3本足で猛ダッシュ! 元繁殖犬「すずちゃん」お米農家の一員に
長野県でお米農家をしている小林さん(67歳)が動物愛護団体から譲り受けたトイプードルのすずちゃん(推定7、8歳)は、3本足で暮らしている。もともと、繁殖犬としてブリーダーのもとにいたのだが、おそらく劣悪な飼育環境下だったのだろう。右後ろ脚が骨折したまま放置され、折れ曲がった状態で固まってしまった。地域の動物愛護団体が保護したのは、それからしばらくしてからだった。
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もう一度犬と暮らしたい
すずちゃんが小林さんのうちにやってきたのは、2019年の7月。小林家は過去にも野良犬、捨て犬、野良猫などいつも犬や猫がいた。だが、1年前に甲斐のミックス犬を亡くして以来、犬を飼おうという雰囲気にならなかったそうだ。
「ある日、息子の知人の方に『甲斐犬が産まれたからどう?5万円で』と聞かれて。犬を買うという感覚がもともとなかったのでお断りしたんですが、その出来事をきっかけに、もう一度犬と暮らしたいという気持ちが芽生えたんです」と小林さん。
「それなら保護犬から探そう」と提案したのは、小林さんの息子の妻・あきさんだった。隣接した一軒家に住んでいる。「お義母さんの年齢は譲渡条件に合わないかもしれなかったのですが、私も以前、16歳でみとったトイプードルと暮らしていたので、お義母さんに万が一ということがあっても、私がいるから大丈夫かなと思って」
元繁殖犬すずちゃん、3本足で疾走
心強かった。あきさんがスマホを駆使して、動物愛護団体や譲渡会をたくさん探してくれた。いざ連絡しても返答がなかったり、譲渡会場が遠いなど、事はスムーズに進まなかったが、縁はやってくる。インターネットで見た、気になった子について愛護団体に連絡したところ「ぜひ会いにきてください」と快諾。結局これが、気になった子“じゃない方”の、すずちゃんと出会うきっかけになった。
「最初に気になった子も人懐こくて良かったんですが、室内で飼うので毛が抜けない犬種がいいなと、ふと思って。そしたらそこにすずちゃんがいたんです。団体の方は脚のことを懸念されていたけど、私はなんとなく運命を感じて」と、小林さんは意外とあっさりとしていた。
すずちゃんの脚については「まったく気になりませんでした。実際にうちに来てからも。気をつけていることといえば、けがしないように体重管理をするくらい。最近は猛スピードで走るので、滑らないように敷物を敷いています」
すずちゃんが猛スピードで走る?取材中、小林さんに抱っこされてもなお、緊張していたすずちゃん。隣で元気に遊ぶ3人のお孫さんたちの声にもビクビク。この子が3本足で?
くっついて寝ていたくて
「おとなしかったのは最初だけ。3カ月後には、玄関のチャイムにワンワンワンー!とほえるようになり、私がソファに寝そべると飛び乗ってくるまでに。その辺は問題ないんですが、寝るときがちょっとね……。
毎日すずちゃんは私の布団に潜ってくるんですが、どこかしら体が触れていないとイヤなようで。でも私は小さなこの子をつぶしてしまうのではと心配で心配で。横へ避けるんですが、またひっついてくる、その繰り返しで、いつの間にか私は布団から追い出されちゃうんです(笑)」
犬生初のドッグサロンへ
小林さんにとっては、初めての小型犬との生活。慣れない体験がしみじみうれしそうだった。一方のすずちゃんはというと、昨年、犬生初のドッグサロンでのトリミングを経験した。サロンでの様子から「人より動物好き」ということが判明。おもちゃは興味なし。
“お散歩”も知らなかったため、外へ出てもすぐ引き返してしまう。トイレについては、ケージにトイレシーツを敷いて教えたら、今ではだいぶ上達した。小林さんいわく「夫にもう少し慣れて欲しいんですけどね」。どうやら男の人が怖いようだ。
2.5kgという小さなすずちゃんの新たな趣味は、おそらく“お母さんのストーキング”だろう。小林さんが「好きなものは、たぶん私だと思います。そして好きなことは、私と一緒にいて、遊んでもらうこと」と言うように、常にすずちゃんは小林さんのあとをついて回っている。
「畑仕事から戻ると玄関で待っていたり、本当に3本足かと疑うほどの勢いでよろこんで迎えてくれる姿はとってもうれしい。大好きです。この歳になって、こんなにも自分を慕ってくれる存在ができたことに感謝。あと何年一緒にいられるかわかりませんが、大切にし、楽しく過ごしていきたいと思っています」
小林さんの家の窓から見えるのは畑と山々、ここは長野県でも自然あふれる山深い地域だ。冬は雪が降り寒さは厳しいが、すずちゃんがのびのび、イキイキ過ごせるあたたかい家族がいつも側にいる。
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