食欲不振の犬には漢方薬が効く!? 食生活に薬膳ごはんを取り入れよう
酷暑が続く中で「最近、食欲が落ちているかも…」と感じたら、ワンちゃんの食生活を見直してみるのもひとつの手です。アニマルライフパートナーの院長で獣医中医師・丸田香緒里さんに東洋医学のお話を伺う企画も最終回。ごはんの見直しから犬の漢方薬、さらに簡単につくれる薬膳のおやつレシピまで、詳しく教えてもらいます。
意識したいのは「地産地消」と「五行」
「人間でも動物でもごはんで大切なのはバランス。ビタミン、ミネラル、タンパク質などの栄養素はもちろん、東洋医学的に見ても、温める、冷やすなど、食材にはそれぞれパワーがあります。ワンちゃんへの手づくりごはんも、毎回同じ取り合わせにならないよう気をつけましょう」
「バランスよく」をモットーにしたときに、取り入れたいのが「地産地消」。その季節に、その土地でとれるものを食べるのが、いちばん体にいいというという考え方です。
「トマトやきゅうりなどの夏野菜は体の熱をとってくれますし、かぼちゃやにんじんなどの冬野菜は体を温めてくれます。北海道のゴーヤと沖縄のゴーヤを比べると、前者は体を冷やす効果が低いそう。迷ったら、近隣農家さんの季節野菜を選んでみてください」
もっと深くアプローチしたい場合は、東洋医学のものさしである『五行』をぜひ意識してほしい、と丸田さん。
「食が細い子は脾(現代医学で言うと膵臓[すいぞう])や胃が弱っていることが多いので、五行で見たときにあてはまる鶏肉を多めに。一方、シニア犬は腎が弱るので、豚肉がおすすめです。ヒレ肉かロース肉から脂身を取り除いた、赤身の部分を取り入れてみてください」
また「五行」には色があるのが特徴で、呼吸器が弱い場合は大根などの白い食材、シニア犬など腎が弱い場合は黒胡麻などの黒い食材、と見た目でわかりやすいのもうれしいところ。本やネットなどで調べてみると、五行と食材のリストが出ているので、参考にしてみましょう。
食生活に漢方薬を取り入れよう
「もし長引く慢性疾患や、季節ごとに出てくる不調があれば、食事の改善に加えて、漢方薬を試してみるのはいかがでしょう」
私たち人間も「どうしても納豆が食べたい!」「なぜかレモンを欲する」などと感じることがありますが、生き物は体に必要なものを自然と欲するようにできているのだそう。
「だから苦い、おいしくないというイメージがある漢方薬ですが、処方されたものは体に必要なものなので、おいしそうに食べてくれるワンちゃんが多いんですよ。粉だけではなく錠剤などもあり、自分から欲しがる子もいるくらいです」
処方に関しては、必ず専門医に相談すること。漢方を取り入れている先生は、西洋医学も勉強されている方がほとんどなので、かかりつけ医でどんな薬を出されているのかを相談すれば、併用できるものを処方してくれます。
「たとえば皮膚病を治すものを処方しながら、関連する肺機能まで改善していくのが漢方です。病気になってから治療するのではなく、病気になりやすい体質など「未病」の時から体を治してくのも東洋医学ならでは。副作用も少ないので、ぜひおすすめしたい養生法です」
手づくりごはんで一緒に長生き
さて、ごはんの見直しを考える飼い主さんに向けて、今回は「簡単薬膳ごはん」と「手づくりおやつ」のレシピを紹介してもらいます。まず、「簡単薬膳ごはん」として『スープおじや』を挙げてくれました。作り方は、鶏肉や豚肉などワンちゃんの体質に合ったお肉類とごはんに、季節の野菜を加えて、お水と一緒に煮るだけ。
「胃腸の弱い子であれば、ねばねばした山芋や、胃の保護作用のあるキャベツなど。暑がりな子にはトマト、寒がり屋さんだったらカボチャなどはいかがでしょう。さらにくこの実を入れると、グッと薬膳風味になります。くこの実は不老長寿の果実と言われ、少し煮るだけでくったりと柔らかくなるので、便利なんです」
吐き気が強い子には、生姜のスライスを1枚入れてあげるといいそう。辛みが出るので、風味を移したらすぐに取り出すのがポイント。利尿作用のあるハトムギをごはん代わりに混ぜたり、新陳代謝に効果的な緑豆春雨を取り入れても。犬は肉食なので、お肉、野菜、穀物は6:2:2ぐらい。上手に食材を組み替えて、楽しみながらつくってみましょう。
「『手づくりおやつ』としておすすめなのが『おやき』です。さつまいもやカボチャをふかしたものに、きなこや黒すりごまを入れて焼いたものは、腎機能を高める効果あり。蜂蜜でほんのり甘さを足せば、胃腸を潤してくれます」
同様に、鶏肉や豚肉、季節の野菜を細かく刻み、つなぎに山芋や小麦粉を入れたおやきも、高タンパクで栄養たっぷり。肉類をサケ、マグロ、タラなどのお魚に変えてもOKです(ただし塩気のないもの)。
「食事を変えれば、ワンちゃんの体は確実に変化するはずです。いつもより元気になったり、毛づやがよくなったり、目の充血や濁りが取れてきたり。何より瞳が輝き始めたら、その食事が合っているという証拠。
4回にわたってお伝えしてきたマッサージ、ツボ推し、お灸、そして漢方や薬膳などの養生法を取り入れて、健康な暮らしへ導いてあげてください」
【第1回】春は犬もストレスがたまり不調になる!? おすすめごはんと簡単おうちケア
【第2回】愛犬のその症状、別の原因かも 東洋医学の未病治療とアンチエイジングのツボを紹介
【第3回】愛犬の心の不調、気づいてますか? 東洋医学的メンタルケア法を教えます
- 監修:丸田香緒里(まるた・かおり)
- Animal Life Partner院長、獣医師。日本大学卒。動物病院勤務後「人も動物も幸せな生活が送れるためのサポート」をモットーにAnimal Life Partner設立。獣医中医師、ペット栄養管理士など様々な資格を生かし、病院での診療の他、シニアケアや飼い主の心のケアにより力を入れた往診診療を行う。
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