犬の爪、歯、耳、目のお手入れ法 ストレスを与えず健康を守る 

 伸びた爪で肉球を傷つけたり、歯周病になったり……。犬にずっと健康で長生きしてもらうには、爪、歯、耳、目の周りのケアも大切です。日頃からお手入れをしていると、早めに異変に気付き、病気の予防にもつながります。大変そうですが、ちょっとしたコツで、犬にストレスを与えずに上手にケアができます。(監修:若山正之獣医師、「まるごとわかる犬種大図鑑」より)

根気よく犬を慣らせば、結果的にラクにお手入れできる

 犬は知らないものや見たことのないものに対して警戒心を抱きます。一度も見せたことのないツメ切りを出し、ムリに押さえつけて切ると、犬は「ツメ切り=嫌なもの」と関連づけて覚えます。すると次回からは、ツメ切りを見ただけで逃げるようになります。

おやつを使って少しずつ犬を慣らす
おやつを使って少しずつ犬を慣らす

 お手入れでもっとも大切なのは徐々に慣らすこと。たとえばおやつを用意してツメ切りのあとにあげれば、ツメ切りとおやつが関連づけられ、最終的におとなしくツメを切らせてくれるようになります。面倒なようですが、毎回、犬を追い回すよりは、ずっと効率的な方法です。

犬に慣れさせるため、ツメ切りは少しずつ

 トリミングサロンに任せる飼い主さんもいますが、コツさえつかめば自宅でもツメ切りができます。やり方をおさらいしておきましょう。

 犬のツメには神経と血管が通っているので、安全にツメ切りをするポイントは一気に深く切り過ぎないことです。最初はツメの先を整える程度で十分。また、はじめて行う場合は、犬がツメ切りを嫌いにならないよう、少しずつ慣らしながらやることも大切です。初日はすべてのツメを切ろうとせず、ツメ1本から始めてみましょう。

少しずつ切って、断面にうっすら血管が見えたらやめる。角を整えて終了
少しずつ切って、断面にうっすら血管が見えたらやめる。角を整えて終了

(1)犬のツメの断面を見ながら、少しずつカット

 イラストのように、犬のツメは、神経と血管を包み込むような構造になっています。最初はツメの先をほんの少しだけカットする程度にとどめておきましょう。少し切ったら断面を確認することが大切です。

(2)断面の中央に血管がうっすらと見えたらストップ

 白いツメの犬の場合、神経が透けて見えるので、ツメを少し残す程度にカットしましょう。黒っぽいツメの犬の場合は、ツメの断面を見て、中央の色が薄くなってきたら、そこで止めておきましょう。

(3)角をカットして形を整える

 最後は面取りという作業をします。とがった部分をカットして形を整えてあげましょう。ツメ切りだけで面取りをしても構いませんが、ヤスリを使って角を削れば、さらに美しい仕上がりになります。

犬の健康維持に、歯みがき歯のケアは不可欠

 歯や歯ぐきが丈夫でなければ、犬の大好きなごはんも楽しめません。健康な体を維持するためにも、定期的な歯みがき習慣をつけましょう。

 犬に歯みがきは必要ないという考えは大きな間違い。人間と同様に、歯のケアは大切です。歯や歯ぐきが病気になってしまうと、きちんと食事がとれず、体力が低下し、ほかの病気に発展する恐れがあります。また、長い間歯みがきをしないと、歯石がたまってしまい、ひどいときには全身麻酔をして除去しなければならないケースもあります。

まず犬に歯磨きのニオイや味を覚えさせる
まず犬に歯磨きのニオイや味を覚えさせる

犬を歯みがきに慣れさせるための4ステップ

 歯ブラシも歯みがきペーストも、犬にとっては見慣れないもの。下の4ステップのように、徐々に慣らしながら歯みがきをすれば警戒心が薄くなります。

(1)歯磨きペーストのニオイや味を教える

 まずは歯みがきペーストを見せてみましょう。ニオイをかがせたり、味を教えたりして慣れさせます。初日はこれだけでも構いません。

犬の口の中を指でやさしくマッサージ
犬の口の中を指でやさしくマッサージ

(2)指を使ってみがいてみる

 いきなり歯ブラシを口に入れるのは厳禁。まずはペーストを指につけ、歯や歯ぐきをやさしくマッサージするイメージで触ってみましょう。

みがきやすい前歯からブラッシング
みがきやすい前歯からブラッシング

(3)前歯や犬歯を歯ブラシでみがく

 歯や歯ぐきに触られることに慣れてから歯ブラシを使います。最初のうちは口を大きく開く必要のない、前歯や犬歯から始めます。

最後に犬の奥歯もみがく
最後に犬の奥歯もみがく

(4)慣れてきたら奥歯もブラッシング

 前歯や犬歯をみがけるようになったら、最後に奥歯をみがきます。奥歯は歯垢や歯石がとくにたまりやすい場所。念入りにみがきましょう。

洗浄液を使って犬の耳そうじ、垂れ耳の犬は要注意

 犬の耳の構造は少し複雑です。そのため人間のように耳かきでそうじするのはとても危険。ここでは洗浄液を使った耳そうじを紹介します。

 耳の中には常在菌がいます。通常その菌は悪影響をおよぼしませんが、菌が異常繁殖すると、トラブルを引き起こし、さまざまな病気につながります。定期的に耳そうじをして、清潔な状態を保ってあげてください。とくに垂れ耳の犬は湿気がこもりやすく、耳の病気にかかりやすいので要注意。洗浄液を使って定期的にケアしましょう。

犬の耳に洗浄液をたっぷり入れる
犬の耳に洗浄液をたっぷり入れる

洗浄液は犬の耳そうじの安全な方法

 専用の洗浄液を使った耳そうじは、耳を傷つけない、犬にとって最適の方法です。ただし、液が飛び散るので、浴室や屋外で行うようにするとよいでしょう。

(1)洗浄液を犬の耳の中に入れる

 まずは洗浄液を耳からあふれ出るくらいに、たっぷりと入れましょう。犬が頭を振らないようにしっかりと固定するのがコツです。

犬の耳のつけ根をやさしくもむ
犬の耳のつけ根をやさしくもむ

(2)犬の耳のつけ根をやさしくもむ

 犬の頭を固定したまま、耳のつけ根をやさしくもみます。クチュクチュと音が出るくらいもんで、洗浄液を耳の中に行き渡らせます。

犬が頭を振ると洗浄液と一緒に汚れが出てくる
犬が頭を振ると洗浄液と一緒に汚れが出てくる

(3)犬に頭を振らせる

 頭を固定した手を離すと、犬は頭をブルブルと振って耳の中から液体を出します。すると、液と一緒に耳アカが外に出てきます。

液と汚れを拭き取る
液と汚れを拭き取る

(4)出てきた耳アカを拭きとる

 耳から出てきた耳アカと洗浄液をガーゼなどで拭きとります。このとき、犬が痛がる場所がないかをチェックするとよいでしょう。

犬の目の周りのケア、普段から習慣に

 目の周りはデリケートなので、ついついケアを怠ってしまいますが、清潔にしておかないと、目の病気につながる恐れがあります。

目頭はぬらした柔らかい布で上から下へ拭く
目頭はぬらした柔らかい布で上から下へ拭く

 目の周りについている汚れや目ヤニなどは、放置しておくと感染症の原因になることもあります。定期的にケアをして、目の周りを清潔に保ってあげましょう。ただし、目の周りや眼球はデリケートなので力を入れずに行うことが基本。目の健康をチェックすることもできるので、最低でも、週に1回は行うようにするとよいでしょう。

安全に犬の目の周りをケアする方法

 目の周りを触られることを嫌がる犬は多くいます。まずは顔を触る習慣をつけておきましょう。急に動いたときの事故を防ぐため指やツメで汚れをとるのは厳禁です。

(1)目頭は、上から下へ湿らせた布で拭きとる

 目頭についている目ヤニや涙やけをとる場合は、犬の頭をしっかり固定して、まぶたを開き、上から下に向かって拭きましょう。

目の周りは目頭から目尻へなでるように拭く
目の周りは目頭から目尻へなでるように拭く

(2)目の周りは、目頭から目尻へ湿らせた布で拭きとる

 目の周りに汚れがたまっている場合は、目頭から目尻の方向に向けて拭きとります。力を入れ過ぎず、なでるように拭くことがコツです。

目にゴミが入ったら、たっぷり水を含んだコットンでゴミ浮かせて
目にゴミが入ったら、たっぷり水を含んだコットンでゴミ浮かせて

(3)目の中に入ったゴミは、水で浮かせてとる

 万が一、犬の目にゴミが入ってしまったときは、直接指やツメでとろうとするのはとても危険です。急に動いて眼球を傷つける恐れがあります。水をたっぷりふくませたコットンを犬の目に押しつけ、水でゴミを浮かせるようにすれば、安全にゴミがとれます。

【関連記事】 愛犬を清潔に保ち、病気も予防 ブラッシング・シャンプーのコツ

「まるごとわかる犬種大図鑑」
監修:若山正之/写真:藤原尚太郎
発行:学研プラス
判型:A5、242ページ
定価:1500円+税

監修:若山正之
獣医師。若山動物病院(千葉県佐倉市)院長。犬や猫のヘルススパンを延ばす的確な診断とアドバイスに定評があり、寝たきりや認知症になった犬の介護などに、独自のノウハウを持つ。

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