うちの老犬が寝てくれない! 認知症、脳腫瘍?睡眠からわかる健康とその対処法
犬と睡眠の関係性について、深く考えたことはあるでしょうか。幼少犬、成犬のときは問題が少なくても、老犬になると睡眠サイクルに変化が現れ始めます。高齢になるほど睡眠時間が長くなるのが通常ですが、問題は「老犬が寝ない」という場合。
「『うちの老犬が寝なくて困っている』という相談は、とても多く寄せられています」。そう語るのは、苅谷動物病院グループの白井活光先生。犬にとっての睡眠とは? 老犬になると何が起こりうる? そして飼い主ができることとは? 犬と睡眠についての理解を深めていきましょう。
老犬の行動の変化に注目を
「犬の睡眠を成長別に分けてみると、幼少犬はとにかくよく眠ります。起きている時間に活発に動く分、深く長く眠るのです。それが成犬になると12~15時間ほどに減り、老犬になると再び増える傾向にあります。ただ老犬はずっと寝ているのではなく、15分寝て5分ほど覚醒するというリズムを繰り返しているのだそう。どちらにしろ、加齢とともに睡眠は長くなるのが正常なのです」
それなのに「老犬が寝てくれない!」という状況に陥っている場合、多くの場合は認知症、さらには脳腫瘍など、何らかの異常が発生している可能性があるのだそう。
「眠らずにただ起きているだけでなく、何らかの行動の変化があるはずです。落ち着きがなくなったり、妙に吠(ほ)えたり、ぐるぐる徘徊(はいかい)したり。逆に無気力になることも。眠らないことに加えて、どんな行動変化があるのか、そこに注目してあげてください」
飼い主ができることは、愛犬の様子をよく観察すること。医療機関を受診すること。そしてそのあるがままを受け入れること。行動変化の多くは「トイレの場所がわからない」「どうしていいのかわからない」などの不安の現れ。まずはさまざまな不安を取り除いてあげることから始めましょう。
楽しみごとを増やして、安心感を与える
「たとえば生活の楽しみであるごはんの回数を増やしてあげるというのはいかがでしょう。こうすればごはんをもらえるという目的を意識させることは脳への刺激になり、生きがいや満足の機会を増やすことにつながります。もちろん回数を増やした場合は、全体量を調整してください。もし認知症だった場合、その症状を進行させないという意味で、抗酸化作用のあるサプリを混ぜるのもひとつの手です」
また、声かけやスキンシップをよりていねいにして、安心感を与えるのも重要だといいます。
「どうすれば喜ぶのかは、飼い主さんがいちばんよくわかっていると思うので、何げないことでいいのです。一緒にいる時間を増やすという意味では、寝る場所を近くにしてあげるのもいいですね。『こうしたい』というポジティブの吠えと、不安からくるネガティブな吠えは明らかに違うはず。不安による吠えが減っていけば、効果が出ていると考えていいでしょう」
生活上のストレスをできるだけ取り除く
「お散歩は必ず昼間に」というのも鉄則です。老齢でもう歩くことができないとしても、風を感じる、植物やほかの動物の匂いを嗅ぐなど、抱っこして外に出るだけでも刺激になるのだそう。
「犬も人間と同じで、朝起きて朝日を浴びることで、メラトニンとセロトニンの分泌のバランスが調整されます。夜の睡眠をスムーズに導くべく、朝日を浴びること。そしてとにかく日中は脳を起こしておくことが大切なのです」
また認知症など脳の異常により、排泄(はいせつ)がコントロールできなくなってしまうこともあるのだとか。
「今まではトイレの場所を把握していたのが、まったく関係ない場所で排泄してしまうので困っているという話もよく聞きます。その場合はトイレの場所を増やしてあげてもいいでしょう。もちろんおむつも選択肢のひとつです。ただすぐに脱げてしまったり、おむつの中にうんちをしたままでお尻が汚れてしまうなどのマイナス面も。どうすればストレスを取り除いてあげられるか、調整してみてください」
老犬をよりよい睡眠に導くためには、愛犬への愛情と具体的アプローチが必要です。
さらに次回、多くの人が深刻な問題を抱えている「老犬が徘徊してしまう!」という悩みに応えていきます。
【次の回】ずっと徘徊する老犬に飼い主は寝られず これって大丈夫?愛犬にできることは?
- 監修:白井活光
- 苅谷動物病院グループ総院長。獣医学博士。1998年日本大学大学院卒業。同グループ「三ツ目通り病院」や「葛西橋通り病院」の院長を歴任。2015年から現職。日本臨床獣医学フォーラム副会長。専門分野は総合臨床。
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