「譲渡金って何?」 保護猫を送り出すには、お金がかかる現実
「保護猫」や「譲渡」という言葉が広まり、猫を飼い始めるなら保護猫をという人も増えてきました。その一方で、「保護された猫を譲渡してもらうのに、どうしてお金を要求されるの?」という疑問を持つ人もいます。なぜ無償ではないのか、保護猫が譲渡されるまでの事情を説明します。
保護猫は無償で譲渡される?
野良猫や飼育放棄された猫は、保健所など行政施設や、保護団体に一時保護されると、「保護猫」と呼ばれる存在になります。
保護猫の多くは、譲渡会や保護猫カフェなどを通じて希望者に譲渡されます。保護猫を紹介して譲渡先を募集するインターネットサイトもあります。
いずれで出会ったとしても、多くの場合、保護猫の譲渡を希望する人は、譲渡される予定の猫との相性を見るお試し期間「トライアル」を経て、正式譲渡となります。
この際、譲渡希望者は「譲渡金」(呼び名は団体等により様々)の支払いを求められます。この譲渡金について説明を受けると、中には「えっ! 拾った猫なのに、お金がいるの? 販売しているんですか」と驚く人もいるといいます。
確かに、ほとんどの保護猫は、販売目的にブリーダーが繁殖して育てた猫ではありません。屋外に野良猫の状態でいたところを、自治体職員や保護団体、個人ボランティアらによって捕獲されたりした猫です。だからといって、譲渡会などに出されるまでに、お金がかかっていないのかといえば、そんなことはありません。
保護猫にかかる費用とは
飼い主のいない猫が保護されてから譲渡に出されるまで、たくさんの医療的なケアや献身的な世話を受け、新しい家になじみやすいように大切に育てられます。
たとえば、伝染病予防のワクチン接種、ノミ取りの投薬、猫エイズや白血病といった感染症にかかっていないか確認する検査、年齢によっては不妊手術も受けます。けがや猫風邪など病気にかかっていれば、治療も必要になります。
そうしたすべての医療行為には、当然ながら費用がかかっています。これは保護した団体やボランティアが支払っているのです。保護猫を育てるのにかかる費用は、医療費だけではなく、毎日のフード代、トイレの砂などもかかります。
そもそも多くの保護猫を収容するには、シェルターの家賃、光熱費がかかります。離乳前の子猫の場合、数時間おきに猫用ミルクを飲ませる必要がありますが、これらは無償のボランティアらが担っています。
命のバトンを繋げるために
保護当時は野良猫だった猫が、見違えるように元気に、かわいくなって送り出されるまでには、医療ケアやお世話が欠かせないわけです。「譲渡金」とは、そうした飼育にかかった経費を、譲渡される側が一部負担する仕組みで、営利目的ではありません。
また、負担する「譲渡金」が、その後に保護を待っている野良猫たちを助ける費用にもなります。
大阪府八尾市で、一般社団法人「Happy Tabby(ハッピータビー)」を作り、猫の避妊去勢手術の専門病院も運営している橋本恵莉子獣医師はいいます。「命のバトンをつなげるため、譲渡金に対して、ぜひご理解とご協力をお願いします」
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