収容した犬や猫たちを譲渡につなげるために 茨城県動物指導センターの取り組み

 茨城県中部に位置する「茨城県動物指導センター」(同県笠間市)。JR笠間駅から車で30分ほどの緑豊かなエリアにある。収容した動物たちを譲渡につなげようとする、同センターの取り組みを取材した。

(末尾に写真特集があります)

犬は大きさや性別で部屋を分ける

 同センターは、1979年に設立された。6946平方メートルの敷地に、管理棟や動物棟など、いくつかの建物が点在する。訪れた7月下旬には、犬108匹、猫127匹が収容されていた。

 まず、収容している犬たちの様子を見せてもらった。犬は大きさや性別により部屋を分けていて、相性がよい犬同士を同室にしているという。人懐っこく近寄ってくる犬や、静かにこちらを見つめる犬などさまざまだ。

動物指導センターに収容された犬
茨城県動物指導センターに収容されている犬たち

 子犬や小型犬は別棟の個室で過ごしており、個室の入り口に「怖がり」などと、書かれたメモがはられていた。職員や犬の世話をする嘱託職員が、気づいたことを書いているという。

 犬舎の外には、屋根の下のオープンスペースで、つながれたりサークルに入ったりして過ごしている犬もいた。私たちを見ると、興味深そうに近寄ってくる。職員によると、人に慣れるための環境作りの一環だという。

動物指導センターに収容されている犬
屋外で過ごしていた犬

 この中には、「ふれあい犬」として小学校を訪れる活動をしている犬もいた。命の大切さを伝える取り組みのひとつで、子どもたちに体を触らせたり心臓の音を聞かせたりしているという。犬舎の近くにはドッグランも設けられ、雨でも利用できるように、テントも張られていた。

 猫は、犬とは別棟の猫舎で過ごす。大人の猫の場合、基本的に1つのケージに1匹だ。猫が好む上下運動ができるようなステップが設けられたケージもある。猫エイズウイルスや猫白血病ウイルスが陽性の猫たちは、陰性の猫たちとは別の部屋で過ごす。

ミルクを飲む子猫
数時間おきに子猫にミルクを与える

 授乳が必要な子猫は、成猫とは別に1つの部屋に集められていた。授乳は数時間おきに行う必要があるため、職員が2交代制で世話を続けているという。

譲渡につなげるために

 かつて茨城県は、全国的にみて犬の殺処分数が多かった。過去10年では、犬の殺処分数は2010~2012年度が全国最多、2013~2016年度は全国でワースト2、3位。猫の殺処分数は2015、2016年度が全国でワースト12位だった(県の資料より)。

 こうした状況をうけて、茨城県は2016年に「茨城県犬猫殺処分ゼロを目指す条例」を制定。2017年度からは「犬猫殺処分ゼロを目指すプロジェクト事業」をスタートした。

こちらを見る子猫
子猫部屋で過ごす猫

 このプロジェクトは、殺処分ゼロを目指す環境整備として殺処分数の減少につながる取り組みを公募し、審査会で選定された取り組みに補助したり、地域猫活動を推進したりしている。

 また、譲渡をサポートする事業も行っていて、動物指導センターから犬猫を譲り受け、新たな飼い主を探す活動を行っている団体などに対し、飼育管理費の一部を補助。さらに動物指導センターから団体などに犬猫を譲渡する際に、希望に応じて不妊去勢手術を行っている。

柵でかこまれたスペースで過ごす犬
屋根のある屋外のオープンスペースで過ごす犬たち

 そして同プロジェクトで、今年度から新たに始まったのがドッグトレーニング事業だ。無駄吠えをしたり、人に慣れていなかったりなどの理由で譲渡先がみつからず、センターで長期間過ごしている犬について、ドッグトレーニングの講師を招いてトレーニングを受けさせ、より譲渡されやすくなることをめざす。今年4~6月に28匹がトレーニングを受け、16匹が譲渡されたという(ボランティアへの譲渡を含む)。

 同プロジェクトの他にもさまざまな取り組みを行っている。犬や猫を75の団体・個人の登録ボランティアに譲渡しており、その中には東京や埼玉で活動するボランティアもいる。人口が多い首都圏のボランティアとも協力することで、より多くの譲渡につなげる。

譲渡数が増加

 こうした取り組みを経て、茨城県の殺処分数は減少傾向にある。県の資料によると、犬や猫の殺処分数は、2009年度の7千匹以上から、2018年度には446匹に減った。
(2019年度から茨城県は殺処分の集計方法を見直し、「譲渡適正があると判断した」犬や猫を集計の対象としており、この基準によると2019年度の犬と猫の殺処分数はゼロ。2018年度以前の基準ならば、2019年度の殺処分数は犬が144匹、猫は424匹)

ケージの中の猫
ケージで過ごす猫

 犬や猫の譲渡数は、2009年度の991匹から2018年度には2269匹と、10年間で2倍以上に増えた。収容数は、2009年度は8479匹だったが、2018年度は2941匹と3分の1近くまで減少した。

 収容数や殺処分数が減ったことについて、同センター長の理崎清士さんは「ボランティアの方に協力してもらい、また県としても啓発などのさまざまな取り組みを続けてきて、その効果がみえてきたのではないか」と述べ、「この動物指導センターに来る犬や猫の数が減り、ゼロになるように変えていきたい。そのために、これからも譲渡や啓発を続け、終生飼養についても伝えていきたい」と話している。

sippo
sippo編集部が独自に取材した記事など、オリジナルの記事です。

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