猫は人生の師匠であり、いい落語のもと 保護猫3兄弟と暮らす林家たい平さん

 笑点の大喜利メンバー(オレンジの着物)として知られる落語家の林家たい平さん。動物好きで、15年来、公益財団法人日本動物愛護協会の理事を努め、保護猫3兄弟と暮らしています。子どもたちと共に育った先代猫にも触れながら、猫への深い思いを語ってくれました。

(末尾に写真特集があります)

仲がいい3兄弟

「うちのニャンズの名前は、あさひ、たいが、はやて。3兄弟でとても仲がいい。あさひだけ毛色がグレーだけど、みんなキジ模様。1歳10カ月の元気な猫たちです」

 たい平さんが笑顔で説明する。兄弟の性格はそれぞれ違うようだ。

「たいがは人なつこくてなでられるのが好き。はやてはいちばん好奇心旺盛。あさひは遠いところを見つめる不思議ちゃん(笑)。でも最初に僕になついたのは、あさひなんです」

たい平さんと3匹の猫
幼い時の3兄弟とたい平さん「にぎやかになりました」(たい平さん提供)

 ニャンズを迎えたのは2019年6月。離乳して間もない頃だった。

「動物との出会いは縁というけど、まさにうちも、不思議な縁でつながった感じでした……」

先代を亡くし、家族の思いが一致

 ニャンズはたい平さん宅に来るひと月半前の2019年5月初旬、都内のとある銀行の駐車場で行員さんが発見した。そこから日本動物愛護協会に連絡が行き、その後、愛護協会の職員の自宅で保護、ミルクのお世話をされていた。

保護後、1カ月くらい職員の家で育った(日本動物愛護協会提供)

 一方、たい平さんはその頃、「そろそろ猫が飼いたい」と、妻や3人の子どもと話していた。先代の黒猫マネが前年の2018年に17歳半で亡くなり、さみしい思いをしていたのだ。

「見送って1年経つ頃、家族がほぼ同時に『もう一度飼いたいね』『助けられる命があるなら』『保護猫を迎えたい!』と言って、意見が一致。猫を飼う気持ちがかたまったんです」

 動物愛護協会で理事をするたい平さんは、多忙で会議になかなか参加できていなかったが、久しぶりに時間ができて、6月の会議に出向いた。その時、職員にたまたま「引き取り手のない猫がいたら迎えたい」という思いを告げると……。

「『えー!3匹保護したばかり』と言うので、驚いて。そこから話が進みました。家族を待つ子猫と、猫を迎えたいという我々家族が、まさに見えない糸でひきあった感じです」

たい平さん家族と猫たち
30代のたい平さん、先代猫マネを抱く長男、ミレーを抱く長女(たい平さん提供)

 ミルクを飲むうちは手がかるし不安定なので、離乳して立派なうんちがでるようになるまで待ち、長男と長女を連れて職員宅で見合いをし、3匹を引き取ることになったという。

 たい平さんは、“3匹”という数にも運命を感じたそうだ。たい平さんの心に、ずっと「ひっかかっていたこと」があったからだ。

マネとミレーともう一匹

 “心のひっかかり”は、20数年前にさかのぼる。

「僕は30代で結婚し、かみさんが独身時代から飼っていたホームズという猫と暮らすことになった。まるまるして可愛い猫でしたが、長男が3歳の頃に亡くなって。悲しんでいたら、日本動物愛護協会の当時の事務局長が『悲しんでばかりより、縁があればまた保護猫を迎えることを考えるといいですよ』と言ってくださったんです。亡くなった猫も、『仲間を助けてくれてありがとうと思うはず』だと」

 子猫を迎えると、お世話が大変で別れの悲しみを超えるということも聞いて、たい平さんは前向きに考えるようになった。ちょうどそんな時、近所の方から 『近くの路地で猫の赤ちゃんが3匹産まれたけど、どうです?』と話をもらい、妻と相談し快諾した。

 ただ、3匹と聞き、当時のたい平さんはちゅうちょした。子どもも小さいし、複数を飼いきれるか自信がなかった。そこで、マネとミレーの2匹を迎え、1匹は他の人に譲ることにした。

「ミレーは12歳で旅立ちましたが、マネと共に大事に育てました。2匹と暮らしながら、よくかみさんと『もう一匹の子はどうしたかな、幸せになったかな』と話していたんです」

 できれば3兄弟をひき離したくはなかった。その後悔があったからこそ、今回、新たな3兄弟を迎え入れて、たい平さん自身が救われたようだ。

「今度こそ、兄弟をみんな一緒に引き取りたかった。保護してあげるではなく、来てくれてありがとう、という思いです」

3匹の猫
「このアイアンならもっと飛ぶはず」「うん」「そうだね」(たい平さん提供)

 可愛くにぎやかな子猫たちは、家族の顔をぱっと輝かせた。

「ニャンズが来た時に次男は高校2年生で長女は大学3年生。環境が変わって子どもなりに大変な時に、癒やされたと思う。落語の前座になった長男の励みにもなっているんじゃないかな」

猫は心のパトロールをする

 たい平さんの家族にとって、猫はなくてはならない存在のようだ。

「猫や犬って、友達になったり、親のようになったり、いろいろな役回りをする。なにより彼らは“心のパトロール”をしてくれる。うちでは子どもたちが多感な時代に、親ではなく猫に何かを話しかけていたり、寂しそうな時に猫がすっと寄りそっていたっけなあ……」

なでられる猫
たい平さんと真っ先に仲良くなったグレーの毛のあさひ(たい平さん提供)

 猫はみな性格が違うが、それぞれの“やり方”でひとの心を察し、「楽しく生きる道」を案内してくれたという。

「マネは、子どもが学校から帰って元気がないといち早く察知して、部屋で横になる子の寝床まであがったりした。ミレーはどっしりかまえて、そんなにあたふたとしなくてものんびりしてればいいんじゃない?という感じでした。もちろん僕にとっても、猫は大きな存在。生きる上でいちばん大事なことを教えてくれる師匠、にゃんこ先生です(笑)」

「たとえば親として教わったのは、子どもとどう接したらいいか迷った時。僕は“正しいことを言わなきゃな”と思ったりしたけど、猫たちは“そっと見守っていればいいんだよ”とか“今は行かなきゃ”とか、身をもって教えてくれた気がします」

猫が笑顔の源に

 たい平さんは美大を卒業後に林家こん平師匠に入門。(結婚した)2000年、真打ちに昇進し、以降、落語家として幅広く活躍中だ。猫がその活躍を「見守ってきた」ようでもある。

「たしかに仕事をする上でも、猫がいたことは大きいな。落語は、何よりも心が豊かになっているのが大切で、お客さまと向き合う時、自分の心が豊かでないと楽しい落語はできない。そういう意味では、家の猫たちが僕に笑顔を作ってくれて、その笑顔をお客さまに届けることができる。つまり笑顔の源……いい落語のもとですね」

 猫経験とともに年も重ねたたい平さんは、久々に子猫と暮らし、以前と少し違う感覚も味わっている様子。

「最初の猫と暮らした時は30代で子どももいなかったけど、今は50代半ば。子どもたちもおとなになってきて、猫はもう“孫”です(笑)。買い物にいくと、喜ぶかな?と思って猫のおもちゃをつい買ってしまう。この前、噴水みたいな水飲みを買ったら、かみさんに『そんなの飲まないわよ』っていわれて。でも見張っていたら飲んだので、うれしかった~!3匹には長生きしてほしい、ずっと見守っていきますよ」

たい平さんのブログ
日本動物愛護協会ホームページ 

林家たい平
1964年12月6日生まれ、55歳。武蔵野美大卒業後、林家こん平に入門し、92年二ツ目、2000年に真打ち昇進。04年に闘病中のこん平の代役として日テレ系「笑点」大喜利メンバーとなり、その後正式メンバーに。武蔵野美術大学客員教授。一般社団法人落語協会理事。日本動物愛護協会理事。日本動物愛護協会の広報誌『動物たち』4月号(vol.193)より、猫の飼育日記「林家たい平のヤンチャーズ ただいま修行中!」がスタートする。

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藤村かおり
小説など創作活動を経て90年代からペットの取材を手がける。2011年~2017年「週刊朝日」記者。2017年から「sippo」ライター。猫歴約30年。今は17歳の黒猫イヌオと、3歳のキジ猫はっぴー(ふまたん)と暮らす。@megmilk8686

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