「犬や猫は家族」なら、福利厚生も人同様に 企業に拡大中
近年、犬や猫は家族として扱われるようになった。家族だとすれば、人同様の福利厚生の仕組みがあってもおかしくはない。ペット関連業界をはじめ、ペットを家族として、家に迎えた時のお祝い金や弔慰金、ペット休暇や忌引休暇などを認める会社が出始めている。
「ペットは家族の一員」の考えから
日本で最初にペットの慶弔制度を設けたとされるのは、ペットフードの「日本ヒルズ・コルゲート」。“ペットは家族の一員”との考えから、2005年11月に「扶養ペット慶弔規程」を定めた。
犬や猫を飼い始めた社員が、扶養ペットを会社に届け出ると、1匹につきお祝い金1万円と自社製フード3~4キロが贈られる。飼っている犬や猫が亡くなった時は、弔電が送られ、弔慰金1万円が支給され、忌引休暇1日が有給で認められる。
マーケティング本部の宮崎さんは7年前に愛猫が亡くなった際に忌引休暇を利用し、「きちんとお別れをする時間を持つことできてありがたかった」と話す。
一方、ペットフードの「マース ジャパン リミテッド」も2005年に「ペット同伴制度」、2009年に「ペットの慶弔制度」をとりいれた。ペットを飼い始めると、お祝い金が支給され、有給休暇が1日取れる。また、ペットが亡くなった時には、お見舞い金が支給され、有給休暇が一日取れる。制度が使えるのは、事前に登録した2匹までで申請制だ。
経理担当の鈴木さんは2年前に20歳の猫「ミー」を見送った。社会人になって飼い始め、「親よりも長く過ごした」存在だったという。
「亡くなった翌日が祝日だったので、夫と一緒に荼毘にふして、その次の日を慶弔休暇にして2日続きの休みにしました。気持ちが落ち着きましたね」
マーケティング担当で獣医師の津田さんも2年前9月、ビーグル犬の「ソフィ」を悪性腫瘍で失った。12年来の相棒だったという。
「日曜に亡くなって、移動車で火葬して月曜に慶弔休暇を取り、火曜から出社しました。空を見上げて、あの子のことを思い出して……しばし仕事から離れることで、心の整理ができました」
最期の時間をゆっくりと、旅行での利用も
忌引以外に使うペットの休暇を導入している会社もある。
ペット保険の「アイペット損害保険」は2016年から犬と猫の「ペット休暇制度」をとり入れた。翌2017年以降には鳥、ウサギ、フェレットなど動物の対象を広げた。
認める休暇は「ペット忌引」と「ペット休暇」の2つ。
犬と猫の場合、「ペット忌引」は犬と猫が年3日(1年1匹)、同居するペットが亡くなった際に休暇を取得できる。一方「ペット休暇」は、犬猫は年2日、それ以外(鳥、ウサギ、フェレットなど)の動物については年1日、ペットと過ごすための休暇を取得できる。
「ペット休暇は通院の付き添いや看病、お祝い事の出席など慶弔ごとに広く活用されています」(広報担当者)
昨年度のペット休暇制度の利用者は、ペット忌引が12人、ペット休暇は73人いた。
「忌引が3日あることで、ペットとの“最期の時間”をしっかり過ごすことができたという声が多いですね。危篤になってからペット休暇を使って看病し、亡くなった後は、ペット忌引きでお通夜と葬儀を行ったという使い方もありました」
ペット休暇を、“楽しい時間”に使うケースも多い。ウエルシュコーギーと暮らす社内獣医師の女性は、日帰りのお出かけに利用した。
「家族みんなで、車で群馬や茨城のひたち海浜公園にいったりして楽しんでいます。昨年の夏は、埼玉の公園に行きました」
ペット関連業界以外にも拡大
ペット関連以外の会社にも、ペット関連の福利厚生制度は広がりつつある。
恋愛・婚活マッチングサービス「Pairs(ペアーズ)」を運営する会社「エウレカ」は2016年から、ペットに関する福利厚生プログラムを導入した。同社は従業員140人で、猫を飼う人が10人、犬を飼う人は3人(2020年3月時点)と、人数は多くはないが、制度は「やむを得ない理由がある場合、ペット連れ出勤可」「ペットが死亡した際の休暇2日」「病院に連れて行く際に利用できる半休を年3回取得可能」としている。
労務担当の西川従さんは「副代表である姉が、ジョブス(通称ジョブさん)というメスのコーギーを飼っていて、以前は毎日散歩がてら通勤して、CDO(Chief Dog Officer)として社員を和ませていました。社員からも『家に置いておけない時に犬を連れていきたい』などの要望があり、生まれた制度です」と制度導入の背景を説明する。
ペット連れ出勤は、1週間前に犬種と時間をビル管理会社に申請し、荷物搬入口から入って、会議室で飼い主とともに過ごす仕組みだ。病気で家に1匹で置いておけない、家が工事でうるさいなど、「理由」が必要だが、小型から大型犬までさまざまな犬が来るという。
犬連れ出勤で「他の社員にもいい影響がある」と広報責任者の下村友香さんはいう。
「みんなが見える場所にペットはいるので、社員がお手洗いなどに移動する際にそこに寄り、犬と触れあってリフレッシュする社員もいます。みな笑顔になりますね。ペットの忌引を利用した社員はまだ1人だけですが、休みの間にきちんとお別れができたと話していました」
同社は子どもの看護休暇として「子1人につき年12日」等を認めているが、今後、ペットの看護休暇も充実させたいという。
「ペットは子どもと同じですし、月に1回くらいの半休があれば安心かと思います。『今日は犬や猫の具合が悪いので半休を』と気軽にいえる雰囲気を根付かせたいですね」
いずれは「フードの割引やペット保険の紹介なども検討したい」としている。
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