トイレが流せない、散歩も我慢 愛犬家が地震・液状化で困った事

震災から8日後、久々にゆっくり散歩ができたときの愛犬の写真。近隣の泥かき作業に追われ、しばらくはなかなか時間を取ってやれなかった
震災から8日後、久々にゆっくり散歩ができたときの愛犬の写真。近隣の泥かき作業に追われ、しばらくはなかなか時間を取ってやれなかった

 東日本大震災の際、首都圏の埋め立て地や地盤の弱い地域が苦しめられていたのが、液状化現象だ。筆者もその被害にあった。当時、わが家には犬1匹、猫2匹がいたが、困ったことがいろいろあった。そこで今回は、実体験から「ペットと液状化対策」について考えてみたい。

水が流せず、1日中トイレのことを考える毎日

 地震発生当時、筆者は東京・代々木にあるオフィスにいた。通勤路線の電車はすべてストップしたが、動物たちだけで留守番させていたこともあり、千葉県浦安市にある自宅まで、約5時間かけて徒歩で帰宅した。

 日付が変わる直前に帰り着いたが、隣駅にさしかかったあたりから、道路がうねうねと波打ちアスファルトが裂け、地中から噴出した水と土砂で一帯が沼のようになるなど、街の様子が一変していた。自宅マンションも駐車場が陥没し、建物との境に大きな段差ができていた。

 幸い、家の中の被害はほとんどなく、動物たちも全員無事だったが、恐怖からか、猫の1匹は翌日昼ごろまでソファの下から出てこず、ご飯を食べようともしなかった。それでも、夫も帰宅し全員そろったこともあり、震災当日の夜は「これ以上悪くはならないだろう」と安堵していた。

マンションのこの段差は、もともと10センチ程度だった
マンションのこの段差は、もともと10センチ程度だった

 大変だったのは、このあと。震災直後は普通に出ていた水が、翌日昼ごろから出なくなった。さらに、翌々日には追い打ちをかけるように、市から「水を流してはいけない」というお達しが。液状化で、地中に埋めてある上下水道の配水管がズタズタに破損してしまったためだ。

 全国の水道局と自衛隊の給水支援のおかげで、ありがたいことに飲み水の確保はさほど大変ではなかったが、風呂や洗濯ができないのはもちろん、トイレも一切流せない。

学校のグラウンドなどに設置された仮設トイレで用を足すこと自体はできたが、トイレのたびにいちいち外出するのは思いのほか負担で、極力水分を取らないよう注意し、1日中トイレのタイミングをはかることが、日に日に苦痛になっていった。

愛犬の散歩コースのひとつだった近所の公園。巨大な地割れが
愛犬の散歩コースのひとつだった近所の公園。巨大な地割れが

砂嵐のなか、ホコリまみれで愛犬と散歩

 ペット、とりわけ愛犬のフレンチ・ブルドッグにもしわ寄せがあった。道路はあちこち裂け目や段差ができているうえ、土砂とともに噴き出した貝殻の欠片が大量に散らばっている。裸足で歩く犬は足をケガする危険があり、しばらくは外出をひかえざるを得なかった。

 人が歩ける程度に土砂が撤去されたころにはぬかるみも乾いてきたが、次に悩まされたのが、視界が効かなくなるほどの砂嵐。フレブルは目が大きく、ホコリが入りやすい。散歩中、大量に涙と鼻水を流す愛犬の顔を、いつもよりこまめに拭きながら歩いた。

震災から約3週間後、道路脇にはまだ土砂が。これが砂嵐のもとになる
震災から約3週間後、道路脇にはまだ土砂が。これが砂嵐のもとになる

 また、ペットのトイレ問題も厄介だった。わが家ではペットの“大きい方”はトイレに流して処理していたが、当然それもできない。苦肉の策として、処理ができるようになるまで、ペットの排泄物をウンチ袋に入れ風呂場に溜めておかざるを得なかった。

 結果として、わが家の地区は被害に遭った地域では比較的早く復旧し、水が出るようになったのは震災から約1週間後、下水道の仮復旧でトイレだけは流せるようになったのが、およそ10日後だった(ただし、トイレットペーパーを流すのはNG)。

 さらに、大量の水を使うシャワー・風呂・洗濯は、試験的にマンションの棟ごとに2~3日に1回の輪番制で解禁になったのが3月下旬。しばらくそれで様子を見て、ようやく全面解禁になったのは、ゴールデンウィーク前後のことだったと記憶している。今にして思えば大した期間ではないが、当時は果てしなく長く感じた。

「どうして?」見慣れた散歩コースの変わりように、犬も戸惑って見えた。よく見ると目が充血気味
「どうして?」見慣れた散歩コースの変わりように、犬も戸惑って見えた。よく見ると目が充血気味

ペットと液状化対策 やっておきたいこと5選

 大規模震災が起きれば、埋め立て地の多い首都圏などでは、きっとまた液状化が起きる。そのときのために、当時「あってよかった、あればよかった」と思ったことを、書き記しておきたい。一般的なペットの防災グッズの内容とかぶる部分も多いが、危険のある地区に住んでいるペットオーナーは、参考にしてみてほしい。

・トイレタリー用品は、人のためにも多めに備蓄を

 ペットシーツや猫砂類は吸水性が高いので、人のサバイバルトイレの資材としても活用できる(実は筆者も数回ペットシーツでしのいだことが)。ペットのトイレタリー用品は当時品薄になったと記憶しているので、多めにストックしておくと安心だ。

・シャンプータオルやドライシャンプーも忘れずに

 砂嵐のなか散歩に行くと、帰宅した時には愛犬の体がホコリまみれになる。短毛のフレブルはぬれタオルで拭けば済むが、より汚れやすい長毛犬種と暮らすご近所さんは風呂に入れられず困っていた。シャンプータオルや洗い流し不要のドライシャンプーを備蓄するとよいだろう。

・ゴーグル、マスク、帽子は散歩の必携3点セット

 散歩に行けば、飼い主も当然砂をかぶる。普通のメガネでは目をカバーしきれず、砂が入ってつらいので、かけるならゴーグルか、花粉症対策用のゴツめのメガネがベター。口と鼻にはマスク、ホコリまみれになりやすい髪は帽子で防護することもお忘れなく。砂嵐はかなり長いこと続いたので、この3点セットは普段の外出にも重宝した。

・トイレトレーニングはやっぱり大切

 前述のとおり、被災後しばらくは、気軽に散歩に行けない場合がある。外でしかトイレをしない犬は、ペットシーツでできるようにしておくことが必須だ。室内でも排泄できる犬は、さらにレベルアップして「トイレ」「ワンツー」などのかけ声に合わせ、排泄させるトレーニングに挑戦するのもおすすめだ。

・犬の靴、履けるようにしておくと安心

 悪路を歩かせる時は、やはり愛犬が足をケガしないか心配だったので、万が一のときに応急処置ができるものを準備しておくことも大切だと痛感した。何を準備すればいいかは、こちらの記事も参照していただきたい。できるなら、靴を履くトレーニングをしておくといいかもしれない。

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sippo
sippo編集部が独自に取材した記事など、オリジナルの記事です。

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