愛猫が失踪、再会への備えは 猫は生活圏外で方向音痴に
愛猫が、突然逃げ出したら――。 平時でもしばしば、災害時は特に、迷い猫が多発します。猫は生活圏から離れると、自宅の方向が分からず帰れなくなる「方向音痴」が多いそうです。万一の時に再会する可能性を高める備えを調べました。
(末尾に写真特集があります)
「天空の城」として知られる岡山県高梁市の備中松山城の猫城主「さんじゅーろー」は、元迷い猫。7月の西日本豪雨の直後、飼われていた市内の家から逃走した。
室内飼いだったので、首輪や名札は着けていなかった。飼い主はすぐ捜しにいったが見つからなかった。
1週間後、直線距離で約6キロ、車で約20分も離れた備中松山城に現れ居着き、人気猫に。高梁市観光協会が元の飼い主から譲り受け、「猫城主」になった。以来、城の敷地で気ままに暮らしていたが、11月4日にまた失踪した。
逃げた猫と再会できる可能性は、あまり高くない。さんじゅーろーの主治医を務める浜岡将司獣医師は「もともと猫は方向音痴です。なじんだ場所なら分かりますが、生活範囲を出てしまうと方向が分からなくなってしまいます」と説明する。
再会の可能性を高めるために、どんな対策が有効なのか。
まず、名札。
さんじゅーろーは、2度目の失踪から19日後に民家の裏庭で見つかり、無事保護されて、12月16日に城に戻った。首輪に「猫城主さんじゅーろー」と連絡先を書いた名札を着けていたのが功を奏した。
環境省が名札とともに推奨するのが、皮膚の下に埋め込むマイクロチップだ。個別番号が内蔵されており、登録情報と照合すれば飼い主が分かる。
しかし、名札もマイクロチップも、効果を発揮するのは猫が見つかってからだ。田舎だと山中に逃げることもあり、そうなると発見・保護は難しい。
高梁市観光協会は、さんじゅーろーがまた失踪した場合に備え、居場所が特定できるGPSタグを首輪に着ける予定だ。
だが、これも決め手に欠ける。首輪は一定以上の力が加わると外れるタイプが多い。放浪中に痩せて外れることもある。首輪と同時にGPSタグも一緒に取れてしまう。
浜岡さんは「一つだけで万全という手段は今のところありません。複数の手段を組み合わせ、可能性を高めましょう」と助言する。
マイクロチップ埋め“マイナンバー”登録
マイクロチップを愛猫に着けてみた。首輪をひどく嫌うため、名札が着けられないのが気になっていた。
かかりつけの動物病院に依頼した。チップは長さ約11ミリ、直径約1.6ミリ。専用の注射器で首の付け根の皮膚の下に埋め込む。
針が太くて痛そうだが、注入は一瞬で終わった。猫はおとなしく、平気な顔をしている。
チップには15桁の番号が内蔵されている。埋め込んだ場所に専用の読み取り機をかざすと表示された。我が猫のマイナンバーだ。
獣医さんから登録申込書を渡された。登録手数料千円を振り込み、受領証を貼って登録窓口に郵送する。登録は手間だが、猫の番号と飼い主である私を結びつける必須作業だ。入れてくれた獣医さんは「チップは入っているのに未登録の犬猫が結構いるんですよ」と話す。
費用は動物病院によって違うがおおむね数千円。私の場合は4千円(税抜き、登録手数料別)だった。
日本獣医師会と動物愛護団体が運営している登録窓口「AIPO」によると9月末現在、全国で約184万5千件登録されており、うち猫は約38万9千件だ。
■追伸 記者より
豪雨に強烈台風、大地震……。今年相次いだ大災害に、安心して猫と暮らすには、室内飼いといえども脱走対策は必要だと痛感しました。マイクロチップは予想以上に簡単でした。役に立たないまま過ごせることを願いつつ、備えはぬかりなく。家庭の災害対策の基本は猫も人も共通ですね。
(中村通子)
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