犬を迎えたい!気をつけるポイントは? 大切なのは「家庭と犬のマッチング」
大切な愛犬との出会い方はいろいろありますよね。もしこれから犬を迎える場合、どんなことに気をつければいいのでしょうか。ヤマザキ動物看護大学の福山貴昭先生によれば、「最も大切なことは家庭と犬のマッチング」だそうです。自分や家族、ライフスタイルに合うかどうかを考えることから始めましょう。
加えて、犬の性格の見分け方や健康状態のチェックも大切です。主な犬の入手先であるペットショップ、ブリーダー、譲渡会の選び方なども紹介します。
自分と家族のライフスタイルを確認する
犬を迎えるときは、犬がかわいいか、元気があるか……と犬を見て決めたくなりますが、まず自分や家族の住まいやライフスタイルを確認しましょう。たとえばリビングが12畳ある家なら、小さいチワワは生活兼運動スペースにもできます。ところが大きいラブラドルレトリバーは、生活スペースだけでいっぱいになりますよね。散歩に加えて運動の機会を屋外でつくることを考える必要があるわけです。
また、黒い服が好きできれい好きで人目が気になる人なら、白くて抜け毛が多い犬を迎えると距離を置かざるを得ないシチュエーションが生活中に発生して、互いにストレスを感じる原因になってしまいます。仕事で留守にする時間が多い人には、手厚い世話が必要な子犬は不向きでしょう。自分や家族、迎えた犬が幸せに暮らせるように、迎えた後の日常にまで想像力を働かせて考えてくださいね。
目の前にいる犬を客観的に見て決めよう
飼い主さんが目の前の犬を客観的に見て、「自分の家庭に合っている、この犬と暮らしたい」と判断できれば理想です。迷ったときは犬の健康も確認しましょう。心身が健やかな犬を迎えたほうがその後の生活の幅が広がるからです。
健康面のチェックポイントは皮膚と粘膜の境目である口角、目、耳、肛門(こうもん)周り。これらの部位の皮膚や毛の色が変色していたり、毛が薄くなったりしているときは不調があるかもしれません。また、脚先の毛をなめて変色させている場合は、原因としてストレスやアレルギーも考えられますし、ひとりぼっちの個室や消毒液がまかれた床など、不適切な場所で育っているかもしれません。これらの毛の変色は観察しやすい部位なので、違和感がないかしっかり見てください。
子犬の場合、最初に会ったときの様子も重要です。意外かもしれませんが、「ちょっと警戒できる」子犬は観察力が高く、いわゆる空気が読めるタイプ。最初は見知らぬ人に対して距離を置いていて、やさしい声で呼ぶと寄って来るような子犬が理想かもしれません。逆にいきなり跳んでくる子犬は興奮性が高く、いつまでも寄ってこない子犬は警戒心が強すぎます。どちらも社会性においてちょっと不器用で、空気が読めないところがあります。飼い主さんが配慮しながら育ててあげる必要があるでしょう。
より良い入手先の選び方
犬の主な入手先はペットショップ、ブリーダー、譲渡会の3つです。いずれの入手先を選ぶ場合も、以下の3項目が1つでも当てはまる場合は、世話をする人の手と目が行き届いていない可能性があります。想像力を働かせて考えても違和感が消えない場合は、その入手先が自分に合っていないと考えましょう。
・ドッグフードと糞尿が混ざった異質なにおいがする
・子犬の近くにウンチが放置されている
・ストレスを訴える犬の鳴き声やほえ声が聞こえる
ネットの飼い主募集サイトも犬との出会いの場になりますが、必ず相手と会い、犬を客観的に見て判断しましょう。
ペットショップのメリットとデメリット
販売されている犬の大半は純血犬種の子犬です。ブリーダーからオークションを経由して売られてペットショップに来ます。
[メリット]
店のスタッフのほか、通行人を見たりお客さんとふれあったりすることで、たくさんの人間の存在を知る機会があります。ショップによっては、獣医師の健康診断や遺伝性疾患の検査の結果を示した子犬のみ販売しています。
[デメリット]
24時間ずっと個室で過ごすので、親きょうだいやそれに代わる人とのかかわりが得られないこと。社会性を最も効率よく学べる子犬の時期に、必要な刺激を得られないデメリットは計り知れません。たとえ問題なく育っていたとしても、その犬の本来の良さを100%引き出せていないかもしれないのです。
[より良いペットショップを選ぶ目安]
子犬同士が遊べるスペースを設けているショップ。同種とのかかわり方を学ぶ場が必要という意識で運営され、感染症対策も行われている目安になります。
ブリーダーのメリットとデメリット
販売されている犬の大半は純血犬種の子犬です。繁殖させるための犬をケネル(犬舎)で飼育しています。近年は繁殖を引退したシニア犬を譲渡する「フォスターペアレント制度」を設けているブリーダーもいます。
[メリット]
遺伝的・環境的に同じきょうだい犬と比較して、成長(小さい、痩せている)、健康(毛の変色)、観察力(初対面の様子)などを確認できることが最大のメリットです。親犬を見られるので、子犬の将来のサイズや容姿のイメージを想像しやすいことも挙げられます。飼い主さんが自分のライフスタイルや理想に合う犬を選びやすいのもメリットでしょう。
[デメリット]
第三者の目が入らないケネルで生まれ育つので、遺伝性疾患の検査や健康の確認などをされていないことがあります。小規模で個人が運営するブリーダーの場合、万が一の補償が不安定です。また、ケネル業務に従事する特定の人としか人との接触機会を持っていない犬は、その他の人を怖がる犬に育っている可能性があります。
[より良いブリーダーを選ぶ目安]
子犬が生まれ育った環境や繁殖を終えた老犬の状態などを見ておきましょう。ブリーダーの犬に対する取り組みを確認することができます。
譲渡会のメリットとデメリット
自治体や動物保護団体が飼い主のいない犬を「保護犬」として譲渡会を開いています。年齢も犬種もさまざまです。不妊・去勢手術やワクチン接種などの費用のみで犬を入手できることもあります。
[メリット]
多くの団体が1~2週間程度のトライアル期間(犬と飼い主のマッチングを確認する期間)を設けているので、実際に犬との暮らしを体験できます。団体によりますが、犬とのマッチングやしつけについてスタッフからアドバイスを受けることもできます。初めて犬を迎える方は、事前に団体の方針を確認しておきましょう。ペットショップやブリーダーから迎える場合に比べて、しつけや生活環境を整えやすいかもしれません。
保護犬を迎える際の費用はペットショップやブリーダーから迎える場合に比べて低いため、たとえば40万円の予算を持っている人が2万円で犬を譲渡してもらった場合、残りの38万円をしつけに使って理想の犬に育てることができ、強い絆を育むことも可能。犬と暮らす期間を考えれば、メリットが非常に大きい選択肢です。
[デメリット]
家庭犬としては不適切な犬が譲渡対象になっている場合があります。人間社会での生活が困難な犬を迎えた場合、お互いに幸せになれる可能性は非常に低いと言わざるを得ません。
[より良い譲渡会を選ぶ目安]
家庭犬として十分に適応できる状態の犬を、丁寧な説明と共に譲渡してくれる団体を選びましょう。自治体の譲渡会を選ぶのも一案です。
自分のライフスタイルにマッチしているか
入手先の良しあしを見ることも大事ですが、自分のライフスタイルと犬の客観的な評価をもとに判断することを心がけてください。とはいえ「かわいい」「元気がある」「人懐っこい」など、犬の容姿やしぐさに一目ぼれをすることもありますよね。迎えた後でも飼い主さんの努力で犬と良い関係を築くことは十分可能です。
犬を購入することは、その入手先に投資する意味合いもあります。ペットショップ、ブリーダー、動物保護団体などを支援することも十分に意識して、将来的にも応援したくなるところを選ぶのも一案です。愛犬だけでなく、これから生まれる犬の幸せにもつながるのではないでしょうか。
- 監修:福山貴昭(ふくやま・たかあき)
- 修士(危機管理学)・認定動物看護師。ヤマザキ動物看護大学コンパニオンアニマルケア研究室講師。コンパニオンアニマルケア(グルーミング)論やイヌ・ネコの特性論、動物災害・危機管理を担当。ペット防災バッグ『BOUSAI GO BAG(ボーサイ ゴーバッグ)』などの監修の他、メディアや企業でセミナーも行っている。
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