ネコに好かれるための服はある?ない? 写真家・岩合光昭さんインタビュー
- NHK『岩合光昭の世界ネコ歩き』や映画『ねことじいちゃん』など、数多くの作品を残している動物写真家の岩合光昭さん。そんな岩合さんがこの度、メンズ服ブランド「PAPAS PLUS」の、新聞向け広告モデルに選ばれました。普段は撮影する側の岩合さん、緊張した様子で撮影に臨みました。
岩合さんは日常でどんな服を着ているのか、ネコに好かれる服装とはどんな服なのか、ネコを上手に撮るための撮影ポイントは何なのかなどを聞きました。
ーー今回、PAPAS PLUSの服をお召しになられて、いかがでしたか。
着心地がいいですね。僕の体型に合っていると思います。
特にこのワインレッドのセーターがいいですね。あとレザーのジャケットも格好いい。本当は普段からレザーのジャケットを着てみたいのですが、撮影に着ていくとスレてしまって傷むので、なかなかそういう機会はないですね。
ーー普段はどういう服装が多いのでしょうか。
季節を問わず、家の中だとTシャツを着ていることが多いですね。写真展のトークショーのときなどは、TPOを守って、ジャケットを着たりもします。色もそんなにこだわりはなく、何色でも着ます。ただ、撮影でフィールドに出ると、グリーンやブラウンといったアースカラーを着ることが多いと思います。自然に溶け込むような色を選ぶようにしています。
ーー撮影の時の服装はまた別なのですね。
はい。多少汚れてもいいような服が多いです。戦闘服状態ですね。
ーーお洋服を選ばれるのがお好きですか?
好きですね。気に入ったものは長きにわたって、何年も何年も大切に着るようにしています。以前、イタリア製のカシミアのセーターをいただいたことがありました。ローマ法王がお召しになられている袈裟を作っているブランドのセーターでした。確かにすごく着心地がよく、ブランドものにはそのブランドならではの良さがあるのだなぁと思いました。
ーー普段はお写真を撮る側でいらっしゃって、今回は撮られる側でした。何か意識されたことは?違いはありましたか?
僕が撮影する時は、なるべくリラックスするように心がけています。僕がリラックスしていないと、被写体が緊張してしまう。その緊張が写真に現れるんです。だからなるべくリラックスした状態をつくります。…とはいえ、今日は撮影される側で、緊張しました(笑)。
ーーネコを上手く撮るコツも同じでしょうか。
同じことだと思います。ネコを緊張させないことが一番大切です。いい写真撮るぞなどと決して思わないことですね。ネコの動きを見ながら、その動きの中からシャッターチャンスを引き出すというか、生み出すというか。そうすると、「え、ネコってこういうことするの!」という再発見があると思います。
ーーなるほど。
具体的には、目を瞬くといいですよ。動物は基本的に視線が合うと、敵対心を抱くんです。だから、あえて視線はさっと流して、凝視しないこと。シャッターチャンスを逃さないようにちゃんと見ていなくてはいけないのですが、見ているような、見ていないような感じがいいと思います。時々わざと顔を横に向けて、視線を外し、また元に戻したりしています。
小道具や食べ物は基本的に使いません。使ってしまうと、目がらんらんと丸くなって、興奮したような目になってしまうんです。彼らがリラックして、普段通りにやれるようにね。ネコをどこかに連れて行って撮影するわけではなく、そこで暮らしているネコを撮影しているので。
ーー警戒心を抱かせないことが大切なのですね。適切な距離感はどれくらいなのでしょう?
理想は向こうから近づいてくることですね。興味を持って近づいてくるというのが一番の理想です。「この人は何をやっているんだろう?私と同じ姿勢の高さになっているけれど…」といった具合に、ネコから近づいてくれることがあるんです。
僕ね、なぜ猫にモテるんですかとよく聞かれるんですけど、きっと最初に視線をできるだけ地面に近く低くしているからじゃないかな、と思います。
ーーちなみにネコに好かれる服装はあるのですか?
ネコは服にこだわらないです。街での撮影ですから、アースカラーでなくても大丈夫です。最近僕は、例えばメキシコに行くときは、メキシコの国旗の色にマッチした服を着たり、ドイツに行くときは、赤や黒を着たりして、遊んでいます。スタッフがみんな黒を着ていることが多いので、ネコが僕をみて「この人は何だ?」という興味を示してくれているのかもしれないです。
ーー世界を旅されている中で、いろいろなネコと出会ったと思いますが、今思い出す印象的なネコはいますか?
花が至るところで咲いている、カナダのビクトリアという街に最近行きましてね。庭園があるのですが、そこでアルバートという、心臓の弱い男の子のネコと出会いました。白と茶色の毛の色で、目がちょっと離れていて、顔が特徴的でした。とても可愛かったですね。
バラがたくさん咲いているところを彼が歩いている写真を撮りました。決してイケメンではないネコなのですが、気に入ったカットを撮ることができましたね。
ーー岩合さんは撮影した映画「ねことじいちゃん」をきっかけに、タマちゃんとトモちゃんというネコを飼っていらっしゃいますよね。久しぶりのネコとの生活だと聞いているのですが、いかがですか?
そうですね。外ネコに餌をやっていた時期はあるのですが、家で暮らすようになったのは何十年ぶりかですね。家にいることが少ないのですが、やはり気持ちが豊かになります。毎朝寝ていると、起こしてくれるんですよ。
家を建てるときもネコを第一に考えました。トイレも含めた全てのドアにキャットドアがついていて、リビングにはキャットウォークもあります。
ーーご自宅のネコと、ロケで出会うネコは違いますか?
違いますね。僕は愛情の傾け方を分けるようにしています。出会った子にあまりにも入れ込んでしまうと、後ろ髪を引かれて、その場を離れたくなくなってしまうんですよね。この子から離れたくない、と。
映画『ねことじいちゃん』に出てくれたベーコンなんて、その最たるもの。撮影が終わったら絶対にうちに来てくれるだろうと信じていたんですが、動物プロダクションの代表が「監督、ありがとうございます。おかげでベーコンがこんなにいい役者だとわかりました。これから彼にはたくさん仕事をしてもらいます」と。ものすごくがっかりしましたね。
でも、会いたいので会いに行きます。それぐらい、惚れ込んでしまうネコはいるものです。
ーー最後に。なぜ岩合さんはそんなにもネコに惹かれるのでしょう。改めて魅力を教えてください。
やはり野性ですね。ネコは紐に結ばれていないじゃないですか。本当に自由に動く。その自由さに惹かれるのだと思います。それに、美しさにも惹かれています。こんなにすごいジャンプを見せてくれるなんて、美しいなと思っています。(文:五月女菜穂)
- 岩合光昭 いわごう・みつあき
1950年生まれ。動物写真家。日本人として初めて、世界的なネイチャー誌『ナショナルジ
オグラフィック』の表紙を2度も飾り、世界的な動物写真家としてその地位を確立した。世界各地のネコを撮影したドキュメンタリー番組「岩合光昭の世界ネコ歩き」(NHK-BSプレミアム)のほか、写真展や写真集なども人気。2019年には映画「ねことじいちゃん」で映画監督デビュー。
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