いつか、動物愛護の最先進国になれると信じて 音楽評論家 湯川れい子さん
音楽評論家・作詞家として知られる湯川れい子さん。動物愛護活動にも精力的に取り組み、2001年からは文化、芸術分野の著名人で作るボランティア集団「エンジン01文化戦略会議」の動物愛護委員会委員長として、署名活動や政策提言を続けています。近況や活動について聞きました。
犬猫も人も高齢化
――ご自身も保護猫を飼っているそうですね。
はい。もう今は1匹だけ。17年ほど前に四谷の中学校近くで保護した「レオン」という猫で、ふかふかの長毛だったのですが、今は老猫になり、ずいぶんやせてしまいました。トイレの世話など、だんだん手間がかかるようになっていますね。
――高齢になったペットの世話が負担になり、捨ててしまう人もいると聞きます。
地域の保護活動の内容を聞いていると、高齢の犬や猫が保護されるケースは多いです。なんらかの病気を抱えていることが多く、獣医師にみてもらう費用もかかります。このため、保護した後ももらい手がほとんどいません。そうした犬や猫を支えているのは、地域の保護団体・ボランティアの人たちです。
不妊・去勢手術や予防接種などの活動に必要な資金繰りが、多くの団体の課題です。助成金を設けている自治体もありますが、それでも足りないのが実情です。私も微力ながら、16年ほど前に地域のボランティアを支援するための「虹猫基金」を始めました。年に2回、自宅のガレージでバザーを開き、知人から届いた服やバッグなどを売った収益を寄付しています。
――エンジン01では、飼い主に「飼いとげよう」というメッセージを発信していますね。
掲げている目標の一つが、殺処分をなるべく減らしていくことです。ゼロに近づけていくため、まずは飼い主に責任を持って飼い遂げてもらうよう呼びかけようと、このメッセージを最初に発信したのはメンバーだった故・川島なお美さんでした。遺志を継いで発信しています。
一方で、飼い主の高齢化に伴い、飼い遂げようと思っていても、ご自身の体調不良などで世話が出来なくなる人もいます。これも課題だと思っています。
独のような仕組みを
――どのような解決方法があるのでしょうか?
ドイツの事例が参考になります。「ティアハイム」と呼ばれる動物保護施設が各地にあり、保護された動物と新たな飼い主とのマッチングを行っています。そこで飼い主が見つからない場合でも、終生飼育施設などに移して面倒をみています。主な活動資金は民間の寄付やペットへの遺贈金です。日本でも、社会全体として飼い遂げていけるシステムが作れないか、寄付税制も含めて模索しています。
――長く動物愛護活動をされていますが変化を感じますか?
大きく変わったと感じています。昨年成立した改正動物愛護法もその一つ。ペット販売業者の飼育数上限など数値規制も盛り込まれることになりました。また、保護活動に対する理解も深まっていると感じます。
犬や猫などの動物はこの社会で最も弱い存在の一つです。犬や猫に優しい社会を目指すことは、子どもや社会的に弱い立場にある人に優しく、余裕を持って接することができる社会につながっています。まだまだ課題はあります。それでも私は、日本がいつか、動物愛護に関しては世界の最先進国になれると信じ、活動を続けています。
(太田匡彦、浜田知宏)
ゆかわ・れいこ 1936年、東京生まれ。音楽評論家、作詞家。代表作は「センチメンタル・ジャーニー」「六本木心中」など多数。エンジン01文化戦略会議副幹事長・動物愛護委員会委員長、TOKYO ZEROキャンペーン呼びかけ人。
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