倉庫の中で野良猫が産んだ子猫 新しい家でお兄ちゃん猫に出会う

 野良猫を増やさないため、野良猫を捕まえて不妊去勢手術をする活動がある。だが、相手はすばしっこく動く野良猫、そう簡単には捕まらない。どうしても捕まえられなかった猫が妊娠してしまい、生まれた5匹の子猫とともにようやく保護された。

(末尾に写真特集があります)

 大阪府内に、荷物がたくさん積まれた倉庫をねぐらにしていた野良猫がいた。TNR活動でも捕まえられず、やがて妊娠。5匹の子猫が生まれた。

 その段階になってから母子ともに保護されて、保護団体「ワンハート大阪」にやって来た。母乳を飲んで育った子猫たちはすこぶる元気だったという。

 子猫たちは当初、恐怖に固まり、近づく人をシャーッと威嚇していた。徐々に人の優しさに触れ、少しずつ心を開いていったそうだ。子猫たちにはマンガ「サザエさん」の登場人物から仮の名前がつけられた。

 サバトラの女の子は「いくらちゃん」と名付けられた。一番怖がりだったが、「大丈夫だよ」と声をかけながらなでられると、気持ち良さそうに抱っこもさせてくれる子だったという。

きれいな目の「ごろくん」
きれいな目の「ごろくん」

地震をきっかけに2匹目を考えた

 2018年6月18日、大阪をマグニチュード6.1の地震が襲った。大阪北部地震だ。府内に住む中村さん夫妻は当時、1匹の猫「ごろくん」を飼っており、中村さんは留守番をさせていた猫を心配しながら帰宅したという。

 猫は無事だったが、どうしても出社しなければいけない用事があった。後ろ髪を引かれながらも家を出る時、ふと後ろを見ると、ごろくんがポツンとたたずんでいたという。なんとも心細く、寂しげだった。

 中村夫妻は「これではかわいそうだ」と、2匹めの猫を飼うことにしたという。先住のごろくんもワンハート大阪から引き取っていたため、インターネットでワンハート大阪の譲渡情報で保護猫を探した。そこで目に留まった「いくらちゃん」に会いに行ってみた。

「トライアルから戻ってきてしまった子でした。先住猫との折り合いが悪かったらしいんです。他の兄弟の後ろに隠れるようにしていて、遠慮がちに近づいてきました。ネットで見たとおり、かわいらしかったので、いくらちゃんを迎えることにしたんです」

お兄ちゃん「ごろくん」とも仲良し
お兄ちゃん「ごろくん」とも仲良し

先住猫とも仲良く

 ワンハート大阪では譲渡希望の猫が決まると、1週間お試しで一緒に暮らすトライアル期間がある。臆病ないくらちゃんはワンハート大阪で使っていた自分用の毛布と一緒に、トライアルにやって来た。

 最初こそ、先住猫のごろくんは、低い声で威嚇したが、4日目になると、いくらちゃんをなめてやるまでになり、正式譲渡にいたった。

 いくらちゃんは、中村夫妻が譲渡会に行った7月7日の七夕にちなんで、「ささちゃん」と名付けられた。2匹はいつも仲良く寄り添い、よく互いをなめ合っている。留守番の時も2匹一緒だ。

ごろくんとささちゃんのインスタグラム goro_brown_tabby
渡辺陽
大阪芸術大学文芸学科卒業。「難しいことを分かりやすく」伝える医療ライター。医学ジャーナリスト協会会員。朝日新聞社sippo、telling、文春オンライン、サライ.jp、神戸新聞デイリースポーツなどで執筆。FB:https://www.facebook.com/writer.youwatanabe

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この連載について
幸せになった保護犬、保護猫
愛護団体などに保護された飼い主のいない犬や猫たち。出会いに恵まれ、今では幸せに暮らす元保護犬や元保護猫を取材しました。
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