猫と暮らせるシェアハウス「天国ですね」 飼い猫も預かり中の猫も自由に行き来

 ペットと暮らせる賃貸物件は、増えてはいるがまだまだ少ない。選択の幅はどうしても限られてしまう。そんな中で以前から気になっていたのが、猫付きやペットと一緒に入居できるシェアハウス。首都圏をはじめ各地にできているようだが、名古屋にも「猫と暮らせるシェアハウス」があるという。どんな所なの? うまくいっているの? 現地を訪ね、話を聞いてみた。

(末尾に写真特集があります)

第一声は「いい!」

 名古屋の猫と暮らせるシェアハウス『シャミニヨン』。2019年、中心エリアの大須に第1号がオープンし、現在は市内に4カ所を展開している。一軒家からビルのワンフロアまで、また、部屋数は3室から10室まで、タイプも規模もさまざまで、なかには女性専用の所もある。

建物外観
『シャミニヨン』はフランス語で「可愛い猫」という意味

 訪れたのは第1号の『シャミニヨン大須』。4カ所の中で最も規模が大きい3階建ての一軒家で、10室を備えている。

 共有スペースのLDKに入り、思わず言った。「いい!すごくいい」。広々としたスペースに、キャットタワー、猫の個室にもなるケージが置かれ、猫が大好きなこたつもある。ほっこりする雰囲気で、猫がたくさんいると思えないきれいさだ。

 トイレは砂が飛び散りにくい飛び込み式。猫の世話は入居者がするのだが、日々の負担を減らすことも考えて、自動の給餌(きゅうじ)器、給水器も設置されている。

リビング
リビング。ドラえもんしかいないのは、猫たちは日当たりのいい誰かの部屋でお昼寝中だから

 ここにいる猫はほとんどが保護猫で、保護団体からの預かり中、ホームステイという形が基本。さらに、自分の猫を3匹まで飼えるのが大きな特徴だ。元々飼っている猫を連れて入居することも、ホームステイに来た猫の飼い主になることもできる。

 ホームステイ中の猫は、新しい飼い主が別で見つかればいなくなってしまうが、「それは寂しい」と、入居者が飼い主になり、そのまま一緒に暮らすケースがかなり多いという。

階段にいる猫
階段で遭遇したキジトラの寅さん

飼いたい人と保護猫にベターを

 『シャミニヨン』を運営する株式会社シルバーリング(名古屋市)の、企画者で管理者でもある三宅さんは、ご自身も奥さんも大の猫好き。5匹の猫と暮らしている。以前、保護猫を2匹引き取り、もっと助けたいがそれがかなわなかったり、引っ越しに困ったりした体験が、シェアハウス立ち上げのベースにあるという。

 「猫を飼いたい、保護猫を引き取りたいと思っても、飼える場所がない。あっても家賃や入居時などの費用が高額なことや、1匹までという条件付きが多い。もっと猫と楽しく暮らせる賃貸物件を作りたい、もっと保護猫を引き受けたいという思いから、ここに行き着きました。保護猫の本当の幸せは決まった飼い主のもとに行くこととわかっていますが、落ち着ける場所があるのは大きいのでは。ベストではないかもしれないが、ベターな選択肢だと考えています」

リビングにいる猫
物音を聞いて数匹がリビングにやってきた

 なぜシェアハウスかというと、「費用のハードルを下げたかった」からだそう。大須の場合、家賃が税込み35,000円からで、水道光熱費やWi-Fi費、猫飼育代などを含めても約5万円から。入居時費用は保証金の家賃1カ月分だけだ。

どの猫もみんなで見守る

 大須に現在いる猫は、計12匹。「この子は〇〇さんの猫。あの子はここの猫になりました。あの子はホームステイ中の……」と紹介していただくが、とても覚えきれず。でも、色々な猫と暮らす楽しさは伝わってきた。そして、入居者のみなさんが猫と接する様子から、誰の猫だろうが、どの立場の猫だろうが、温かい目で猫たちを見守っていることがわかった。

猫ドアから出入りする猫
猫ドアからこんにちは

 リビングおよび各部屋の扉には猫ドアが付いており、猫は自由に行き来できる。自分の部屋に猫たちが遊びに来て、気づけばハーレム状態ということも。しかし、猫同士はうまくいっているのだろうか?

 「初めは威嚇することもありますが、じきに慣れていますね。ただ、飼い主さんの考え方や猫の性格もあるので、自室内で飼うこともできるようにしています。猫ドアをロックするだけです」

猫を中心にうまくいく

 『シャミニヨン』を選んだ理由は、一番は当然ながら「猫と暮らしたい」。その他、「複数匹飼える」「飼ったことがないので体験してみたい」「仕事が忙しく、一人で世話ができるか不安」といったことや、「猫を飼うと長期の里帰りや旅行がしにくいが、ここなら誰かが世話をしてくれる」というのも多いそうだ。

キャットタワーでくつろぐ猫
タワーでくつろぐマリーちゃん

 入居者の年齢層は20~40代。会社員、医療・福祉関係、飲食業など職業も、生活時間帯もバラバラだ。猫の世話、共有部分の掃除などの役割分担、ルールは厳しく決めているのだろうと思いきや、気がついた人が率先してやるスタンスで、それがむしろ良いらしい。

 「もう一つ、管理側がきめ細やかに接点を持つことがうまくいく秘訣(ひけつ)」と、三宅さん。入居者と小まめにグループラインでやりとりしホームページやSNSで写真やコメントを発信している。もっとも話題は猫のことがほとんどだ。

 一方、半強制的になりがちなイベント類はほぼなし。「絶対的な共通ワード『猫』があり、みんなで猫たちの幸せを第一に考えることで、うまくいっています」

 オープンから約1年半経つが、やむを得ない事情以外の退去はないという。他人同士の共同生活ゆえ長続きが難しいルームシェアで、高い定着率を実現している。

 確かに、たくさんの猫と一緒に暮らし、関わり合える、しかも費用も現実的という環境はなかなか他になく、離れがたいのでは。出産シーズンには子猫もホーステイにやってくる。自身の飼い猫が2匹というWさんは「天国ですね」と、笑顔を見せた。

おやつをもらう猫
おやつをもらって満足、満足

 ホームステイ中の猫も、誰かの飼い猫も、自由気ままに行き交う猫たちは、とても幸せそう。猫と暮らしたいという願いをかなえ、ほどよい距離感を保ちつつ、猫の幸せという共通項で通じ合えるシェアハウスは、素敵な場所だった。

 さらにこの成功から、猫と人の幸せをまた異なる切り口で追求する場所が誕生している。その話は5月30日公開の「猫と過ごせるデイサービス」の記事で。

◆『シャミニヨン

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石井聖子
猫依存症の名古屋在住ライター。幼少期は犬、亀、鶏、インコと暮らし、猫歴は30年以上。現在は3ニャンズ(と夫)と同居。さらにワンコも一緒に暮らすのが野望。夢は弱い立場にいる動物と子ども、全ての人が一緒に幸せになれる方法を見つけること。

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