作詞家・湯川れい子が語る  個性際だつ猫たちの魅力

 以前に住んでいた地域でも、街中でよく猫を見かけました。季節によっては子猫が路地裏を走り回っていて、そういう中には交通事故にあってしまう子もいました。不幸な運命をたどる子たちが増えないよう、地域の方々がなんとか保護して、不妊手術を続けていました。


 そういう子たちの1匹で、私の家で暮らすことになったのがレオン(メス、推定7歳)です。ライオンのように毛がフサフサした、とてもきれいな子です。でも保護されてきた当は、耳の中は真っ黒で、ダニまみれでした。いまの様子からは、信じられないような状態だったんです。


 野良猫生活が比較的長いほうだったからでしょうか、警戒心がとても強く、私も含めて人にはほとんど懐きません。捕まえようとしても、すぐに逃げてしまうのです。基本的に私の書斎で暮らしていて、日中はまず、ほとんど出てきません。


 前回ご紹介したテンちゃんことテンプルとは、本当に対照的です。エサをくれる人にだけは、「ミー」「ミー」ってかわいい声で鳴きながら、近づいていくんですが(笑)

 

気位の高い器量よし なぜか息子に懐いて

 最後の1匹はピリカ(メス、推定10歳)と言います。アイヌ語で美しい、かわいいという意味の名前です。この子は、ブラックスモークと呼ばれる種類のアメリカンショートヘア。来歴がちょっと変わっています。

 

 もともとアメリカ人の家庭で飼われていたそうですが、その一家が本国に戻る際、「処分してくれ」と動物病院に置いていかれてしまったんです。かわいくて器量の良い子なので、すぐに新たな飼い主さんが見つかったのですが、なんと言っても気位が高すぎて。おとなしくなでられていても、ちょっと気にくわないところをさわられると、カッとなってかみついてくる。そんなわけで、2度も私の家に戻されてしまいました。


 それで我が家で預かることになり、ある日、息子がリビングで昼寝をしていたら、おなかに乗ってきて一緒に寝始めたんです。なぜか息子にはかみつかず、お互いにとても気に入ったみたいで、そのまま飼うことになりました。


 好奇心が旺盛な子で、いつも家の中をうろうろしています。ただ相変わらず気位は高いですから、他の猫が寄っていこうとすると「猫のくせに何?」というような表情を浮かべて威嚇をする。自分のことを猫だと思っていないみたい(笑)。


 犬は散歩が命。この年になってくると、朝晩の散歩がなかなか大変で、もうしばらく飼っていません。というわけで最近は、すっかり猫派になってしまいました。

 

 

湯川れい子(ゆかわ・れいこ)

1936年東京生まれ。音楽評論家、作詞家。60年、ジャズ専門誌「スウィング・ジャーナル」への投稿が認められ、ジャズ評論家としてデビュー。作詞家としての代表作に「センチメンタル・ジャーニー」「六本木心中」「恋におちて」など多数。近年は平和、健康、教育、音楽療法などをテーマにボランティア活動に取り組んでいる。エンジン01文化戦略会議動物愛護委員長、TOKYO ZEROキャンペーン呼びかけ人

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この連載について
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