犬や猫も一緒に避難できる体制を 福島で救助活動をした大網さん

洗濯ネットで猫を捕まえた大網さん(2011年撮影、大網さん提供)
洗濯ネットで猫を捕まえた大網さん(2011年撮影、大網さん提供)

 2011年3月11日に起きた東日本大震災、そして東京電力福島第一原発の事故で、犬や猫も被害を受けました。震災の約3週間後から福島に通い、犬や猫を救助した「おーあみ避難所」の大網直子さんに、当時の様子と、いま思うことを聞きました。

――どんな経緯で、福島でのレスキューを始めたのですか?

 震災時、私は個人で犬や猫の保護活動をしていました。地震だけでも大変なのに原発事故が起きて、犬や猫たちのことがとても気になり、情報を探していたんです。福島県出身なので、特別な思いを持っていました。

 そんな時、ジャーナリストの山路徹さんがツイッターで、福島の犬や猫を助けに行くと発信されているのを知りました。3月30日のことです。マンパワーで1匹でも多く助け出したいと思い、車もケージもリードもあります、と山路さんに伝え、翌31日に福島に行きました。

 1日限りのお手伝いだと思って行ったのですが、福島に着くと、犬がもう、想像がつかないぐらいたくさんいて、どこに行っても、わあっと出てくるんです。とにかく助け出そう、というのが始まりで、そこから福島に通いつめることになりました。

救助した犬たち(2011年撮影、大網さん提供)
救助した犬たち(2011年撮影、大網さん提供)

 そうこうするうちに、犬の姿を見かけなくなり、すると猫がちょろちょろと姿を見せるようになりました。じゃあ猫を捕まえようと、今度は捕獲器をたくさん持って行きました。その後、だんだんと救助する犬や猫の数が減ってきて、訪れる間隔をあけながらも、2年半ぐらい福島に通いました。レスキューした数は、犬猫を合わせて300匹は超えていると思います。

――印象に残っている出来事を教えてください。

 3月31日、最初に福島に行ったとき、あるお宅に犬がいて、トントンとノックしたら、ヘルメット姿の飼い主のおじいさんが出ていらっしゃった。犬がかわいそうだから餌をやりに来たとおっしゃるんですね。このワンちゃんをずっとここに置いておいたらかわいそうだから、この子に譲渡先をみつけてあげませんか、と言ったら、おじいさんが眼鏡を上げて涙をぬぐいながら「そうだな、しかたねえな。犬のためだな」って。いまでも思い出すと涙が出ます。よっぽど可愛くて、苦渋の選択だったのだろうと。

救出した猫ハナちゃん(2011年撮影、大網さん提供)
救出した猫ハナちゃん(2011年撮影、大網さん提供)

 次に助けたのが猫の「ハナちゃん」でした。飼い主さんから山路さんのところに依頼があって、家に向かったんです。ハナちゃんのお宅に入ったとき、地震でいろんなものが倒れて散乱しているなかに、袋が破れたホットケーキミックスがあったのが印象的でした。おそらく猫のハナちゃんが、破ったのだろうと思います。猫が食べるはずもないものなのに、食べ物を探していたんだろうなって。ハナちゃんはレスキューし、その後飼い主さんの元に戻りました。

――救助した犬や猫たちの様子はどうでしたか?

 車を降りた私のもとに、犬たちが駆け寄ってきたことがありました。私はしゃがんで両手を広げて、体の前にフードを置いて待っていました。すると寄ってきた2匹の犬は、フードでなく、広げていた腕の方に飛び込んできたんです。お腹もすいていたと思うけど、人恋しかったのだと思います。なでてほしいと。その2匹は救助しました。

 日常の保護活動で、犬を保護したり、預かったりして車に乗せると、犬は緊張した面持ちになります。でも福島で保護した犬たちは、車の中で眠るんです。もう放浪しなくていいと感じるんでしょうね。

車にぎっしりと積まれたフード(2011年撮影、大網さん提供)
車にぎっしりと積まれたフード(2011年撮影、大網さん提供)

 福島で助けて、シェルターで保護している猫がいました。その猫はいつもクッションの下に潜り込んでいるんです。ある日、その子の飼い主さんが分かって、横浜のシェルターまでお迎えに来たことがありました。

 飼い主さんがシェルターの玄関に入って、話し声が聞こえたら、その猫が今まで聞いたことがないトーンの声で鳴いたんです。飼い主さんの声を聞いて、あっ、迎えに来てくれたって思ったんでしょうね。もう、あれは感動で。猫も、飼い主さんのことをちゃんと分かっているんですね。

 救助活動を通じて、あんなにも犬や猫が飼い主さんのことを思っているんだな、というのは強く感じました。飼い主からの一方的な愛だけじゃなくて、犬や猫からも愛されているんだと。犬や猫にも感情がある。フードをあげていればいいということではなく、声をかけたり、なでたり、ということがとても大切なんだと思います。

――福島での救助経験から、どんなことを感じましたか?

 私は犬や猫を助けたいと思って福島に行くんですけど、犬や猫を助けると、結果として飼い主さんの心もケアできたというのが印象的でした。置いて行かざるをえなかった飼い主さんたちは、想像以上に罪悪感を持っている。仕方がなかった、という言葉ではすまされないんです。

 飼い主にとっては家族だから、やっぱり犬や猫も一緒に避難させてあげないと、本当に助け出したことにはならないんだな、と。命を助けられた後、生きて行くには、メンタルをケアしてあげなければいけないから。

 震災を教訓にして、学んだことをいかしていかなければならないと思っています。環境省は同行避難を推進していますが、昨年10月の台風19号の際には、避難所でペットの受け入れが断られるということがありました。非常に残念だと思います。一緒に避難できる体制が必要です。

大網直子さん
大網直子さん

――最近も、福島に行かれたそうですね。

 福島でお世話になった獣医師さんから、譲渡先を探している猫を引き取ることはずっと続けています。先日、福島を訪ねた際には、その獣医師さんにお会いしたり、南相馬の猫ボランティアさんのお宅にお邪魔したりしてきました。

 いま、沖縄や香川などの猫を助ける活動もしています。なんでわざわざ、と言われることもあるけれど、縁を感じたところを、助けたいと思ったところを助ける、でいいんじゃないかと思っています。出身地だったり、たまたま見てしまった、この猫が気になった、そういうことでいいと思うんです。場所にとらわれることなく、1匹でも救うことが大切だと思っています。

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