犬たちが熱演! 年末年始に見たいカンヌ映画祭パルム・ドッグ賞受賞作のおすすめ3選

 待ちに待ったお正月休みですが、お出かけをせずにステイホームでしっぽりと映画を楽しみたいという方も多いのでは。今回セレクトしたのは、カンヌ国際映画祭で優秀な演技を披露した犬たちに贈られる「パルム・ドッグ賞」の受賞作です。

 同賞がスタートしたのは2001年で、見事な存在感を発揮した犬たちにスポットが当てられてきました。ちなみに受賞した犬には、“PALM DOG”と記された革の首輪が贈られます。きっと受賞作を観れば、それぞれに納得の演技力もしくは存在感にうなりますが、その中でもイチオシの3作をレコメンドします。

マイペースなブルドッグがユーモアたっぷり

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パターソン

 1本目にご紹介するのは、名匠ジム・ジャームッシュ監督作『パターソン』(16)です。『スター・ウォーズ』シリーズのアダム・ドライバーが演じる主人公パターソンは、詩を書くことが好きなバスの運転手。本作では彼の何気ない日常が綴られていきます。

 本作で2016年のパルム・ドッグ賞に輝いたのが、パターソン夫妻が飼っている愛犬マービンで、貫禄のある頼もしいブルドッグです。マービンを散歩させるパターソンですが、なかなか言うことを聞いてもらえず、てこずる姿も笑いを誘います。

 まるでパターソンと会話を交わしているかのようなタイミングで吠えるしぐさや、イジけて悪さをした時の申し訳なさそうな表情など、マービンは全編でとてもいい味を出しています(笑)。

 パターソンたちがこなす日常のルーチンから、見失いがちな小さな幸せを改めて感じとれる本作。パターソンが心から愛する妻との不器用なやりとりにも、彼の人柄がにじみ出ていて思わずほっこり。大きな事件は起こらないけど、静かな街の風景や人々との交流が丁寧に描かれていて、観ていると心が洗われそう。

 また、マービンが人気を博し、いろいろなバージョンのTシャツも制作されたようです。ぜひ気になった方は、ポチってみてください!

凍死寸前!命拾いしたチワワに注目

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ドッグマン

 続いてご紹介するのは、『ゴモラ』(08)などで知られるイタリアの鬼才マッテオ・ガローネ監督による衝撃作『ドッグマン』(18)です。第71回カンヌ国際映画祭でマルチェッロ・フォンテが男優賞を獲得したほか、第91回アカデミー賞でも外国語映画賞のイタリア代表作として出品されました。

 主人公のマルチェロがドッグサロンを経営するトリマーということで、たくさんの犬が登場しますが、受賞したのは俳優犬のチワワでした。

 まな娘と平穏な生活を送っていたマルチェロですが、暴力的な友人シモーネによっての片棒をかつがされたことで、人生が一気に暗転します。様々な信用を失い、娘とも自由に会えなくなったマルチェロは、仕方なくある行動に出ますが……!

 チワワの登場シーンは、愛犬家でなくても息を飲みます。シモーネが強盗に入った家で、なんと飼い犬のチワワを冷凍庫に入れてしまいます。そのことを耳にし、慌てて救助に駆けつけたマルチェロ。ぐったりしたチワワの体を拭きながら、体を温めていく姿が涙ぐましいです。その一連の動きを1カットで演じきったチワワに称賛の声が挙がりました。

 本作は重厚なクライムサスペンスで、その展開はなんとも残酷で容赦がなく、胸がざわつきます。もちろんそれは、理不尽な社会の縮図を切り取っているからであり、リアリティーあふれるドラマが、高く評価されました。とりあえず犬たちは殺されませんし、それぞれが熱演しているので、そこをぜひ観ていただきたいです。

スピンオフも生まれた人気犬が奮闘

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カールじいさんの空飛ぶ家

 最後にご紹介するのは、2009年のパルム・ドッグ賞に選出されたディズニー・ピクサー映画『カールじいさんの空飛ぶ家』(09)です。ちなみに本作は、アニメーション映画として初めてカンヌ国際映画祭のオープニング作品に選ばれた秀作です。

 最愛の妻エリーを失ったカールじいさんは、妻との思い出がたくさん詰まった家を手放すことができません。ある日立ち退かざるをえなくなってしまったカールは、生前に妻と一緒に行く約束をしていたパラダイスフォールに向けて、10297個もの風船を結びつけた空飛ぶ家で旅に出ます。

 パルム・ドッグ賞に選ばれたダグは、首輪に犬語翻訳機をつけた犬です。彼はカールやエリーが子ども時代に憧れていたチャールズ・F・マンツ率いる犬軍団の1匹でしたが、落ちこぼれとなり単独行動をしていました。そんな中で出会ったカールと、旅に同行している少年ラッセルと心を通わせていきます。

 カールと妻の出会いから、夫婦として過ごした過去の思い出も織り込みつつ、孤独な老人と少年の友情を味わい深く描いた本作は世界的に愛され、日本でも興行収入50億円を挙げる大ヒット作となりました。

 また、ダグを主人公にしたスピンオフのTVシリーズ『ダグの日常』や短編『ダグの特別な日』がディズニープラスでも配信中なので、こちらも本編と共にお楽しみください。

山崎伸子
ライター、ときどき編集者、カメラマン。映画やドラマのインタビューやコラムをメインに執筆。趣味は旅行、酒場&酒蔵巡り、パンダグッズ集め。好きな映画と座右の銘は『ライフ・イズ・ビューティフル』。実家に帰るとやんちゃなわんこが二足歩行でお出迎え。

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この連載について
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