犬や猫の「ストレス診療科」開設 「心の問題、力になりたい」
動物の問題行動に着目して治療する「獣医行動診療科認定医」は、日本で9人しかいない。その一人、岐阜市の獣医師奥田順之(よりゆき)さん(34)が、自身の動物病院に犬と猫の「ストレス診療科」をつくった。「『動物の精神科医』として、困っている犬や猫の力になりたい」と意気込む。
犬や猫「ストレスが異常行動招くことも」
奥田さんは2014年、「ぎふ動物行動クリニック」を開業。ストレス診療科では12月1日に診療受付を始める。「ストレスが引き金になって健康を損なったり、異常行動が引き起こされたりするケースがあります」
例えば、猫はキャットタワーなどで上下動できる環境が必要で、狭いケージで飼うとストレスがたまりやすい。散歩好きな犬を散歩に連れて行かないケースや、しつけではなく体罰をすることなどもストレス要因になり、体調不良や異常行動が現れる。
下痢や嘔吐(おうと)のほか、過度にほえたり自傷行為をしたりする行動も治療対象だ。診察では、飼い主の生活習慣、生活環境、しつけの仕方などを1~2時間かけてじっくり聞きとる。
飼い主の「良かれ」が犬や猫のストレスになることも
飼い主がストレスの原因だとわかる場合もある。
「犬をマッサージしてあげているとかまれる」と受診した飼い主がいた。飼い主はいつもやっているように、犬をひざの上にのせて足をもみ始めた。「犬は嫌がっているように見えた。飼い主さんが良かれと思ってやっている行動が、実は動物にとってはストレスになっていることもある」と指摘する。
診察を通じて、犬の認知症にあたる「高齢性認知機能不全」という病気が見つかることもある。
治療は、飼い主と話し合いながら、犬猫の過ごしやすい環境を整える「環境修正」、トレーニングなどを通じてストレス要因に対する過度の緊張や興奮を取り除く「行動修正」、環境修正や行動修正で対応できない場合に用いる「薬物療法」の3種類がある。
奥田さんは、日本獣医動物行動研究会の獣医行動診療科認定医として症例を積み重ねてきた。「今までの獣医療は、精神的ストレスに対する治療が十分ではなかった。動物の心の問題を相談したい飼い主さんの思いに応えたい」と話す。
問い合わせは、岐阜市岩地2丁目のぎふ動物行動クリニック(058・214・3442)。
(山野拓郎)
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