大震災でつながり、主婦のくらしが一変 被災犬・猫の保護に奔走

   8年前の3月に起きた東日本大震災。人間同様、飼われていた動物たちも被災し、多くが取り残された。「犬や猫を救いたい」。有名ジャーナリストと主婦。縁もゆかりもなかった2人が震災を機にSNSでつながり、主婦の生活を一変させた。いま女性は、横浜市の自宅で保護犬や保護猫のシェルターを運営している。

(末尾に写真特集があります)

   神奈川県横浜市。緑の多い住宅街に、保護犬や保護猫のシェルター「おーあみ避難所」はある。一見すると、普通の住宅だが、玄関先にはキャリーバッグやケージがいくつも積まれている。

甘えん坊な保護犬ラムジー(オス、4歳)と
甘えん坊な保護犬ラムジー(オス、4歳)と

自宅を保護犬や保護猫に開放

  自宅で、おーあみ避難所を運営している大網直子さんが説明してくれた。

「今、家には猫が60匹、犬は10匹ほどいます。ボランティアさん宅に預けている子たちを合わせると100匹以上になりまね」

   リビングダイニングには保護された若い犬や老犬、猫たちが思い思いにくつろぎ、複数のボランティアたちが出入りしていた。月に2度は譲渡会を開き、昨年は200匹の犬や猫に新しい家族を見つけたという。

「1階は保護部屋で、2階がプライベート空間。でも2階にも猫がいて、ベッドを占領されています(笑)。朝は9時から当番のボランティアさんが来て、散歩、ごはん、投薬、通院、お届けなどをしていますが、あっという間に一日が終わりますね」

  そんな精力的な活動をしているが、以前は、ただの動物好きな主婦だったという。

「19年前に結婚した時は8匹の猫が嫁入り道具でした。会社勤めをしながら1匹、2匹とマイペースに保護をしていて、実はこの家も『ポトちゃん』という保護犬を庭でのんびり遊ばせたくて買ったものなんです」

大熊町には多くの柴犬が徘徊し、ボランティアたちは「柴犬ロード」と呼んだ(2011年5月25日、太田康介さん撮影)
大熊町には多くの柴犬が徘徊し、ボランティアたちは「柴犬ロード」と呼んだ(2011年5月25日、太田康介さん撮影)

山路徹さんの呼びかけに応じる

   そんな生活を一変させたのが、東日本大震災だった。

   大網さんは福島市出身。原発事故の後、現地に取り残された動物のことが気になり、インターネットで情報を探った。すると、3月30日、ツイッターで、ある“つぶやき”を見つけたのだという。発信者は、いちはやく福島第一原発の20キロ圏内に入ったジャーナリスト・山路徹さんだった。

「犬や猫たちを救いたいが〈どうしていいかわからない〉という内容でした。当時の私はツイッターの使い方も知らなかったのですが、夫に聞いて〈ケージ、捕獲器、車があります。手伝いましょうか〉と書き込みました。そうしたら連絡が来て……」

   当時、大網さんは会社を辞めており、専業主婦だった。

   ツイッターでやりとりした翌日早朝、すぐに東京都内で山路さんと待ち合わせ、福島県南相馬市へと向かった。

   そこで目にしたのは、尾を振りながら駆け寄ってくる犬たちだった。お腹をすかせた犬たちにえさを与え、抱きしめた。

   それから週1回のペースで、福島に通う生活が始まった。元の飼い主さんを探したり、一時預かり先を探したり、必死に活動した。一歩間に合わず救えない命もあったが、ペットと再会して喜ぶ飼い主の姿を目の当たりにして、「動物のためにすることは、人のためでもある」と実感したという。

   偶然にも大網さんは震災直後の5月、今の戸建て住宅に引っ越すことになっていた。もともと住んでいたマンションが空き家になったため、福島で保護した猫を収容する臨時シェルターとして、おーあみ避難所を開いた。その後、自宅に避難所を移した。

おそるおそる山から出てきた犬を保護する大網さん(2011年5月楢葉町で、太田康介さん撮影)
おそるおそる山から出てきた犬を保護する大網さん(2011年5月楢葉町で、太田康介さん撮影)

福島以外にも目を向ける

   福島県に2年半ほど通った後、自宅周辺や栃木県などで救いを求める犬や猫にも目を向けるようになった。気になるのは、けがや病気と闘っていたり、老いて捨てられたり、命の期限の迫った犬や猫だという。

 今年2月からは、香川県の子犬や子猫も預かるようになった。

「たまたまフェイスブックで、香川県から羽田空港に空輸した保護犬を都内の譲渡先まで車で運ぶ手伝いを募集している方を見つけて、『やります』と名乗り出たんです。その時、香川県の殺処分が国内ワーストで子犬もたくさんいると知り、シェルターでの受け入れを始めました」

 香川県からは週に2度、子犬が届く。その数は7月までの5カ月で100匹近くになったが、9割はすでに新しい家族を見つけたという。

新宿の譲渡会に参加

 おーあみ避難所は8月15日から東京・新宿の京王百貨店で開かれるイベント「みんなイヌ、みんなネコ」の譲渡会に初めて参加する。香川生まれの子犬10数匹を紹介する予定だ。15日には福島以来、親交を続ける山路さんと大網さんのトークショーもある。

「山路さんは被災地で保護した猫を飼っていて、『動物が救えないような社会は結局人間に対しても優しくなれない』と日頃からおっしゃっている。一緒に、熱い気持ちを届けたいですね」

【関連記事】 イベント「みんなイヌ、みんなネコ」 8月、新宿・京王百貨店で

保護猫・保護犬の譲渡会
◆前半
日時:8月15、16日 11:00~14:00
主催:ねこかつ、おーあみ避難所
会場:京王百貨店新宿店 7階大催場
◆後半
日時:8月17、18日 13:00~17:00
主催:ねこけん
会場:京王百貨店新宿店 7階大催場
*混雑回避のため、各日とも10:00から入場整理券を配布し、入場を制限します。
*当日は申し込みまでで、審査、トライアル後、正式譲渡されます。
山路徹さん×大網直子さんトークショー
日時:8月15日15:00~16:00
会場:京王百貨店新宿店 7階大催場
料金:入場無料
※先着順。来場多数の場合、立ち見になります。
*ほかに会場では、16日15:00~16:00に「梅田達也さん×保護犬猫ガールズトークショー」、17日11:00~12:00に「浅田美代子さんトークショー」なども行われます。
藤村かおり
ペットライター。小説等の創作活動を経て90年代後半から、ペットの取材を手掛ける。2011年~2017年週刊朝日記者、2017年からsippoメインライター。丹念な取材と独自の目線から、動物と人の絆、動物と共に生きる人の心をすくい取る記事に定評がある。ペット関連の著書に『長寿猫』『明日にアクセス』など。現在は保護した黒猫、キジ猫と暮らす。

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この特集について
ペットと人のものがたり
ペットはかけがえのない「家族」。飼い主との間には、それぞれにドラマがあります。犬・猫と人の心温まる物語をつづっています。
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