避難勧告、犬や猫とどこへ逃げれば… ペット不可の避難所も
大きな被害をもたらした10月の台風19号では、関東や東北などの600万人以上に避難勧告が出ました。しかし、ペットと暮らす飼い主たちには、どこの避難所で受け入れてもらえるのかが、深刻な問題でした。
ペット連れ「避難所に入れない」
「近くの中学校まで歩いたもののそちらはペット不可…結局自宅に引き返しました」「ペットを置いて人だけ避難なんて私はできない」
台風が上陸した週末、避難勧告が出ても、ペット連れのため、各地の避難所に入れないという訴えがSNS上で相次いだ。
動物の保護活動を行うNPO法人ランコントレ・ミグノン(東京都渋谷区)理事の友森玲子さんもその一人だ。10月12日、ツイッターで「避難所はペット不可なので、避難しないで頑張ると管理人が言って困っています。同行避難できる場所がありましたら情報をください」と呼びかけた。
友森さんの団体が運営する保護シェルターは、避難勧告が出た千葉県東金市にある。当時は2016年の熊本地震で保護した犬2頭と、管理人の60代男性がいた。友森さんが市に問い合わせると、市内でペットが室内に避難できる避難所はないという回答だった。
シェルターは市の郊外にあり、裏手には山がある。土砂災害の警報が出たところで何とか管理人を説得し、犬をシェルターに置いて避難してもらった。「避難が遅れてペットと救助された話を聞くと、なんで早く避難しないんだろうと思っていましたが、当事者になると本当に難しいんだなと痛感しました」
国は同行避難を推奨、運営は自治体まかせ
環境省が昨年作成した、ペットの飼い主向けの災害対策ガイドラインでは、ペットと共に避難する「同行避難」を推奨。災害発生時は、ペットを連れて指定緊急避難場所に向かうよう記されている。同省動物愛護管理室によると、2011年の東日本大震災の際、取り残されたペットの被害や、避難後ペットを連れに戻った際に津波に巻き込まれた事例を受け作成された。
しかし、実際の避難所の運営は各自治体にゆだねられており、対応はまちまち。災害対策基本法を所管する内閣府の避難所運営のガイドラインでも、ペットとの避難については「ルールづくりの検討」を促すにとどまる。
東金市では、ペットは「屋外での受け入れ」としていたため、市の担当者は、「今回の台風については、ペットを安全に置いておける場所がなかった」と話す。東京都葛飾区でも、屋外を想定していたため、一部現場で判断した施設を除いて同行避難を断った。区の担当者は、「屋内に入れてしまうと他の避難者のアレルギーのおそれもある。配慮や課題を整理したい」と話す。
屋内に別室を用意した自治体も
一方、渋谷区では、昨年作成した同行避難のマニュアルでは、原則屋外での受け入れを想定していたが、各避難所で判断の上、屋内など安全な場所で受け入れるよう指示した。台風上陸当日は、ペット受け入れ可能な避難所の一覧を区のホームページに掲載。実際に犬を連れて避難した女性によると、受け入れ可能とされた小学校で「動物連れの人は理科室です」と案内された。床が冷たくないようにとマットが用意されているなど落ち着いて過ごせたという。
昨年の西日本豪雨で被災した岡山県総社市は、避難生活が続く中、ペット同伴専用の避難所として市役所の一部を開放。今年6月に作成した避難所の運営マニュアルには「ペット避難所の開設」「居住部分への持ち込み禁止」「専用スペースを確保する」などと明記している。
環境省の担当者は「これまでは多くの自治体は、地震を念頭にしていた。広範囲にわたる水害で多くの人が避難し、自治体も混乱状態だったのではないか。広範囲に及ぶ風水害時の対応を考えていきたい」と話す。
友森さんは「避難所に来る人の中には動物アレルギーをもつ人もいるので、動物連れの人と部屋を分け、毛が飛ばないように対策するなど、事前にシミュレーションをしておくことが必要」と指摘する。
さらに、飼い主の側にも、日頃からペットと一緒に地域の避難訓練に参加することを提案する。ペットがいられる場所があるかなど担当者と課題を整理しておくことで、「なんとなくペット不可」となる事態を防げる。もちろん、実際にケージで運んでみる訓練や、排泄(はいせつ)物の処理用具の準備などの衛生管理を万全にしておくことも必要だ。
(矢田萌)
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