100匹の猫暮らす「深島」、犬飼ってはならぬと言い伝え

島民が与えたキャットフードを食べる島の猫たち=大分県佐伯市の深島
島民が与えたキャットフードを食べる島の猫たち=大分県佐伯市の深島

 大分県佐伯市の蒲江港の南約9キロにある深島(ふかしま)は、周囲約4キロの小さな島。高齢者を中心に10世帯18人が住むが、それよりはるかに多い約100匹の猫たちもともに暮らす。「猫の島」として知られるようになり、癒やしを求めて訪れる観光客が増加中だ。

 島は日豊海岸国定公園内にあり、周辺には黒潮が流れる。サンゴ礁や熱帯魚が見られ、国の天然記念物ムラサキオカヤドカリなども生息する。定期船を降りると早速、毛繕いをする猫たちが出迎えてくれた。

 しばらく歩くと、深島大明神が見えてくる。犬嫌いな稲荷様も祀(まつ)られ、島には犬を飼ってはいけないとの言い伝えがある。犬の姿がなく、猫ばかりになったのは必然かもしれない。

 深島みそ生産施設前の広場で朝食中の猫約20匹に遭遇した。島民が負担し、朝夕にエサを与えている。みその製造販売や食堂、宿泊施設を手がける「でぃーぷまりん」の経営者安部達也さん(39)とあづみさん(30)夫妻が案内をしてくれた。

 達也さんは祖母がしていたみそ作り継承のため2013年に移住。ボランティアで訪れたあづみさんと16年に結婚した。2人の子どもを育てながら、島の観光の盛り上げに力を注ぐ。

 広場からは猫が集まる「にゃんにゃんロード」が北と南に延びる。「それぞれの道に群れがある」とあづみさん。メグはキジで毛はふさふさ、島では珍しい白猫ハルは人見知り、気品ある三毛のミーちゃん……。9割の猫に名前がある。

 佐伯市観光協会は、島民らの協力で「深島ネコ図鑑」を3月中に発売予定だ。売り上げの一部でエサ代や治療代などを捻出し、島民の負担軽減を図る。

 「島は日常から離れ、素でいられる場所。波の音を聴きながらボーッとした時間を過ごしてほしい」。そう勧める安部さん夫妻が、猫たちと待っている。
(佐藤幸徳)

蒲江港から定期船「えばあぐりいん」で、屋形島を経由して30分(往復1350円、小学生以下690円)。1日3往復。東九州道蒲江ICから乗船場まで6分。バスならJR佐伯駅から50分で道の駅かまえ(940円、小学生以下半額)。乗船場まで徒歩7分。

朝日新聞
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