犬にヨーグルトをあげても大丈夫? 獣医師に聞く、あげ方のポイントとアドバイス
ヨーグルトが美容と健康によいことは広く知られています。「人間によいのだから、犬の健康にもよいはず」と、愛犬にヨーグルトを与えている飼い主もいるでしょう。けれど、ヨーグルトをあげても本当に大丈夫なの? 苅谷動物病院グループ総院長の白井活光獣医師に、ヨーグルトを与えるうえで気をつけたいことを伺いました。
「乳酸菌」は腸内環境を整える効果も
――ヨーグルトには腸内環境を整える働きがあると言われていますが、犬にも同じ働きが期待できるのでしょうか?
乳酸菌にはいろいろな種類があり、人と犬では腸内に住む乳酸菌も異なります。しかし、腸内の乳酸菌を増やすことで腸内環境のバランスを整え、免疫力アップや、メタボ改善、肌の状態をよくし被毛を美しくするなど、全身に作用することは犬でも変わらないと考えられます。
乳酸菌には血中尿素窒素の値を下げる種類もあります。腸内の善玉菌が増えると尿素窒素をつくるアンモニアが増えにくくなるためで、慢性腎臓病のときに、状態の悪化を予防するともいえると思います。
犬にヨーグルトをあげるなら無糖・低脂肪がおすすめ
――どのように与えるのがよいのでしょうか?
ヨーグルトに含まれる糖や脂肪は消化の負担になるので、必ず無糖、低脂肪のプレーンヨーグルトを選んでください。また、無糖であっても、甘味成分としてキシリトールを使用しているヨーグルトもあるので注意しましょう。少量であれば中毒になる可能性は低いと思いますが、与えるのは避けたほうが安心です。
乳酸菌は継続して与えないと腸内に住みつきません。腸内環境を整えることを目的に与えるのであれば、毎日、習慣的に与えるほうが効果を期待できます。犬用の乳酸菌サプリメントの投与量から単純計算をすると、ヨーグルトなら1日約10g、小さじ2杯程度をドッグフードにトッピングしてあげるとよいでしょう。
――便秘や下痢がひどいときにヨーグルトを与えるのは問題ないのでしょうか?
動物病院では、急性の便秘や下痢、ストレスや何らかの疾患が原因で免疫力が下がったときに、腸内細菌を整えるために乳酸菌製剤を使うことがありますが、ヨーグルトを急性の便秘や下痢に与えることは避けたほうがよいでしょう。食べ慣れていないものを突然与えると、症状を悪化させる可能性もあります。
ヨーグルトが体質に合わない犬も
――ヨーグルトを与えてはいけない場合はありますか?
犬はもともと牛乳に含まれる乳糖を分解できず、牛乳を飲むと下痢や消化不良といった「乳糖不耐性症」の症状を引き起こすことがあります。ヨーグルトは発酵の過程で乳糖のほとんどが分解されてはいますが、完全に分解されているわけではないので注意しましょう。
牛乳アレルギーを持つ犬も、注意が必要です。初めてヨーグルトを与えるときには注意深く観察し、下痢や嘔吐、かゆみなどの症状が見られたら、動物病院に連れて行きましょう。
また、乳酸菌は慢性腎臓病の悪化予防をサポートする働きもあると説明しましたが、ヨーグルトにはたんぱく質が含まれているので、腎臓病の療養食でたんぱく質の摂取量を制限している犬には与えないでください。脂肪を分解するすい臓や胆のうの機能が低下している犬にも与えない方がよいでしょう。
犬用乳酸菌サプリメントも選択肢に
――子犬や老犬には与えても大丈夫ですか?
犬独自の腸内細菌のバランスは、成長期に整えられています。子犬のときは腸内環境が整っていないうえ、消化機能も完全に発達していないので、ヨーグルトを与えるのは避けましょう。試すなら、生後1年を過ぎてからがよいと思います。
食欲が落ち気味の老犬は、フードにヨーグルトをトッピングして風味をよくしてあげると、よく食べてくれることがあります。しかし、食べ慣れていない老犬にいきなりヨーグルトを与えると、下痢や嘔吐を引き起こしてしまうこともあります。体質に合っているとわかっている場合を除き、与えるのは避けたほうがよいでしょう。
ヨーグルトを与えることは基本的に問題ありませんが、乳酸菌を摂取し腸内環境のバランスを整えることを目的にしているのであれば、ヨーグルトではなく犬用の乳酸菌サプリメントを与えることも選択肢として考えて欲しいと思います。犬に特化した乳酸菌を使い、糖や脂肪など余分な成分も入っていないので、安心して与えることができます。
- 白井活光獣医師
- 苅谷動物病院グループ総院長。獣医学博士。1998年日本大学大学院卒業。同グループ「三ツ目通り病院」や「葛西橋通り病院」の院長を歴任。2015年から現職。日本臨床獣医学フォーラム副会長。専門分野は総合臨床。
苅谷動物病院グループ 公式サイト >
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