猫と過ごせるデイサービス なでて遊んで抱っこして、癒やされながら機能訓練にも
今年、名古屋に「猫と過ごせるデイサービス」が誕生した。猫が好きだけど高齢だから飼えない、諦めているといった人には、何とも魅力的な場所なのでは。猫との触れ合いという楽しみは、生きる喜びにつながるのではないだろうか。実際の様子を見せていただいた。
自然に猫がいる風景
「猫と過ごせるデイサービス」は、名古屋市内に約15事業所を展開する民家活用型小規模デイサービス『ゴールデンリング』の、新たな取り組み。
流れはこうだ。介護事業部本部長・三宅さんの発案による新事業として、まず猫と暮らせるシェアハウスが2019年にスタート(詳しくは5月29日公開の「猫と暮らせるシェアハウス」の記事で紹介)。2021年2月、名古屋市千種区にその第4号となる『シャミニヨン清明山』と、猫と過ごせるデイサービス『ゴールデンリング清明山』が、同じ建物内に同時オープンした。
シェアハウスで、猫を飼いたい人の願いをかなえると共に、保護猫に居場所を作ることに成功し、介護事業にそれを応用。猫と触れ合うことで生きがいを感じたり、元気になったりしてほしいという思いと、保護猫を1匹でも多く助けたいという思いを、一緒にかなえようとするのがこの場所だ。
そこにあったのは、ごく自然に猫がいる風景。利用者さんが機能訓練をしたり、のんびり過ごしたりする空間に、猫が行ったり来たり。民家活用の定員10名ほどの施設ということもあり、猫のいる普通の家といった雰囲気だ。三宅さんが案内しながら説明してくれた。
「ケージで猫が落ち着ける居場所も確保しています。夜間から朝や、食事の時などはケージに入れていますが、それ以外は自由にしており、触れ合いを楽しんでいただけます」
ここにいる猫は、保護団体からの預かり中、ホームステイという形で来ている保護猫。現在は、共に推定2歳の2匹が暮らす。
触れ合いから笑顔が増える
「QOL(生活の質)を高め、人生を楽しんでいただくことを大切にしたい。その方法のひとつが、猫と過ごせることでした」
猫が好きな人なら、ただ一緒にいるだけで幸せになれる。ふわふわの毛をなでればほんわりと癒やされ、温かい気持ちに包まれる。セラピー効果は言うまでもないだろう。そして、猫じゃらしで遊ぶ、抱っこするといった動作が、知らず知らずのうちに機能訓練につながる。
意外だったのが、利用者さんは猫好きとは限らないということ。猫が大好きで他のデイサービスから移ってきた人もいれば、特に好きでもない人もいるそうだ。しかし、最初は「全く興味ない」と言っていたある男性が、いつの間にか猫をなでたり、一緒に遊んだりするようになり、それまで見られなかった笑顔が見られるようになったこともあるという。
また、この施設はお泊まりも可能で、長期滞在の場合は飼い猫を連れてくることもできる。「介護が必要だけど、猫と離れることができない方のための場所でもあります」
1階がデイサービス、2階がシェアハウスというつくりにも意味がある。「1階と2階で、猫も人も交流できるようにする構想も。コロナの影響でストップしていますが、ゆくゆくは実現させたいと考えています」
猫シェアハウスの入居者がスタッフに
驚いたことに、ここがオープンする際、シェアハウスの入居者2人が他の仕事を辞めて、スタッフになったという。施設長の石井典子さんもその一人だ。それは事業、取り組みに意義を感じ、共感してこそのはず。
ちなみに他の事業所も含めると、シェアハウスで暮らす計3人が介護事業の社員になったそう。人手不足に悩む業界にも貢献している。
スタッフは猫の世話もするが、自動の給餌(きゅうじ)器と給水器、砂が飛び散りにくい飛び込み式のトイレなどで、できるだけ負担を減らしている。また、利用者さんもできる範囲で、一緒に猫の世話をしてもらうようにしている。それもいいリハビリになり、張り合いも生まれる。
評判は上々で、5月1日に同区内の『シャミニヨン本山』があるビルの中に、猫と過ごせるデイサービスの第2号『ゴールデンリングぴあの』がオープンした。今後もニーズに合わせて増やしていく計画だ。
全国各地でも同様の取り組みが始まっているようだが、こんな場所がどんどん増えていってくれることが望まれる。自分が将来、デイサービスを利用することがあったとして、そこで猫と触れ合えるなら、きっと行くのが楽しみになるはず。生きる喜びをもらえるだろう。
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