ちくわをもらって育った野良猫「ちくわ」 安住できる家を得る

中西家に来た日、ケージの奥から出てこなかった
中西家に来た日、ケージの奥から出てこなかった

 猫嫌いな人が多い地域で暮らしていた子猫がいた。追い払おうとする人も多く、子猫を産んだのを機に保護された。猫はすっかり警戒心の塊になっていたが、安住できる家を得て、飼い主に静かに見守ってもらっている。

(末尾に写真特集があります)

成長し、子猫を連れてきた

 子猫の「ちくわちゃん」は、兵庫県淡路島の住宅地の一角で暮らしていた。その地域は猫嫌いの人が多く、野良猫は厄介者扱いされ、安心して暮らせるような場所ではなかった。

 その中に猫のことを気にかけている人もいた。だが、家族みなが重度の猫アレルギーで、家では飼えなかったのだという。ちくわちゃんにも、なんとか食べ物をあげようと思ったが、警戒心が強く、なかなか寄ってこなかった。そこで、くわえて逃げられる食べ物をと考えて思いついたのが、ちくわだった。ちくわを置いておくと、ちくわちゃんはさっとくわえて逃げて行き、どこかで食べていた。そんな日が1年くらい続いていた。

 ある日、成長したちくわちゃんが子猫を2匹連れて来た。ちくわをあげていた人は「こんな所にいては何をされるか分からない。かわいそうだ」と思い、保護団体「淡路ワンニャンクラブ」に保護を依頼した。2019年8月29日、ちくわちゃんと2匹の子猫は捕獲器を使って保護された。

潜るの大好き、きょうはお姉ちゃんのスカートの中
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「生きていてもいいですか」

 京都府に住む中西さんは2019年7月、一緒に暮らすパートナーが連れてきた猫「シンくん」を腎不全で亡くした。

「猫は2カ月で転生するという話を本で読みました。シンが亡くなって5カ月、生まれ変わりだと思える猫と出会いたいと思って譲渡サイトを見て、ちくわに出会ったんです」

 譲渡サイトでちくわちゃんを見つけた時、その紹介文に心を打たれた。「生きていてもいいですか」というセンセーショナルなタイトルで、淡路島の野良猫が置かれている過酷な環境について書かれていた。

 中西さんは「人慣れしていなくてもいい、温もりあふれる環境で暮らしてほしい」と思ったという。

 その年の12月15日、中西さんは淡路島までちくわちゃんに会いに行き、自宅に脱走防止柵を設置する工事に取りかかった。脱走防止柵は、偶然仕事先で出会った建具屋さんが好意で作ってくれた。建具屋さんも4匹の保護猫を飼う猫好きだった。

 ちくわちゃんが産んだ2匹の子猫は京都に住む人が引き取ったという。

先住猫の金閣ちゃん、「家猫修行頑張ってる?」って言われたよ
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ケージの外でくつろぐ日を夢見て

 年末年始の連休の前、12月21日に中西さんはちくわちゃんを自宅に迎え入れた。

「淡路ワンニャンクラブ」にいた時は、臆病なちくわちゃんがベッドでくつろいでいる姿を見た人はいなかったと聞いていた。家に来ても、ちくわちゃんは、トイレとケージの間の狭いすき間に入り、少し触れただけでも、ガクガク震えていた。

 2月初旬、とにかくなれてもらおうと、ちくわちゃんをなでていたら、失禁してしまった。

「それ以来、とにかく見守るスタイルに変えました。指にチュールをつけると、なめてくれるので、それがスキンシップだと思っています」

 中西さんは、ちくわちゃんがケージから外に出て、日向ぼっこする日を夢見ている。いつ出てきてもいいように、ケージの扉は開けてある。

渡辺陽
大阪芸術大学文芸学科卒業。「難しいことを分かりやすく」伝える医療ライター。医学ジャーナリスト協会会員。朝日新聞社sippo、telling、文春オンライン、サライ.jp、神戸新聞デイリースポーツなどで執筆。FB:https://www.facebook.com/writer.youwatanabe

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