セラピードッグの派遣広がる 病院や施設で犬とふれあい

セラピードッグ「ハニー」との触れ合いを楽しむデイサービスの利用者=松戸市
セラピードッグ「ハニー」との触れ合いを楽しむデイサービスの利用者=松戸市

 触れ合うことで癒やされたり病気の症状が改善したりするといわれるセラピードッグ。千葉県内でも短時間の派遣をしてもらう高齢者施設や医療施設などが増えてきた。松戸市には常駐させるデイサービス施設も現れ、「通うのが楽しみ。心も体も元気になる」と利用者に好評だ。

 2017年に開業した「デイサービスワンケア常盤平」。2階建ての一軒家で、要介護認定を受けた約10人のお年寄りが体の機能回復のため体操やレクリエーションなどをして過ごす。一番の楽しみは、ラブラドルレトリバーの「ハニー」と触れ合うことだ。

 朝、利用者が通ってくると真っ先に出迎える。なでられるとうれしそうにしっぽを振る。お座りやちんちんをしたり、一緒に散歩したりとまるでペットだ。ハニーはほえたりかんだりせず、飛びつきもしない。散歩では利用者におとなしく従うという。

セラピードッグ「ハニー」との触れ合いを楽しむデイサービスの利用者=松戸市
セラピードッグ「ハニー」との触れ合いを楽しむデイサービスの利用者=松戸市

盲導犬の訓練受けた犬も

 施設を運営する会社の社長、遠藤正憲さん(48)によると、セラピードッグの公的な資格は定められていない。ハニーは2年間の盲導犬の訓練を受けたが、他の犬が苦手で盲導犬になれなかった。その能力を生かそうと中部盲導犬協会(名古屋市)から借り受け、昨年6月から常駐させているという。「人に危害を加えることはないので常駐させても安心」と話す。

 盲導犬の訓練を受けたセラピードッグは国内に3頭だけで、遠藤さんの会社が松戸市内で運営する別の施設にも1頭いるという。

「ハニーがいるからみんな喜んで通って来る。表情のなかった人が笑うようになり、ご家族が驚いたこともある」とスタッフの杉山映美さん(44)。利用者が何事にも積極的になり、認知症の予防や回復にもつながっているという。

 週3回利用するという渡辺のり子さん(87)は「疲れたときでもハニーに会うと元気になり、一日が充実する。ハニーの力はすごい」と笑顔を見せる。

訪問依頼が急増

 県内にはセラピードッグを派遣する団体などもいくつかある。その一つ、千葉市のNPO法人「アニマルセラピーwithワン」は登録している30頭ほどを首都圏の老人ホームやグループホームなどに派遣している。事業を始めた15年には10回程度だった訪問依頼が、昨年は県内外で計180回ほどになったという。

 料金は、30人までだとセラピードッグ5、6頭と同人数のスタッフが40分間滞在して3万円。代表の佐藤志保さん(47)は「経営は苦しい。でも、とにかく喜んでもらえるのでやりがいがある」と話す。

セラピードッグと触れ合うがん患者=山武市のさんむ医療センター、佐藤志保さん提供
セラピードッグと触れ合うがん患者=山武市のさんむ医療センター、佐藤志保さん提供

 病院からの依頼も増え、17年からは同県山武市にある「さんむ医療センターかんわケア病棟」を年に数回訪れている。セラピードッグとの触れ合いでがん患者が明るくなり、普段はしゃべらない患者もセラピードッグやスタッフには話しかけてくるという。

 佐藤さんは「精神疾患の治療にも効果があるといわれているので、多くの病院を訪れてセラピードッグの力をもっと発揮できるようにしたい」と意気込んでいる。
(三国治)

朝日新聞
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