犬を捨てて「親切な人に見つけてもらってね」は「犯罪者のセリフ」 CMに込めた思い
今年6月末まで放映されていた「にゃんぱく宣言」。ACジャパンが日本動物愛護協会の活動を支援する、猫の適正飼育を訴えるキャンペーンCMは大きな話題になりましたが、7月から第2弾CM「犯罪者のセリフ」がスタートしました。日本動物愛護協会の常任理事・事務局長の廣瀬章宏さんに、今回のCMに込めた思いなどについて伺いました。
「親切な人に見つけてもらってね」
優しい歌声が流れる中、女の子とお母さんが子犬の入った段ボールを木の下に置きます。事情で飼えなくなったのでしょうか。女の子が泣く横で、お母さんが願うように言います。
「親切な人に見つけてもらってね」
そしてその瞬間、こんなナレーションが流れます。
「優しそうに聞こえても、これは犯罪者のセリフです。どんな理由があろうと、どんなに心を痛めようと、動物を捨てること、虐待することは犯罪です」
このCMやポスターは、来年6月までテレビ、ラジオ、新聞、駅貼り広告などで展開されます。
罪の意識を持たない人が多い
――CM「犯罪者のセリフ」はどんなふうに生まれたのでしょうか?
「日本動物愛護協会がACジャパンの支援団体に決まった時、最初に猫の適正飼育をテーマにして、次年度も支援団体に選ばれた場合には動物の遺棄・虐待をテーマにしたいと思っていました。遺棄や虐待についての罰則強化を盛り込んだ改正動物愛護管理法が6月1日より施行されることもあり、7月1日からのCMはタイミングもよいと考えました。『にゃんぱく宣言』の時の時と同じようにコンペをして、候補の中から作品を選ばせて頂きました」
――イラストは絵本作家のえがしらみちこさん。歌はシンガー・ソングライター高井息吹さん。絵と歌から受ける印象はソフトで温かみがあり、メッセージの“強さ”と対象的です。
「動物虐待は犯罪だ、と暗く恐ろしく表現するのは簡単ですが、お茶の間で見たら少し嫌な気分になったりつらくなったりすると思うので、あえて柔らかな背景になっていますが、インパクトがあると思います。
CMでも言っていますが、飼えなくなったからといって簡単に引き取るところはありません。都会では猫を捨てる事例、地方では犬の置き去りなどが多く、2018年度は全国の動物愛護センターに91,939頭の犬や猫が引き取られ(犬35,535頭 猫56,404頭)、そのうち犬は約10%、猫は約19%が飼い主からの持ち込みです(環境省調べ)。その他が所有者不明となるのですが、その中には多くの遺棄された犬や猫が含まれています。野良犬、野良猫と呼ばれる犬や猫も元は人が遺棄した犬や猫が繁殖したものです」
――可愛がる人がいる一方で、多くの人が捨てているのですね
「保護活動をしている団体や個人の方が努力しても、すべての命を救い、譲渡先を見つけるところまで追いつかない現状があります。虐待は悪いことだとわかっていても、遺棄についてはそこまで罪の意識を持っていない人が多いと感じています。でも虐待や遺棄は懲役や罰金に処せられる法律的犯罪なのです。そのことをわかってほしいです」
遺棄や虐待、考えるきっかけに
――CMの反響はいかがですか?
「SNS上では『驚いたけどその通り』『ずばっと言ってくれてよかった』というようなご意見を頂いています。前回の『にゃんぱく宣言』は大きな話題になりましたが、家の外に出してはいけないというフレーズに対し、『猫は自由な生き物で、外で飼うものだ』と言ってくる方もいて、まだ室内飼いが浸透していないと実感しました。遺棄や虐待について、今回のCMを通して少しでも考えるきっかけになってほしいですね」
――コロナの影響で(在宅時間が増えて)ペットを迎える人も増えているようです
「確かに昨今、動物に癒やしを求める方が増えています。衝動的にではなく、ちゃんと最後まで面倒を見られるのか、よく考えて飼ってほしいと思います。飼えなくなる可能性があるのであれば、飼わないことも動物愛護です」
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