「ペットを飼いとげるには」 著名人らのエンジン01がセミナー
動物愛護に関する啓発活動を行う「エンジン01文化戦略会議」の動物愛護委員会は1日、「ペットを飼いとげる」をテーマにしたセミナーを名古屋市で開いた。終生飼い続けるための心がけについて獣医師が講演、倍賞千恵子さんら著名人がパネルディスカッションをした。
セミナーのタイトルは「ペットのヘルスケア・セミナー ~飼いとげよう!元気なペットと暮らすための知恵」。最後まで責任をもって飼い続けるため、飼い主として知っておきたい、ペットの健康やケアについて考えるというもの。獣医師による講演と、委員らが登壇したパネルディスカッションの2部構成で行われた。
見つめあうことで幸せホルモンを分泌し関係改善
第一部は長野県・さくら動物病院の横山篤司院長による講演「ペットを飼いとげるために大切なこと」で、飼い主として特に注意が必要となってくるペットのシニア期に焦点をあて、散歩や遊び、飼育環境など、体のケアだけでなくペットのQOLにもつながる暮らしのポイントを、動画を交えながらわかりやすく解説した。
たとえば、入れ物にオヤツやごはんを入れて隠し、愛犬に探させる宝探しゲームは、日頃から行っていると、老化の兆候をキャッチするのに役立つという。
「この遊びを行うことで、目や足腰、鼻の機能をチェックできます。白内障や網膜の病気になりやすい犬種の場合、何かにぶつかりやすくなるなどの動作の変化に気づけば、病気の早期発見、早期治療につなげられるかもしれません」
また、老化が進んだ場合、階段を上り下りさせないようフェンスを設けるなど、家の中の危険ゾーンを見直す必要があると解説。その際は「ペットファースト」であることが大切だと語った。
「壁や家具にぶつかることはケガをする危険があるだけでなく、ペットが自信をなくしてしまうことにもつながります。角や出っ張りをタオルで覆うなど、ペットの状態に合わせて、人間側が生活を変えることが大切。“動物を飼う”というのは、そういうことだと思います」
なかでも、横山先生がもっとも大切だと繰り返したのは、「たくさん話しかけ、アイコンタクトを取る」こと。目を見て語りかけることで、ストレスを緩和したり、幸せホルモン「オキシトシン」の分泌を促すという。
「幸せな老齢生活を送るためには、見つめ合って、話しかけてあげてください。そうすることでお互いにオキシトシンが出て、安心感や親近感が湧き、もっといい関係になると思います」
「老犬や病気の子も最後まで飼える施設を増やしたい」
続く第二部のパネルディスカッションには、委員長で音楽評論家の湯川れい子さんを始め、委員会メンバーである株式会社ドリームインキュベータ 取締役ファウンダーの堀紘一さん、経済評論家の勝間和代さん、作曲家の小六禮次郎さん、俳優の倍賞千恵子さん、放送作家の山田美保子さんに加え、第一部に続き横山先生が登壇した。
「健康にいいフード選び」「ペットの看取り方」など、さまざまな話題があがったが、なかでも「いつまで動物を飼い続けられるか」について、活発に議論が交わされた。
長年犬と暮らしたものの、自身の年齢を考慮して今はもう飼っていないと話した堀さんは、「『もう飼っちゃいけないかな』と、知人の弁護士さんに話したら、『信託のようなシステムを作れば』とアドバイスされて。今はそれを研究しようかと思っています」と語った。
一方、10年前に愛犬を亡くしてから犬を飼っていないという小六さん・倍賞さん夫妻は、「次に迎えるなら保護犬」と話しているものの、「僕たちがいなくなったあと、ちゃんと面倒を見てもらえるとしても、犬は心の奥ではどう思いながら生きていくのかと考えてしまう」と、躊躇する気持ちを明かした。
これに対し、湯川さんは「お年寄りがペットを飼うというのは、認知症予防や癒やしにつながるので、ものすごく大事。飼えなくなったときのためのシステムを構築していくというのも、動物愛護委員会の次の使命だと考えています」と述べた。
また、老犬・老猫を手放す人が後を絶たない問題を話し合う場面では、特に飼育放棄の原因につながりやすい排泄の失敗への対処法として、横山先生は「おむつをしたり、お尻の毛を刈るなど、汚れることを大前提にした対策が大切。人間側が怒る回数を減らす努力をするしかありません」とアドバイスした。
会の最後で湯川さんは「もらい手のない老犬や病気の子は、否応なく始末されてしまうことが多いのが現状。その子たちも含めて、人間が責任をもって最後まで飼えるよう、終生飼育ができる施設を増やしていければと思います。ぜひ皆さんも関心を寄せてください」と協力を呼びかけた。
当日はセミナーと並び、委員会メンバーによる「ペットと一緒の写真展」と、名古屋ECO動物海洋専門学校による企画展「保護猫ちゃんの魅力を伝えよう!」も開催された。
来場者は、愛犬・愛猫と写る委員らの普段とは違う柔らかい表情の写真や、保護猫の譲渡活動の様子を伝える展示パネルを熱心に眺めたり、学生らと共に会場に来ていた保護猫とのふれあいを楽しんでいた。
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