猫にイタズラされる日々… それでもクリスマスツリーを飾る理由
もうすぐ待ちに待ったクリスマス。愛猫家にとって悩ましいことのひとつが、猫とクリスマスツリー問題だ。オーナメントがゆらゆら揺れ、登りがいのあるツリーは、猫にとってかっこうの遊び道具。「猫にイタズラされてしまうから」と、ツリーを飾ることを諦めた人も多い。「飾る派」「飾らない派」で大きく分かれるだろう。
東京都に夫婦で暮らすアヤさんは、「飾る派」のひとり。ツリー歴・猫飼い歴ともに約20年のベテランだ。猫との暮らしのなかで、クリスマスツリーをどのように飾り、楽しんでいるのか、お話を伺った。
3匹の猫を見送った2台のツリー
12月2週めの週末。アヤさん宅にお邪魔すると、冷蔵庫の上からジーニー(ジジ・もうすぐ2歳)が挨拶をしてくれた。通されたリビングのソファ下では、お姉さん猫のクッキー(くっちゃん・8歳)が立てこもり中。
目の前には、数日前に出したばかりだという、高さ120センチのクリスマスツリーが。装飾が少々シンプルなように感じた。
「ツリーは私が一人暮らしを始めた20年前から毎年飾っていて、これは3年前に買い換えた2台めです。猫のことを考えると生木は飾れないので、人工ですね。猫が倒さないよう、台座がどっしりしていて、重さのあるタイプを選びました」
1台めのツリーを迎えたのと同時期に、初代猫との暮らしもスタート。その後、現在のパートナーと結婚し、3匹の猫を見送ってきた。ライフステージや家族(猫)が変わっても、12月にツリーが輝く風景は変わらなかった。
「ポインセチアは猫が誤って口にすると中毒症状を起こすと聞いたので飾れませんし、針葉樹やハーブも猫が好まない樹種もあると教わり、リースは玄関の外のみに。室内では唯一ツリーだけが、クリスマス気分を高めてくれるんです。でも実はこのツリー、本当はオーナメントがたくさんついていて、もっと華やかなんですよ……(苦笑)」
ツリーに危機が訪れた2020年冬
猫たちのイタズラは心配ないのだろうか。
「いままで暮らしてきた猫たちは、みんなおしなべておとなしく、ツリーに興味を示しこそすれ、イタズラをする子はいませんでした。先輩猫のジェリーが亡くなった2019年のクリスマスは、ひとりぼっちになったくっちゃんがとても寂しそうで」
ところが2020年、5匹目の家族としてジジがジョインしたことで、静かなクリスマスが一変。
「ジジはとにかくやんちゃ坊主。ツリーを飾るや、松ぼっくりを転がして遊んだり、果敢によじ登ったり。一度、ツリーがゆさゆさ揺れているから『何だ!?』と目を凝らしたら、ツリーに潜り込んだジジが中で暴れていたことも……(笑)」
ジジがツリーを登っては降ろし、ツリーが倒れては起こし(倒れにくいタイプを選んだにもかかわらず、2度転倒した)、ぐしゃぐしゃに乱れた枝や葉を手直しすることが日課となった。
「ツリーをケージで囲う」「忌避性のあるスプレーをツリーに振りかける」など、一般的な対策はひと通り調べたが、「ケージは簡単に飛び越えてしまうし、かえって危険と判断。スプレーも、猫にストレスがかかることはしたくなかった」という。
そんなわけでアヤさんは、ジジとツリーをめぐる攻防を根気強く繰り返していた。
ケガや誤飲は絶対避けたい
ある日、とうとうジジがガラス製のオーナメントを落下させてしまい、床の上で粉々に。
「オーナメントが割れてしまったことに、多少のショックもありました。でも、それはあくまで人間側の都合。破損したオーナメントで猫たちがケガをしたり、誤飲したりしてしまうことだけは、絶対に回避しなくては」
すぐに、壊れやすいオーナメントや細かなパーツを全部取り外した。残したのは、柔らかなウール製の靴下や木製のリンゴ、松ぼっくりだけ。約20年間、華やかでにぎやかだったアヤさんのツリーは、まったく素朴な姿に変わり、電飾がチカチカ光るのみとなった。
イタズラをするかどうかは、個体差もある
電飾は感電を心配する飼い主も多いが――。
「うちの猫たちは、もともと家電のコードを噛んだりイタズラしたりすることがなかったので、電飾に関してはとくに心配ありませんでした。もし、ジジがコードの噛みグセがある子だったら、電飾も外していたかもしれません。
やっぱり個体差があるんでしょうね。無条件に『電飾はダメ、オーナメントはダメ』と決めつけてしまわず、普段のイタズラの傾向を見極めながら、ディスプレイを調整してけたらと」
それでも、毎年ツリーを飾る理由
「もちろん、猫の身の安全を守る一番の方法は、ツリーを飾らないこと」と前置きしつつ、アヤさんには毎年ツリーを飾り続ける理由があるという。
それは、アヤさんがかつて3匹目の家族として迎え、5歳の若さで急逝してしまったアンジー(あんちゃん)のため。
「5匹のなかで一番のツリー好き。ツリーのそばに座って、電飾をただじーっと眺めるのが大好きだったんです。だから、毎年あんちゃんにツリーを見せてあげたくて。もちろん、ほかの子たちへも。我が家にとってクリスマスツリーは、虹の橋を渡った先輩猫たちへの弔いでもあるんです」
例年は、アドベントシーズンに突入する前にツリーを飾り終えていたというアヤさん。今年、それが2週間近く遅れたのは、去年のジジのはしゃぎぶりを思い返してためらっていたから。
「でも、やっぱり今年もあんちゃんたちに見せてあげたくて、クローゼットから引っ張り出しました。そもそも、私自身クリスマスが大好きで、特別なイベントですから」
人間の子どもと同じ、を期待して
一年でいちばんワクワクするクリスマス。猫を理由に楽しみを我慢し、人間の気持ちが沈んでしまっては、きっとお互いに不健康。
「それに、ジジのイタズラも仔猫のうちだけかな、とも思っているんです」とアヤさん。
「去年とは明らかにイタズラの性質が変わってきているし、からだも大きくなっているから、今年は無理にツリーを登ろうとはしませんね。人間の子どもと一緒で、大きくなるにつれ落ち着くのかな。来年には安心して飾れるんじゃないか、と希望を持っています」
いま思い返せば、先輩猫たちも仔猫時代は多少イタズラをしていたかも、とアヤさんは笑う。
ジジの成長とともにイタズラの変化も楽しみながら、今後も毎年欠かさずツリーを飾りたいというアヤさん。シンプルなツリーにひとつ、またひとつとオーナメントが戻っていく様子を、先輩猫たちがそばで見守ってくれるだろう。
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