猫エイズの愛猫を22歳で見送った夫婦 白血病陽性のワルな猫を迎えにぎやかに年越し

 夫の定年後、夫婦は古都鎌倉に、4匹の猫と共に越してきた。猫エイズだった「ムッシュ」が22歳で旅立った後、残る3匹も次々見送った。今年、後見人を立てて鎌倉の保護猫カフェ「鎌倉ねこの間」仲介で、預かり先から迎えたのは、白血病キャリアの「シャイン」くん。やんちゃこの上ない子猫に振り回されて、にぎやかに年が明ける。

(末尾に写真特集があります)

子猫がやってきた!

 60代に入った智美さんは、商社マンだった夫の晋さんとともに、鎌倉にいくつかある「谷戸(やと)」のひとつである閑静な地区に暮らす。外出好きで行動的な妻と、家の中が好きで温厚な夫と。ふたりの間にちょこんと座り、好奇心に満ちたピカピカの目で飽かずいたずらのタネを探しているのは、生後半年のサバ白猫「シャイン」くんだ。

抱っこされる子猫
じっとしているのは、ものの1分。

 シャインくんは、いたずら盛り。とりわけやんちゃな性格だ。物陰に潜んで飛び出してきたり、食卓に飛び乗ったり、智美さんの腕や手をおもちゃにしてかんでみたり。

「あっ、シャーくん、ダメでしょ!」と智美さんに叱られても叱られても、悪びれることなく、いや、かえってハイになっていたずらを繰り返す。

 そんなシャインくんに、晋さんは目を細め、「ハッハッハー」と愉快そうに笑うばかり。

「手をかまれ、『痛いよ~』と泣きまねすると、調子に乗って倍返し。コラって叱ると3倍返し。どっちにしてもやられっぱなしなんです。たまたま友人に誘われて出かけた保護猫カフェの譲渡先募集写真に一目ぼれ。しおらしい風情にすっかりだまされました(笑)」と、智美さん。

子猫
譲渡募集のインスタ写真。当時の名は太陽くん(「鎌倉ねこの間提供」

 よくよく見れば、かすかにきかん坊の片鱗(へんりん)が見て取れるのだが、もしかしたら、智美さんは、写真に添えられた説明文に「しおらしい」というイメージを抱いたのかもしれない。「太陽」という保護猫名の写真の説明文につけられた見出しは、こうだった。

「猫白血病陽性というこの子の運命をまるごと受け入れてくれる譲渡先をお待ちしています」

 説明によると、今年9月、小田原の地域猫餌やりボランティアの方が、深夜、聞きなれない猫の鳴き声に外に出てみると、見たことがない子猫がポツンと座っていたという。辺りに母猫の姿もなく、降雨の予報だったので、保護。翌日、動物病院に連れていくと、「猫白血病陽性」の診断が出たのだった。

「この病気は、猫同士のグルーミングや食器共有で感染する可能性があるため、先住猫がいない、あるいは、同じ病の子を飼っている家庭を希望」と書いてあった。

4匹の猫の見送り後、身内も次々見送って

 智美さん夫婦は、夫の定年に伴って、都内から鎌倉に越してくるとき、4匹の飼い猫もいっしょだった。すべて保護猫である。

 初めての猫は、高速のサービスエリアにいたサビ猫「寄居マーゴ」ちゃん。智美さんがトイレから出てくると、晋さんが子猫を抱いていて、離さなかったのだ。

 2匹目は、避暑地で網戸越しにのぞいていた白黒のスールちゃん。今度来た時にまだいたら連れて帰ろうと決め、2週間後に行くといたので連れ帰った。

 3匹目は、地域にいた猫で、猫エイズ発症のため口内炎が悪化して食べられない状態になっていたムッシュ。ふびんで引き取った。

 4匹目は、転勤で置き去りにされていて、当時住んでいたマンションの4階までついてきたチャトラの子、フィンくん。

「猫エイズキャリアのムッシュは、迎えたときにはすでに15~16歳で、22歳まで生きました。最後は枯れるようでした」

白黒猫
猫エイズだったが、22歳まで穏やかに生きたムッシュ(智美さん提供)

 ムッシュが10年前に亡くなった後、3匹も次々と旅立っていった。

 晋さんの母を今年5月に見送ったあと、智美さんの姪(めい)のひとりが40代で旅立った。

「そんなときだったから、新しい命を迎えたいという気持ちになったのだと思います。白血病キャリアの子は、寿命が短いと聞きました。それなら、自分たちはストレスなく暮らさせ、看取(みと)ることができる環境にある。「もしものときは任せて」と言ってくれた、姪の息子に後見人になってもらいました」

生命力にあふれる子だった

 そして、太陽くんは、シャインくんになった。

 やってくるなり、食欲も旺盛に、やんちゃを始める。最初に獣医さんに連れて行ったときは痩せ気味だったので、なるべくカロリーの高いものをちょくちょく食べさせるよう指示された。ひと月後、体重は、2キロ足らずから、2.5キロに。今度は「お母さん、太らせ過ぎないように」と注意されたという。

 たくましくなったシャインくん、朝から晩までひっきりなしのおしゃべりに、ひっきりなしのいたずら。抱っこすれば、服のボタンをチョイチョイ。なでてやれば、手をカミカミ。

隙間からこちらを見る猫
いろんなところに潜むいたずらっ子

 迎えたときは、「来年も生きようね」という一年単位のスパンで見守りたいと思っていた。だが、生命力の塊みたいなシャインくんを毎日見ていたら、絶対に長生きできそうな気がしてならない。これまでに2度検査して、2度とも陽性だったけれど、陰転を信じ、また来年に検査をするつもりだ。もちろん、発症したら、そのときは存分に看護を尽くす覚悟は最初からできている。

「ワルでもワンパクでも、生きていればこそ。まだまだ生きたかった姪が空から見守ってくれるでしょう。元気で生きてさえくれれば、もう……。あっ、イタっ、このワル!」

「ハッハッハッハー」

抱っこされる猫
隙あり!ママの手をカミカミ

 シャインは、元ノラだけど、猫白血病のキャリアだけど、愛されて今を命いっぱいに生きている。

 にぎやかに年は暮れて、新しい年がやってくる。

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佐竹 茉莉子
人物ドキュメントを得意とするフリーランスのライター。幼児期から猫はいつもそばに。2007年より、町々で出会った猫を、寄り添う人々や町の情景と共に自己流で撮り始める。著書に「里山の子、さっちゃん」「猫だって……。」など。Webサイト「フェリシモ猫部」での「道ばた猫日記」は11年目。

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この連載について
猫のいる風景
猫の物語を描き続ける佐竹茉莉子さんの書き下ろし連載です。各地で出会った猫と、寄り添って生きる人々の情景をつづります。
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