「悲しみよりも感謝があふれる」大野拓朗さん 愛犬から学んだ「今を生きる尊さ」

「小さなころから動物が好きでした。人間のゴミで生き別れになった南極ペンギンの親子の映像を見て、心震えたのは幼稚園のとき。それが『動物を幸せにしたい』という僕の思いの原点かもしれません」

 俳優の大野拓朗さんのもとに、1匹のミニチュアシュナウザーがやってきた! それは高校1年生のときだった。

(末尾に写真特集があります)

愛するほどに愛してくれる

左からジンジャー、デイジー

「彼がジンジャー。穏やかでのんびり屋で、人に触られるのが得意ではなくて。僕がぎゅーっとハグすると遠い目をして耐え忍び(笑)、そのあとトコトコどこかに行っちゃう感じ。ほかの犬にほえたりしないし、近所の猫にもよくけがをさせられて帰ってきてたな……」

 さらに2年後、同じ犬種をもう1匹迎え入れることに。

「彼女がデイジー。最初は真っ黒で手のひらサイズだったのが、成長とともに白くなって。人懐っこくておてんばで、なぜか僕の顔の上にあごを乗せてくる。そのあと脇にグイグイ入ってくるので、そのままよく一緒に寝てましたね」

 大野さんと2匹との関係に変化が出てきたのは、浪人生活に入ったときだった。

「朝、家族が仕事に出て行くと、この2匹はウオンウオンと鳴き続けるんですよね。それで『僕がいるよ。大丈夫でしょ?』と伝えに行くと鳴きやんで、僕の部屋に来て、ベッドでくつろいでいる。一緒にいる時間がうんと増えてから、この子たちが何を考えているのか、だんだんわかるようになってきました」 

 ごはんを食べるときの無垢な顔、散歩に行ったときの目の輝き……。かわいい癒やしの存在から、かけがえのない家族の愛おしさへ、気持ちが移り変わっていった。

ぬくもりに安心感と幸福感を感じた(大野さん提供)

「与える以上に与えてくれる。悪意がなくて美しい。ふたりから性善説を教えてもらいました。今でも思い出すのは、うたた寝から目覚めると首の横にデイジー、頭の上にジンジャーが寝ているという幸せな記憶。ふたりのぬくもり、ふたりの匂い。言葉にできない安心感と幸福感に満たされながら、また眠りに落ちたことをよく思い出します」

“今を生きる命”に涙がこぼれる

 愛を注いだジンジャーは2年前、そしてデイジーは2カ月前に息を引き取った。

 「デイジーの体調が悪化したのは、僕がアメリカに留学する昨年12月のこと。余命1カ月と言われていたのが、8カ月も持ちこたえて、僕が帰国便に乗ったその日に亡くなりました」

「帰って来ることがわかって安心したんだよ」「直接会って悲しい顔を見たくなかったのかも」など、いろんな人からいろんな捉え方を教えてもらった。

「ふたりの思い出は心の中に」

「悲しくて悲しくてたまらないけど、辛いわけではないんです。それは心の中に笑顔でいるふたりが鮮明に残っているから。何よりいまは感謝の気持ちでいっぱい。『14年間、最高に幸せな時間をありがとう』。いつもそう話しかけています」

 街中で犬が幸せそうに散歩しているのを見ると、その「今、一生懸命生きている姿」に感動して涙がこぼれるという。

「よかったね。たくさん遊んでね。おいしいものを食べてね。病気しないでね。ずっと元気でいてね……。そう心の中で語りかけているんです」

大野拓朗と犬
この日、初対面だったわんちゃんともすぐに仲よくなっていた大野さん

幸せな命を増やすのが使命

 俳優として、ひとりの人間として大きく羽ばたくべく、活動の場を世界に広げている大野さん。今回のアメリカ留学では、ペット文化についても発見があった。

「保護犬や保護猫が新しい家族に出会うまで、一時的に預かるフォスターというボランティアが盛んだったり、動物の体調管理を考えてごはんをオーダーメードできるショップがあったり。ペット文化が成熟しているという印象を受けましたね」

 大野さんは犬、保護猫の問題はもちろん、絶滅危惧種の保護活動ほか、動物界全体に興味があり、将来的に関わっていきたいと語る。

大野拓朗
「僕、心底、動物が大好きなんです」

「ジンジャーとデイジーを見送って悲しみに暮れている母親に、こう伝えたことがありました。もう悲しい思いはしたくない。そう思うかもしれない。でも、殺処分の可能性がある動物を1匹でも救って、幸せにできれば、そのほうが本望じゃないかな、と。いつかムツゴロウ王国ならぬ、拓朗王国がつくれればいいな。『動物を幸せにする』。それこそが、小さなころから変わらない、僕の夢なんです」

【チャリティーイベント みんなイヌ、みんなネコ】9月23日(水)のオンライン大譲渡会に大野拓朗さんがゲストで出演予定です。詳しくは特設サイトへ。

大野拓朗(おおの・たくろう)
1988年11月14日生まれ、東京都出身。2009年、第25回ミスター立教に選出される。2010年、映画『インシテミル〜7日間のデス・ゲーム〜』で俳優デビュー。2019年12月からは俳優修業のため単身渡米。新型コロナウイルス感染拡大抑制のためロックダウン(都市封鎖)されたNYでの生活を経験。 2020年11月9日~12月6日には、東京・渋谷「東急シアターオーブ」でミュージカル『プロデューサーズ』に出演予定。

(写真・中西真基/協力:カフェ・ファソン コーヒースタンド)

本庄真穂
編集プロダクションに勤務のち独立、フリーランスエディター・ライターとなる。女性誌、男性誌、機内誌ほかにて、ペット、ファッション、アート、トラベル、ライフスタイル、人物インタビューほか、ジャンルとテーマを超えて、企画・編集・ライティングに携わる。

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