宮崎、地域猫活動が活発化 野良猫急増やエサやりなどの課題も
野良猫を地域猫=キーワード=として住民と共生しようとする取り組みが、宮崎県宮崎市で活発化している。不妊・去勢手術のために市動物愛護センターに利用登録をした自治会や市民団体の総数は30を突破。ボランティアは連携して募金活動を始めた。市議会には動物愛護の議員連盟ができる見通しだ。こんな動きの中で課題が山積していることも見えてきた。
「野良猫を増やさないための募金をお願いしまーす」。4日夕、橘通りで女性7人が仕事帰りの通行人らに呼びかけた。
市内で地域猫活動をする人たちの横断組織「宮崎市猫TNRボランティアチーム」が8、9月に続いて実施した3回目の街頭募金だ。各回とも2時間で6万~10万円が集まった。事務局の山本清美さん(51)は「地域猫への関心の高まりを感じる」と話す。
昨秋、個別に活動していたボランティア約20人でチームを結成。以来、370匹超の不妊・去勢手術をしてきた。今月には、高原町のNPO法人「咲桃虎(さくもんと)」と合同で「みゃ~ざきTNRプロジェクト」を立ち上げ、1万匹の手術達成を目標に掲げた。街頭募金に加え、クラウドファンディングや企業協賛などで手術代の確保に努めるという。
野良猫を増やさずに管理するには、いったん捕獲して不妊・去勢手術を施すのが最も有効とされる。市は2017年度に「飼い主のいない猫の対策事業」を始め、一定の要件を満たした地域猫を動物愛護センターで無償で手術をしている。
野良猫急増の背景にエサやりや捨て猫問題
だが今、センターは“パンク状態”だ。
同事業の利用登録をする自治会やボランティアなどの数は17年度に15、18年度に27、今年度は35と増加の一途。ところがセンターは県と市の併用で、市が手術に使えるのは週に3日しかない。1団体が猫を持ち込む機会は2カ月に1度しか回ってこず、順番待ちが常態化している。「私たちのチームだけで250匹が待機している」(山本さん)
センターで1日に手術できるのは「メス2匹とオス4匹」という制約もある。ボランティアの捕獲作業では、その制限匹数を上回ることも多い。センターの手に余った猫については、民間の動物病院で有償で手術をしているのが実情だ。
センターの永田美保所長によると、昨年度の手術実績436匹に対し、今年度は600匹に届く勢い。手術や治療にあたる獣医師3人はフル稼働状態で、さらに手術数を増やす妙案はないという。
手術をしないと野良猫はとめどなく繁殖する。海沿いのある地区では、今春に約110匹だったのが今では約180匹になった。
背景には、エサを与える人間の存在がある。この地区には20年近くエサをやり続けている男性(67)がいる。毎夕、自費で買い求めたキャットフード16キロを運ぶ。男性が来ると、猫たちが続々と姿を見せる。
「多くは捨て猫です」と男性は言う。エサをもらう野良猫は健康を保ち、子を産む。世話をする人がいると、それに乗じて猫を捨てに来る人も後を絶たない。男性はその悪循環を認識しつつ、「私がエサやりをやめたら、猫たちは餓死する」。ときには子猫を保護し、自宅には約50匹を抱えているという。
ここに限らず、市猫TNRボランティアチームには「野良猫が急増した」との情報が相次ぐ。山本さんは「捨て猫の禁止や飼い猫の手術義務化を条例で定めてほしい。野良猫にエサをやる問題点も啓発しないと」と行政に注文をつける。
こうした事態を受け、市議の有志が動物愛護促進議員連盟(仮称)を立ち上げる。鈴木一成、日高昭彦、上野悦男の3議員が各議員に呼びかけ、すでに15人超が参加の意向を示している。代表に就く予定の鈴木氏は「関係者の多様な意見を聞き、議員発の条例づくりをめざす」と話す。
(佐藤修史)
◆キーワード
<地域猫> 特定の飼い主はいないが、地域の合意の下で保護・管理されている猫。管理の根幹は「TNR活動」。TはTrap(捕獲)、NはNeuter(不妊・去勢手術)、RはReturn(元の場所に戻す)。手術済みの猫は、耳にVの字の切り込みを入れる。サクラの花びらの形にも似ているため、「さくらねこ」とも呼ばれる。
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