを混ぜたあと、シニア用ミルクで溶かしています。
また、キャベツと鶏胸肉のミンチをクタクタに煮て、ハンドブレンダーですり潰したものも定番メニューです。これは、昨年の痙攣のあとに下痢が止まらず、そのことをSNS上で相談したところ、教えてもらったメニューです。整腸剤も飲ませていましたが、このごはんがより効いているように感じ、1週間分つくり置いて冷凍。これらのメニューは整腸作用にもつながっているように感じています」
ほかにも、意外にツルッと食べてくれる納豆、力がつきそうなラム肉と馬肉の缶詰などに加えて、水分補給にもひと役買っているミルクもゴクゴク。
「何より喜ぶのはケーキですね。19歳の誕生日に犬用ケーキをオーダーしてみたら、もうドリルのように食べ進んで(笑)。今はもう、そのままではスポンジケーキは食べられませんが、ミルクで液状にしてあげるとおいしそうに食べてくれます。ケーキはほかにもムースタイプもあるので、ひと月ごとに頼んでお祝いしているんです。食いしん坊で本当に良かったです」
薬は顆粒にしてから「おくすりちょーだい」とともに
投薬も、上村さん夫妻らしいひと手間を加えていました。今やかむことが難しくなってしまったハルくんのために、本格的なスパイスミルを購入。重さのあるステンレス素材ゆえ、ゴリゴリと擦り続けることで、かなり細かな粉末状になるのだそう。
「ピルクラッシャーなども試しましたが、まだ粒が粗くて飲みにくそうにしていたので、サラサラになるものを探して、これにたどり着いたのです。さらに重宝しているのが『おくすりちょーだい』というゼリー状の商品。これに混ぜ込むことで、以前よりかなり楽に飲んでくれるようになりました」
オムツは赤ちゃん用にしっぽ穴を開けて
介護生活に欠かせないオムツは、さまざまなものを試した結果、今は赤ちゃん用の紙オムツにたどり着いたのだそう。お尻の部分にT字の切り込みを入れて、尻尾が出せるように工夫しています。
「犬用の紙オムツやマナーベルトも試しましたが、サイズが合わずにおしっこが漏れてしまったり、うんちがうまくできなかったり。結局、ハルには赤ちゃん用のパンパースがフィットすることがわかりました。ビッグサイズから始めて、今はLサイズに。リーズナブルなところも助かっています」
ベビーグッズは犬の介護に使えるものも多く、食べこぼしても受け止めてくれる袋状のスタイも大活躍。流動食で口の周りが汚れてしまうときも、ウエットティッシュだとうまく拭えないと感じ、赤ちゃん用のガーゼで拭き上げているのだそう。
健康管理は手書きシートで一目瞭然
さらに娘さんが作成したオリジナルの健康管理シートに「食べた量」「排泄(はいせつ)した量」「薬の回数」などすべてを記入。これがあれば「ちゅーるは何本食べた?」「おしっこが出ていないのでは?」などが一目瞭然。気になったことはすべて書き留めておき、次の診察時に確認するようにしています。
「さらに、食べた量と排泄の量を比較できるグラフにし、合わせて体重も折れ線グラフにします。すると痙攣を起こした日は食べられずに失禁が増えるので体重が減りますが、次の日食べ過ぎかなと思っても、通常体重に戻っただけだと安心できます。何より痙攣が起きた日を記しておくことでサイクルがわかり、『そろそろ痙攣が来るかも』と私たちが心構えできるのが大きい。数値を可視化することの大切さを実感しています。作ってくれた娘に感謝です!」
介護はシフト制にして負担を減らす
今は安定剤を飲んでも夜はほとんど寝ずに、ずっとおしゃべりをしているハルくん。介護で夫婦ふたりが共倒れすることのないよう、シフト制にしているのだそう。17〜21時の夕食や入浴時間はふたりで介護したのち、21〜25時はママさん担当(パパさん就寝)、25〜6時はパパさん介護(ママさん就寝)、6〜17時はママさん担当に(パパさんはリモートワーク)。
「リモートワークが進んだことで、一緒にいられる時間が長くなり、介護しやすい環境になったと思います。それでも頑張り過ぎてしまうことがあるので、私たちのごはんは冷凍ものを活躍させたりも。手を抜くところは思い切り抜く。それも大事なことだと思うのです」
シニア犬こそ、思い切って病院を変えてみても
最後に、上村さんご夫妻が教えてくれたのが「もし今の病院の診療に疑問を感じたら、セカンドオピニオンとして別の病院を受診してもよいのでは」ということでした。
「昨年12月の大きな痙攣のときに、思い切ってかかりつけ医を変えてみたんです。高齢かつ未受診にもかかわらず、電話をしてみるとすぐ連れてくるように言われ、即集中治療に入りました。先生とスタッフ総出で数日間見てくれたのですが、『このあとはご家族との時間を大切にしてほしい』と言われ、ここまで丁寧に診てくださったことに感謝して、覚悟を決めて帰宅したんです。するとその後、幸いにもハルは復活。今はその新しい病院に通い、先生、スタッフさんに励まされながら暮らしています」
今、生きてくれているだけで奇跡だから、このあとどうなっても受け入れる。そう思えるように、後悔のないように、シニア犬こそ医療に積極的になってもよいのでは、という貴重なアドバイスをいただきました。
「実は先日、私たちのお墓を建てたのですが、横にハル用もしつらえたのです。そうしたら永遠にハルと一緒にいられると思えて、なんだか嬉しくなりました。加齢に伴い走れなくなっても、歩けなくなっても、座れなくなっても、固形物を食べられなくなっても悲観せずに、その状況を受け入れ、対応策を考える。これからもハルの笑顔を見るために、工夫を凝らして暮らしていきたいと思っています」
(編集部より:ハルくんは取材後の4月16日に旅立ちました。どうぞ安らかに。ご冥福をお祈りいたします)
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