薬品をかけられ虐待?脇腹にやけどを負った猫「マイケル」 保護され治療を続ける日々

茶トラ猫
日々、皮膚の再生治療を受けているマイケル君。初めて病院に来た日に一度だけ「シャー!」と言ったきり、あとはずっと人懐こい穏やかな男の子なのだとか

 昨年春。後ろ両脚と広範囲の皮膚を失いながら、懸命に治療に取り組む真っ白な猫、ブラン君の記事を掲載しました。今も一進一退の治療は続いていますが、今ブラン君の隣には、新入り猫・マイケル君がいます。

(末尾に写真特集があります)

ティッシュを貼り付けた猫が?

 まん丸な頭に丸い瞳。愛敬のある茶トラ白のマイケル君は、推定5歳の男の子。個人でTNR活動をしていた男性の自宅(神奈川県川崎市)近くで、捕獲器に入りました。

 脇腹にはなぜかぺったりと白いティッシュペーパーが張り付いていました。どうやらけがをしている様子です。

 あまりに人慣れしているので近所の飼い猫ではないかと、男性は周辺に聞いて回りました。すると見かけたことがあるという人は何人かいたものの、いつからいるのかははっきりしませんでした。

 どの程度のケガなのかも、個人宅ではわかりません。男性は知人に相談し、ブラン君の入院する病院にたどり着いたのでした。

おそらくは薬品による大やけど

 マイケル君の患部を確認した獣医師によれば、ケガの原因はおそらく「熱傷」。耳にもぽつん、と液体が飛び散ったように1カ所やけどがあることから、「液体の劇薬によるものでは?とのことでした」(ブラン君の治療を支える任意団体「こうほく・人と生きもの・支えあう会」の藤巻さん)。

 野良猫の暮らしが厳しいとはいえ、普通に暮らしていて、脇腹に劇薬を浴びる可能性はかなり低いでしょう。おそらく虐待によるものだろうと推察されました。

ケージの中の茶トラ猫
捕獲器に入った時のマイケル君。多少緊張は見られますが、パニックになっている様子は見られません。保護主さんが「どこかで飼われていた子なのでは?」と思ったのもうなづけます

 皮膚はごっそりと失われており、部分的には3度もの熱傷に。はりついていたティッシュは患部を見ただれかが、包帯替わりにはりつけておいたのだろう、とのこと。

 一方、藤巻さんたちはブラン君のお世話のために、動物病院に通っていました。そんなある日、「こんな子が来たよ、と先生からマイケル君を『紹介』されまして(笑)」

 かたやエンジンに巻き込まれたブラン君。かたや劇薬をかけられたマイケル君。ともに5歳未満の若い猫たちで、広範囲に皮膚を失っているところも同じです。

「皮膚を再生させる治療は基本的に同じ。保護主さんも一生懸命お金をためては支払いに通ってらっしゃいますが、個人で背負うにはあまりに負担が大きい。そこで私たちが、ブラン君の治療と合わせて、少しお手伝いできたら、と思うようになったんです」

傷ついた保護動物の「幸せ」への道のりは

 以前、記事で取り上げたブラン君の治療も、まだ継続しています。一時期はかなり改善して、今年の夏には退院か?というところまできていたそうですが、梅雨時期に体調が急激に悪化。患部も再び広がってしまったといいます。

「実は4月にやってきたマイケル君も同じ時期に体調を崩し、良くなりかけた患部が広がってしまったんです」

 ブラン君はドレッシング剤とよばれる薬品を使って皮膚再生を促していましたが、動物病院の提案で、PRP療法(自分の血液の血小板を利用して自己治癒力をサポートする高度な治療法)に挑戦を開始していました。ふたたびその治療を受け、今は逆戻りしてしまった患部も、持ち直しつつあると言います。

 マイケル君も、ブラン君のドレッシング剤を少し分けてもらったりしながら、治療の効果が出始めています。

 一時期は落ちてしまった体力ももちなおし、少しずつではありますが、快方へと向かいつつあります。

 しかし、ブラン君のときと同様、ここで立ちはだかるのが医療費の問題です。

 現時点で、ブラン君には月々25~30万円、マイケル君にも15~20万円の治療費がかかっています。

 ブラン君の治療費は、昨年のクラウドファンディングで予想以上のお金が集まり、藤巻さんたちは支援者に詳細なお金の明細を報告しながら、治療を続けています。しかし、マイケル君の治療費は、保護主の男性の負担になっているのです。

「ブラン君もマイケル君も、もとはと言えば人間のせいでケガをした子たち。必死で生きようとする姿に、助けずにはおれない気持ちになります。けれど、その費用は誰が負担するのか。傷ついた動物を保護した人の責任になってしまうのか」

 悩んだ藤巻さんたちは、ふたたびクラウドファンディングに挑戦することに。今度はブラン君、マイケル君両方のためのプロジェクトです。

カラーをつけた白猫
自動車のエンジンに巻き込まれたと考えられるブラン君。今も病院で懸命な治療が続いています。夏には一度体調を崩したものの、ふたたび快方に。皮膚が再生したら、どこか安心して暮らせるおうちを探します

 不幸な猫がいる。見過ごせない。保護して動物病院へ連れて行く。そこまでは、動物愛と行動力のある人なら考え付きます。でも、予想以上の大けがで、多額の治療費がかかるとなったら、さてどうするか。なんとか完治したとしても、後遺症が残ったり、ブラン君のように両後ろ脚を失った子が譲渡先を見つけるのは、簡単なことではありません。

 幸いマイケル君は、皮膚さえ治れば健康そのもの。完治したら、動物病院で譲渡先を探すことになっています。

「こういう事例が知れ渡ることで、傷ついた動物を保護するのを、ためらう人も出てくるかもしれません。でも、一人で背負わずに誰かに助けを求めれば、何とかなるっていうことも知ってほしい。地元に保護活動をしている団体はないか。自治体の役所に聞けば、団体を紹介してくれる可能性もあります。保護団体に相談すれば、シェルターに空きがあれば預かってもらえるかもしれないし、野良犬・野良猫を見てくれる動物病院を紹介してくれることも。何の負担もなしに救えるほど、楽な話ではないけれど、少なくとも一人で背負うことはないはずなんです」(藤巻さん)

 人間社会の犠牲になった猫たちを救おうと奮闘しているのも、また人間。

 ボランティア、獣医師、そして猫自身が、生きる道を探って戦い続けています。

ブラン君とマイケル君のクラウドファンディングはこちらから
 ※傷ついた猫の写真があります(モザイクあり)
 ※こうほく・人と生きもの・支えあう会 のブログへのリンクや活動収支報告もこちらから見に行くことができます

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浅野裕見子
フリーライター・編集者。大手情報出版社から専門雑誌副編集長などを経て、フリーランスに。インタビュー記事やノンフィクションを得意とする。子供のころからの大の猫好き。現在は保護猫ばかり6匹とヒト科の夫と暮らしている。AERAや週刊朝日、NyAERAなどに執筆中。

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