セラピー犬増えず、NPO苦慮 飼育数減少、新型コロナの影響も
高齢者や病気の人と触れ合い、癒やしの時間を届ける「セラピー犬」。北海道内でも20年以上の活動実績があり、病院などからの派遣要請は増えているが、セラピー犬の登録数はなかなか増えず、対応に苦慮しているのが実情だ。新型コロナウイルスの感染拡大も影を落としている。
2月下旬、釧路市内の高齢者施設「シルバーシティときわ台ヒルズ」を、大型犬グレートピレニーズの「蘭」と飼い主の佐々木以保子さん(75)が訪れた。蘭は釧路・根室地方では唯一のセラピー犬で、この日は月例の訪問日だった。
蘭がロビーに並んだ車いすの入居者15人に近づくと、88歳の女性は「かわいいね。優しいね。いくつになったの?」と声を掛けながら、体をなでた。女性は普段はほとんど話すことがないというが、歩き出す蘭を車いすで追いかけるそぶりすら見せた。「蘭ちゃんが来ると皆さんの顔つきが変わります。自分の子どもを見守るかのような人もいますね」と、園長の加賀谷功さんも目を細める。
蘭は昨年、NPO法人「北海道ボランティアドッグの会」のセラピー犬適性検査に、釧路・根室地方で初めて合格した。同会は道央を中心にセラピー犬の施設訪問活動をしている団体で、適性検査は1997年以来、春秋の年2回、おもに酪農学園大学(江別市)で行ってきた。
ただ、道内のセラピー犬の登録数は減少傾向にある。2015年春の154匹をピークに、現在は112匹に。セラピー犬は飼い主がボランティアとして登録に協力しているが、「人口減とともにペットの飼育数も減少している。若い世代は共働きが多く、活動に参加しづらいのも背景にある」と、同会の高瀬忠則事務局長は分析する。
現在は適性検査の会場が江別1カ所だけなので、登録犬の分布と活動地域も道央中心に偏ってしまうという。「訪問活動は公的補助の対象にならないし、会員の交通費も出ない。施設からの要望は増えているが、現状では道内全域での対応は難しい」と高瀬さん。
それでも、蘭の釧路での活動が地域の愛犬家たちに広まり、今月28日の適性検査には、釧路地方から新たに2匹の申し込みがあったという。しかし、新型コロナウイルスの影響で検査は中止に。セラピー犬の各地での施設訪問活動も、中断を余儀なくされている。
蘭の飼い主の佐々木さんは「他の施設からも要望はあるが、蘭だけでは難しい。後継が出てくれないかと切実に思います」と話す。同会は秋の検査では申し込みが増えることに期待して、準備を進めているという。
(宮永敏明)
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